くるくる、くるくる
「流れ星見えなかったね〜」
「おっかしいな〜にいちゃんがここにくれば見れるって言ってたんだけどなあ」
望遠鏡を担いだ少年たちが、銀ヶ岳山頂の野原から帰路につく。
「つっまんないの〜〜」
背の低い方の帽子をかぶった少年が、つま先で石を蹴り飛ばす。
石は少年が意図した方向より右にそれ、急な下り坂に吸い込まれて行った。
ころころ、ころころ。くるくる、くるくる。
葡萄くらいの大きさで。端が先が尖った楕円形。
ぐるぐる、ぐるぐる。かんかん、かんかん。
右に左に小さくスキップしながら、先へ先へと焦っていく。
ハザードランプを点滅させた一台のボックスカーが、坂の下の車道横に停まっている。
「ねえ、これどこに向かってんの?私疲れてきちゃったんだけど・・・・」
「ああああ、ごめんごめん、びっくりさせたいからまだ教えられないんだ!ちょっと待ってね、道調べてるから・・・」
こんっ
勢いよく坂を駆け抜けた石は、車道の手前で大きな石にあたり、大きく跳躍し、ボンネットを踏みつけて行った。
車道にきたところで、減速。
もう、疲れたよ、限界だ。
まだまだ、君なら大丈夫。
強い風に背中を押された石は、ガードレールをくぐり抜け、再び障害物走を始める。
とんとん、とんとん。かさかさ、かさかさ。
ネイビーブルーに塗りつぶされた世界。鳥も、虫も寝静まり、他の石たちも、寝床についている。
石は、こんな静寂の時間に、一人どこへ急いでいるのだろうか。
ぱらぱら、ぱらぱら。こつんこつん、こつんこつん。
枝を乗り越え、草を踏みつけ、三次元の千鳥足。
倒木の陰のタカチホヘビは、先ほど見つけた大きなミミズを飲み込んだところであった。
ぐえっ
崖を飛び降りて林に突っ込んだ石が、ヘビの体に直撃した。驚いたヘビは、体をくねらせ石をはたく。
とんっ
林の中の小さな坂、その下は小川だった。
とぽん。