剣聖アイザック
男――剣聖アイザックは、ヘーゼルに話の礼を述べると学園を後にした。
アイザックはついこの前まで、この国の第一位の強さを持つと目されていた。
それが、一回りも下の年齢の15才の少女に負けたのだ。
豪快にあっさりと。
しかし、アイザックは不思議と悔しさを感じなかった。
それよりも、自分を倒した相手であるヘーゼルへの興味が沸き起こって仕方がなかった。
――長いこと、対等以上に戦える相手――ライバルが不在だった事。
――自分の剣を研いていった先の姿をこの少女に感じた事。
――今までに接したことがないくらい高貴な身分だった少女である事。
――どうやら婚約していたが、婚約者に婚約破棄されたばかりでフリーの可能性が高いこと。
――現在は平民の身分らしいので、もと平民の騎士である自分にもチャンスがありそうだという事。
――この国での成人年齢である15才を既に迎えており、すぐにでも結婚可能である事。
――正直、アイザックの好みにどストライクな外見である事。
とにかく、ヘーゼルの全てが気になっていた。
ヘーゼルに切断された両手足首(それは見事な切り口だった)を繋いでもらい、直ぐにヘーゼルを訪ねようとして治癒術師と医者に止められ、我慢することまる2週間。
本来であれば緊急で呼び出しをしてとんでもない仕事を押し付けてきた王様に文句を言うべきだったが、そんな小さな事はと後回しにしてヘーゼルと面会する約束を取り付けた。
"先ずは話してみよう。もし好感触を得られたなら、その場でプロポーズをしても良い――"
童貞男の妄想は捗った。
そして、面会が終わり、とぼとぼと学園を後にするアイザック。
ヘーゼルの色々と深い話を聞くことは出来た。
世界の秘密を垣間見れた気がした。
しかし、肝心のヘーゼルからの親愛度は1ポイントたりとも上がっていなかったのだった――。
END