表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

月の夜言えなかったこと

作者: 伊月

「月が綺麗だよ、今日は写真撮らないの?」


そう言って、貴方は笑う


「そんな毎日カメラ持ってきませんよ

基本、行事にしか持ってこないんです」


動揺を隠して、私は返す


この人は私の想いなんか

微塵も気づいてないんだから


わざわざ微妙な空気になるようなことをして

今の関係を崩す訳にはいかない


軽口を叩けるほどには

仲がいいと思っているのだ


届かない想いを、砕け散るとわかっている勇気を

彼にぶつけられる程、私は強くない


それに、どうせもうすぐ

こんな楽しい時間も終わりを迎える


部活引退の時期


去年は恐れもしなかったこの時期が

今年はこんなにも恐ろしく、そして憎い


折角築き上げた関係も

引退してしまえば、なかったも同然だ


家に帰ってから、連絡するほどの仲じゃない

事務的な連絡は行っても

個人的な会話はほとんどない


だから、2年同じ部活をしていても

トーク履歴は5分もあれば読み切れる


そんな距離感


部活で顔を合わせるから話す、ふざける

顔さえ合わせなければ

私達に接点はない


家に帰っても何かと忙しい彼に雑談を持ちかけて

迷惑をかけるのも気が引ける


まぁ、特に話題もないし

既読も遅いから、連絡したところで会話なんか

成立しないんだけど……


とまぁ、割と冷めた距離感だし

彼が引退してしまえば

あっさり関わりがなくなるだろう


だからと言って、気持ちを伝えるつもりは

やはりない


今、横で「じゃあ、家帰ったら写真撮らなきゃね」

と笑っている彼は私のことをどう思っているのだろう


多分、普通に後輩とかそんな感じかな…


「ね、先輩」


「んー?」


「今日の月はなんだかいつもより

遠くにある気がしますね」


____________________________


「月が綺麗だよ、今日は写真撮らないの?」


僕がそう声をかければ


この子は少し息を詰まらせる

顔が赤くなりそうだ


でも、結局いつも冷静に


「そんな毎日カメラ持ってきませんよ

基本、行事にしか持ってこないんです」


そう言って静かに笑う


僕は性格が悪いと思う

だって、この子の気持ちに気付いてるから


気付いた上で、あんなことを言って

この子の反応を楽しんでいる


え?はっきり振ってやればいいって?


そんなことは出来ないな

なんてったって、僕もこの子が好きだから


なら、何故付き合わないか?

それは、結果この子を悲しませることになるから


付き合って1ヶ月や2ヶ月で

彼氏が引っ越して遠距離恋愛なんて


多分、嫌じゃないかな


僕だって、引越しなんてなければ

とっくに告白してる


両片想いってこうゆう事を言うんだな

なんて、月を見上げながら思う


分かれ道までの少しの時間を

たわいもない話をしながら歩く


どうやら今日はバス停まで来るらしい

ラッキーだ、いつもより少し長く一緒に居られる


多分、僕の話の内容をこの子はほとんど理解していない

それでも、笑顔で頷いてくれる


時々、ポロッと気持ちが漏れそうになる

何も言わずに顔を眺めてしまう


その度に誤魔化す

だいぶ無理があるけど


それでも、「なんですかそれー」と笑ってくれる


好きな子を悲しませてしまう

どうすることが正解なのか、分からない


けど、とりあえず今この子を笑顔にしたい

引っ越しのその日が来るまでは

君の隣に居させて欲しいな


___________________________


彼が引退してから1ヶ月が過ぎた日

彼が今日引っ越しをすると聞いた


放課後、部活を放り出して走った

良かった、まだ教室に居た


「先輩!ちょっと、お時間良いですか?」


ビックリしながらも

いつもの笑顔で頷いてくれた



コンピュータ室


部活柄、何となく落ち着く場所


「で?どうしたの?」


いつもと変わらない彼に

少し落ち着きを取り戻す


あの月の夜

出なかった勇気が湧き出てきた


「先輩が好きなんです

ずっと、ずっと、好きでした」


あ、驚いてるなぁ

耳赤いなぁ、照れてくれてるのかな


暴れ出す心臓とは違って

頭はまるで他人事、呑気に感想を述べてくる


現実逃避でもあったのかもしれない

彼が口を開いた時、体が固まったから


「えっと…」


思わず俯いて目を閉じた

続く言葉はきっと欲しくないものだから


「ごめん」


ほらね、知ってたもん

彼は私のことをそんなふうに見ていない


「知ってた」


「え?知ってたって、えぇ?」


「うん、知ってた

その上で黙ってた、ごめん」


「そう…ですか」


「僕も好きだよ」


「そうですよね……え?

僕も好きだよ??」


「うん、好きだよ」


ふらついた

腰が抜けた

涙が出た


「え、待って待って、泣かないで」


焦ったらしい先輩が近寄ってきて、屈んだ

途端に近くなる顔に熱が集まる


「うそ……じゃないですか…?」


「失礼だなぁ」


口を尖らせてむくれる彼に

少し笑ってしまう


「あーあ、付き合った途端に遠距離だし

伝えないつもりだったのになぁ

引っ越し、余計に嫌になるじゃん

こんな泣き虫な彼女置いて行くとか」


少しだけ赤い顔で、照れながら彼が言う


そして、「思わせぶりな事、散々言ってごめんね」と謝る

確信犯だったのか……


「それはちょっと許せませんね!

乙女の恋心を弄んで!」


「え?乙女??

……うそうそ!ごめんって!!」


これが、本来の距離感

久しぶりの軽口がこんなに嬉しいなんて思わなかった


遠距離だって、大丈夫

久しぶりでも、軽口叩けるもん


連絡は少ないと思う

時々ゲーム一緒にするぐらいかもしれない


でも、聞いてみれば会いに行ける距離だし

我慢できなかったら行けばいいし


心配なのは、彼の顔が無駄にいい事かな


「先輩、浮気したら許しませんからね」


「え、しないよ!!君以外の子に興味ないもん!」



ちょっと、いや、かなり嬉しかったのは秘密だ

久々の投稿で下手くそになりました

話がまとまらないね!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ