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災厄の落とし子  作者: 特教機関ゲリュオン
第一章:落ちてきた星

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015 流水の如く


「ええっと、右足を軸にして、こうくるっと…」


 流水派、というか全ての武術において足さばきは重要らしい。

 この本には基本のことしか書いていないが足さばきだけでも10種類ぐらいある。

 相手がこう来たらこう、とか、反撃したかったらこう、とか。

 重心の移動から足首の回し方まで全然違う。


 うん。こんなものだな


 結構な時間練習した。

 そろそろ師匠との稽古の時間だ。

 さて、付け焼き刃でどれぐらい通用するかなぁ。


「ん?」


 気づくと大勢がこちらを見ていた。

 なるほど。

 俺は本をブツブツと読みながらずっとクルクル回っていた。

 そりゃどうしたんだろうって思うよな。


「あはは、お気になさらず」


 するとトコトコと男の子(27歳)が歩いて来た。

 なにかくれるみたいだ。

 おずおずと差し出すその手の中には丸薬があった。

 これはたしか。


「抗狂薬……」


 つまるところ精神安定剤だ。


 別に狂ってねえよ。



-----



 今日の稽古の結果。


 ぼろ負け。


 敗因はわかっている。

 師匠のスピードについていけないことだ。

 いくら技を磨いたところで、相手の攻撃が見えなければ意味がない。

 師匠が炎鷹流だったらまだ良かったのだが、最速と謳われる風神流だからなぁ。


 流水派、合わないか。


 いや、一度決めたことだ。

 まずはこれ一本でやり通してみよう。



-----



「おいおい。この間からなんにも成長しておらんぞ」

「それは僕が一番わかってますよ!」


 この稽古を始めてから数日。

 いや、もう十数日か。

 攻撃をあてられたのは初日の不意の一撃のみ。

 それどころかガードもままならず連撃の一撃目をなんとかさばけるだけ。

 もはや流水派がどうのこうの問題ではない。

 せめてどんな攻撃がくるかわかっていればいいのだが…。


「ほれぇ。どんどんいくぞぉ」


 師匠が距離を取って深く構えた。

 そして消える。


 ボスン


 いつの間にか後ろにいる師匠。

 一体どうなっているんだ。

 この技に関しては予備動作が全く見えないから一撃目すらガードできない。

 仮にまぐれでガード出来ても体勢が崩れてしまい、二撃目をもらってしまう。


「これは全然対応出来ておらんなぁ」

「速すぎるんですよ、それ。マジで見えないです」

「ハハハ! じゃあもう一回やるぞ。今度はよーく見ておけよ」


 再び深く構える師匠。


 ふぅ、落ち着こう


 基本を思い出せ。

 流水派の要は足さばきだ。

 相手の攻撃を受け流せるように左脚を……。



 いや、そうか。

 流水派だけじゃない。

 足さばきは全ての武術の基本だ。

 足を動かさなければ攻撃できない。

 当然の話じゃないか。


 ならば見るべきところは相手の剣ではなく足。

 足さばきこそが攻撃の起こりだ。


 よく見ろ、師匠の足を。


 ……。


 かかとが少し動いた。


 次の瞬間、カンっと鋭い音がする。

 俺の木剣と師匠の杖が当たった音だ。

 いつもなら衝撃で体勢が崩れてしまうのだが、今回は違った。


 全身に「ぬるり」とした感触が広がる。

 身体が自然に回転する。

 気づけば師匠と再び向き合っていた。


「お前さん…」

「今のが、流水派、か」


 体勢は崩れていない。

 腕も痺れていない。

 いつの間にかちゃんと構えている。


 これが戦いにおける技術か。

 少しの工夫で自分を有利にする。

 いいじゃないか、武術。


「…なるほど。いやよいぞ。頭でっかちで理論派のゼオ君には既存の流派にこだわらずに戦いのセンスを磨いて欲しかったのだが、まあこれも悪くない」


 そういって突進してくる師匠。

 相変わらず剣の動きは見えないが、足の踏み込み・さばき方でどう攻撃してくるかわかる。

 そうなればもうこっちのものだ。


 放たれた連撃を的確にガードする。

 全てを受け流すことはできなかったが、一度も身体には当たってない。

 見たか師匠!

 しっかりと理論を立ててから実践する。

 これが俺のやり方よ!

 これが俺の勝ち方よ!


「いやいや。ちょっと待てゼオ君」


 何十回と剣を交えたところで師匠が待ったをかける。


「反撃は?」

「はい?」

「反撃、せんと。この稽古終わらんぞ」


 そうでしたね。



-----



 流水派により師匠の攻撃のほとんどをガードできるようになり勝った気になっていたが、俺が100回連続で攻撃を当てなければ訓練は永遠と終わらない。

 つまり攻めなければならない。


 でもそれが難しいんだよなあ。


 どう考えても先に仕掛けた方が不利だ。

 実際自分から動いた時、毎回返り討ちにあっている。

 ガードが間に合わん。

 師匠は「稽古だから」と自分から攻めてくることが多いが、真剣勝負ではそうはいかないだろう。


 ならばカウンターならばどうか。

 流水派といえばカウンターが主体の武術だ。

 だからそこに習えば良いのではないか、と思っていたのだが…

 これが全くダメ!

 カウンターどころか大きな隙を晒して終了である。


 流水派のカウンターというのは相手を無力化したところに行うものだ。

 今の俺は攻撃を受け流しているだけにすぎない。

 言ってしまえばガードしてるのとほとんど同じ。

 そうではなく、相手と刃を交え、いなし、無力化したところを打つ。

 これが流水派のカウンターだ。


 まあ、まだまだ実力不足ということだ。

 こればっかりはじっくりと慣れていこう。

 焦らない焦らない。


 とはならないのが俺の性だ。

 武術がダメなら魔術を使えばいいじゃない。


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