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災厄の落とし子  作者: 特教機関ゲリュオン
第一章:落ちてきた星

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011 二限目:魔法陣基礎


「ゼオ君。魔術を使う上で必要な手順は何かな?」

「詠唱と魔法陣です」

「その通り。ではどちらが先に出来たのかな?」

「魔法陣ですね」

「そうだ。というわけでまずは魔法陣から教えよう」


 魔法陣。

 円の中に記号や図形を描き、それに魔力を込めると魔術が発動するというもの。

 詠唱のようにすぐに発動できるわけではないが、一度書いてしまえば何度でも使える。

 それ故に高位の魔術師が使うことは少ないが、魔法陣と魔力さえあればいいので初心者にはうってつけとされている。


「ここに木の枝がある。魔法陣でこれに火を付けてくれ」

「わかりました」


 枝は手のひらサイズ。

 これぐらいのものに火を付けることはそう難しくない。

 枝を使って地面に魔法陣を描くとしようか。


 まず、円を描く。

 その内に八芒星を描き、さらに内に二重丸。

 これで下準備は完了。

 二重丸の間に『決まりの一節』を書き込み、

 一番外の円にそって『火を起こすための魔術符号列』を書いて完成だ。

 あとは真ん中に木の枝を置いて魔力を込めれば……。


「うむ。火がついたな」

「どうでしょうか」

「今のはゼナ式だな。セイエナ式魔法陣はかけるか?」

「んー。火を起こすぐらいなら一応は」


 再び魔法陣描き始める。


 ゼナ式というのは、エルフが使うセイエナ式魔法陣を簡単にかけるようにしたもので、最近ではゼナ式しか使われないし教えて貰えない。

 形は似ているがセイエナ式は時間がかかるし、複雑だからね。


「ゼナ・クリストフ。奴もまた天才じゃった」


 師匠が俺が描いた魔法陣を見つめながらそう言った。


「お会いしたことがあるんですか?」

「一度だけな。まだ有名になる前じゃったが」

「歴史に名を残す天才2人が会っていたなんて、感慨深いですね」

「当時は『変な奴がいるな』としか思ってなかったがな」


 そんなことを話しているうちに、魔法陣が完成した。

 木の枝を中央において魔力を込めると……。


「あれ?」


 火が着かない。

 どこか書き違えたか?


「ここ。締めの一節が抜けとる」

「あ。そうでしたね」


 セイエナ式はゼナ式と比べて符号列が倍以上になることもある。

 だから符号の間違いや抜けが起きやすい。

 ゼナ式が主流になったのも納得だな。


 魔法陣を描き直して魔力を込める。

 今度は火が着いた。


「うむ。魔法陣の描き方はどこで習った?」

「書籍と、あと学校で少しだけ」

「符号の意味は教えてもらったか?」

「いえ、丸暗記しろと」


 師匠が深くため息をついた。


「今の魔導学校とはそんなものなのか」


 師匠は失望しているような、あるいは少し寂しそうな顔をしていた。


「セイエナ大戦時や終戦時には多くの強い魔術師がいた。

 しかし、ここ最近ではそういった魔術師は稀にしか現れない。

 魔導学校から現れることなどもっと稀な話だ。

 強い魔術師が要らない世というのはいいことではあるが……」


 たしかに。

 オストロル魔導学校の卒業生で強い魔術師がいた記憶がない。


「まあよい。正しい魔術を広める努力をしなかった儂にも責任はあるのだ」


 師匠はそう言うと俺の横に座った。


「さて、ゼオ君。君にはセイエナ式魔法陣を勉強してもらう。

 ゼナ式は自分で勉強しなさい。セイエナ式が出来れば自ずと出来るようになる」

「わかりました」



 こうして師匠からセイエナ式魔法陣を教えてもらうことになるのだが、これまた興味深いものだった。


 どうやら魔法陣にも文法があるようだ。

 例えば、さっきのように火を起こすなら、


決まりの一節

 魔術の定義

  種類:火

  大きさ:込めた魔力次第

  位置:魔法陣中央

 発動

締めの一節


 となっていたようだ。

 なんだか算術の証明問題みたいだね。


 他にも基本的な符号は一通り教えてもらった。


「では、火を起こした後に水を発生させ、消火する魔法陣を描いてみろ」

「それ意味あるんですか?」

「いいからやれ」


 まあ算術も「そんなこと考えてどうすんだよ」って問題あるしな。


 さて描いてみようか。


決まりの一節

 魔術の定義1

  種類:火

  大きさ:込めた魔力次第

  位置:魔法陣中央

 魔術の定義2

  種類:水

  大きさ:込めた魔力次第

  位置:魔法陣中央

 発動:魔術1

 発動:魔術2

締めの一節


 こんなものでどうだろうか。

 まあ、やってみよう。


 魔力を込める。

 すると枝に火が着いた。

 このまま魔力を込めて行けば……。


「あ、あれ?」


 水が発生しない。

 てか、どんどん火が大きくなっている!


 慌てて魔力を込めるのを止めた。


「失敗したな。ここが……」

「ちょっと考えさせてください!」

「あ、ああ」


 ごめんね師匠。

 答えはまだ聞きたくないな。


 自分の描いた魔法陣をじっくりみる。

 問題は「何故水が発生しなかった」だ。


「あー。なるほど」


 魔術の定義1の大きさ。

 ここがいけなかったんだ。

 「込める魔力次第」ってことは、魔力を込めれば込めるほど火が大きくなるだけで、水が発生するところまでいかないじゃないか。


 だから描き直すと、


決まりの一節

 大きさ定義

 魔術の定義1

  種類:火

  大きさ:小

  位置:魔法陣中央

 魔術の定義2

  種類:水

  大きさ:込めた魔力次第

  位置:魔法陣中央

 発動:魔術1

 発動:魔術2

締めの一節


 これならいけるだろう。

 「大きさ定義」というのは魔術の大きさを調整するために必要らしい。

 慣れてくると色んな大きさに出来るそうだ。


 魔力を込めてみると、今度はちゃんと消火できた。


「うむ。君、なかなかセンスあるな」

「そうですか?」

「ああ。では今日はこれぐらいにして…」

「いや。待ってください」


 まあ確かに結構頭使ったよ。

 ちょっと疲れたよ。

 でも、それ以上に「もっと学びたい!」って気持ちが溢れてくるんだ。


「師匠。もうちょっと、もうちょっとだけ!」



 その日は、日が暮れるまで魔法陣を描き続けた。


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