そのころビスマルクは?
ビスマルクを含む、ドイツ大西洋艦隊主力は何をしているか?実は、、、
さてここまでの話で、戦艦はシャルンホルストしか出てきてないことにお気づきだろうか?
主力たるビスマルク、そしてグラーフツェッペリンは?
これは近年ようやく機密解除になった資料で、ようやく謎が解けた話である。
答えは「オーガスタを追え!」である。
「大西洋憲章」聞いた方もおられるであろう。
これはプリンスオブウェールズ艦上にてアメリカのルーズベルト大統領と英国のチャーチル首相との会談にて合意された内容であり、戦後の国際社会の枠組に大きな影響を与えたものである。
実はこの後、第二次会談が密かに行われたのが、機密資料から判明したのだ。
これは前回の会談の内容をさらに詰める意味で行われた。
しかし、すでに枢軸国との間で戦争状態になっており、米英の首脳が大西洋の往き来をして会談すること自体が非常に重要な「ターゲット」になるのであった。
そのため、極秘で行われたのである。
ところが、イギリス海軍の暗号解読に一部成功していたドイツ海軍司令部の特別通信班は、ある日通常と異なる識別符号の無線局を発見した。
方位測定からすると、主にアメリカ東海岸からカリブ海を動く艦艇を示している。
「こいつ、米艦じゃない?」
さらに過去のデータを照合すると、どうもチャーチルがルーズベルトと会談した際にもイギリス海軍の通信系に新たな識別符号を持った局が加入している。
そのころの通信傍受した記録をさらに精査すると、興味深い疑問が湧いてきた。
「会談の場所はプリンスオブウェールズ艦上だが、そこまでルーズベルトは何に乗って向かったか?」
公式な発表はなく、ドイツ軍でも見逃していた。
司令部の特別通信班は、この謎を解くべく、
前回の会談の頃、明確に所在地が判明している「アメリカ海軍の大西洋艦隊の主力艦艇」 を改めて消し込みしていったのである。
仮にも大統領が乗るならば、それなりな設備のある艦艇になるからだ。
そうしないと、戦艦を出してきたイギリスに釣り合わないから。
また太平洋から回航するのも太平洋が緊迫していた時期からしておかしいからだ。
その結果、どうやら大西洋艦隊旗艦を務めた経歴を持つ重巡洋艦オーガスタが「容疑者」として浮かんできたのだ。
あくまでも仮説だが、オーガスタが当時ルーズベルトを運んだと仮定したら、あまり無理がないのである。
また大西洋艦隊の旗艦を務めた艦なら大きさはともかく、格式では負けないだろう。
つまり、オーガスタがまた、イギリス海軍の通信系に浮かんできたってことは、再度の英米首脳またはそれに準ずる官僚や軍人の会談が近く起こる可能性を示唆するのである。
それ以来ドイツ海軍司令部特別通信班は、オーガスタらしき局の捕捉に勤めてきたが、別の情報筋から、この度、オーガスタがイギリス方面に向かう兆しが見えてきた。
「これをインターセプトできないか?」という意見が司令部内にだされ、急遽今回の「ローレライの宴」に組み合わせられたのである。
これには、火力、機動力に富む、ビスマルク、ティルピッツ、さらにグラーフツェッペリンからなる機動部隊であたる、となったのである。
敵さんはいかにも「船団護衛してます」ってふりをしながら大西洋を渡り、どっかでイギリス側と落ちあうのであろう。
これをわがドイツ大西洋艦隊の主力で捕捉するのだ。
成功した場合、大きな政治的成果になる。
仮に首脳が乗ってなくても大西洋艦隊旗艦を撃破するのはそれなりのポイントゲットである。
かくしてドイツ大西洋艦隊旗艦のビスマルクは、電波封止しつつ、僚艦と共に大西洋で網を張っていたのである。
戦後、「オーガスタを追え」という映画にもなるような話が後に大西洋で繰り広げられたのである。
史実では、大西洋憲章からみの米英首脳のコンタクトは一回だけでしたが、もしそれが二回あってドイツ海軍が嗅ぎ付けたらって話になります




