かくしてブレスト沖海戦の結果は
イギリス軍はまたもやフラストレーションのたまる結果に
イギリス海軍はまたもや頭を抱えた。
本国艦隊まで中途半端な損害である。
インドミタブルは敵の誘導弾を受けて小破、さすが装甲空母!ただし命中箇所が艦橋基部だから、費用や工期はかかります(>_<)。
搭載機は半減。
早期に再編しないといけない。
ネルソンは戦闘中盤に運悪く、ドイツ艦隊に後方に回り込まれてしまう目にあったという。
数分間程度だが、こちらは主砲を全く打ち返せない態勢に入られ一方的に撃たれた。
これにより機関に集中的な打撃を受け、動力喪失、これにより動けないわ、全砲門使用不能だわになった。
そのため帰路はウオースパイトの世話に(>_<)。
アンソンはいつものように主砲トラブル。
ただし、ビスマルクのB砲塔跡に命中弾を与えた惜しくも弾薬はなかったために大事にいたらず。ただしここに新型の誘導弾を搭載したいと熱烈希望していたドイツ海軍の技術屋さんは、あきらめざるを得なかった。
彼らは対艦誘導弾を積みたかったのだ。
現実に積んでいたら、軽くても直前の艦橋が使用不可、悪ければ誘爆して沈没、に瀕したかも知れないのである。
アンソン自体の損害は、それほどではなかったが僚艦二隻がこれではどうにもならない。
明日のため今日の悔しさを我慢するしかない。
これに対して、ドイツ艦隊は空母は無傷。
戦闘機に若干の消耗ありだが補充機で補っている。
水上戦闘艦艇は、ビスマルク、あとリュッツオ―が損傷した位である。
戦術的な大勝利と言えようか。
ただしスカパフローの本国艦隊の壊滅までには至らなかったのは、減点である。
さて、戦況有利なはずのドイツ軍の側も、致命的な弱点を抱えての一戦であったのはあまり知られてない話である。
燃料、 である。
ブレストにドイツ艦隊が進出した一番の理由は、大西洋に面した港が欲しかっただが、さらに重要なのは、「フランス海軍が溜め込んでいた燃料の活用である」
それくらい厳しいものがあったのだ。
今回、主力からプリンツオイゲンが離れ先にブレストに向かったのは、機関トラブルで燃料消費が多く、追随できなくなったからである。
(帰還するベアルンの護衛につけれたのはラッキーだったが)
今回の作戦では、捕獲したフランスのタンカーを臨時に給油艦として、あらかじめ大西洋各所に配置したから、積極果敢な作戦が展開できたのである。
幸い今回はイギリス軍の哨戒網にもかからずタンカーが無事であったから作戦はうまくいったが、今後必ず同様にいくとは限らないと司令部は考えている。
というのも、今回の作戦では、補給潜水艦いわゆるミルクヒーが通信用暗号が解読されている?から補給艦用に新たな暗号システムを別途作成、配布したため助かった可能性がある、とドイツ大西洋艦隊司令部は推定したからだ。
しかし史実を振り返ったら、ドイツ海軍の不安は杞憂であった。
ドイツ艦隊と補給艦との間の交信は、イギリス海軍情報部には、解けなかったのである。
これは、戦前、駐日大使館勤務の経験あるドイツ海軍中佐が発案した、「日本語の方言」を活用した暗号システムを使ったのだ。
通常ならば、補給艦と洋上で落ち合う通信文の暗号を、復号した場合の文章は「発○○、宛△△。次回の会合はエリア○○にて△△日○時」などになるはずである。
実際には電報を途中から送信したり、余計な言葉を追加するなど細工もするが、基本的には上記の内容である。
このような通信内容を類推するのを困難にするため「大西洋の真ん中で日本の方言を使って、さらに電文を翻訳する」一工夫をしたのである。
一例をあげると、「ANJOU TANOM UWANA 」と復元された文章はどう解釈しても、ドイツ語にならない。
正解は「あんじょう頼むわな」と言う「日本語の大阪弁」だからだ。
「ほな次の補給やけどな、予定の通りあんじょう頼むわな」
「よっしゃ。そないするわ。大将にもよろしゅうゆうといてんか」
「ほなな」みたいな感じで、日本の関西地方、それも大阪に在住の経験のある将兵や頻繁に神戸や大阪に入港した経験を持つ船員など、が密かに集められ暗号手として勤務したのである。
これはドイツの例だが、アメリカ海軍も後に喋っている人間が少ない、ナバホインディアンの言葉を通信に活用することもしている。
このトリックは後年、大西洋の戦いを研究していた日本人の歴史家が、解読不能とされた現物を機密指定解除された後に発見し、ようやく解読されたのであった。
種を明かせば簡単な話だが、一時期とは言え解読できない暗号を使えたのは、後に大きなアドバンテージをドイツ艦隊に与えることになったのである。
ドイツ海軍と日本の交流の成果が大きなチャンスを作りました




