いわゆるブレスト沖海戦
かなり無理のある呼称ではあるが、英独の水上艦隊による久しぶりの大規模な戦いは、このように呼ばれるようになった。
歴史上、この海戦ほど、興味深い海戦はそれほどないかも知れない。
有力な戦艦が複数参加して、支援する軽艦艇にも 事欠かず、さらに上空支援にあたる航空兵力にも不自由しない。
でも互いに、目的の徹底はできていない、まさに先の大戦での、ユトランド沖海戦同様な結果だったのである。
なんかちぐはぐしてしまったのは、イギリス艦隊の「個性的」な戦艦が戦隊を組んでるからでもあろう。
主砲を3連装3基にまとめ、艦前方に配置したネルソン。
一方で連装砲塔を前後に均等配置したウォースパイト。
そして今度は実用化された主砲では最大級の4連装砲塔を前後に2基、連装砲塔を前に1基、のアンソン。
この後ろに巡洋艦ベルファースト、ノフォークが並ぶ。
これに斜め後方から同航戦を挑むドイツ艦隊。
先頭はB砲塔を取おろしたビスマルク。
火力は低下しているが、40センチ砲は侮れない。
後ろにはティルピッツ。さらに主力に合流したシャルンホルスト、グナイゼナウ。
ポケット戦艦の異名をとるアドミラルシェーア、リュッツオー。
これで勝負するのである。
この態勢はイギリス軍に極めて不利である。
なぜか?
ネルソンの主砲、特に最も艦橋に近いX砲塔を後方に向けて撃つならば、射界は正横90度から見るならば、わずか30度後方までしか撃てないのである。
しかも、僚艦のアンソンはキングジョージV級特有の悪い癖を持っているのだ。
特徴となってる4連装砲塔は曰く付きのトラブルメーカー。
「撃つときは必ずどこかが故障する」という不名誉なジンクスもある位だ。
そもそもは軍縮条約の縛りで35000トン内に重量を抑える必要から砲塔が、低く狭いものになったのである。
さらにこの主砲は個別に操作できるようになっているため、フランス艦よりも複雑な機構をより狭い砲塔に押し込むことになったので、故障の頻発は起こるべくして起きた。
この欠陥は以前、今は日本の「昭南」となった同型艦のプリンスオブウェールズがビスマルクと交戦した時や、他にも船団護衛中にドイツ艦艇と遭遇した時などに限って見られるのである。
これらのフネと違い、ごく普通のスタイルがウォースパイトである。
古強者らしく、年次の実弾射撃では新型艦艇には劣らぬ成績だそうな。
ドイツ艦艇も練度は劣らぬ艦艇ばかりだし、まもなく双方ともに敵艦艇を射程に収めるのであった!
さあどうなるやら。




