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イギリス海軍の疫病神  作者: 通りすがりの野良猫
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ウエスタンアプローチは「魔女の大釜」に

いろんな作戦、暗号解読、機材の故障、敵情の読み違い、そして神のみぞ知る偶然により、「ローレライの宴」作戦はイギリスにとりえらいことに発展していきます

ウェスタンアプローチはイギリス本土に到着した護送船団が集中する水域である。

ここは多数の艦艇なども集中されつた海域でもあるが、ドイツ潜水艦にとっても重要な狩り場でもある水域である。


しかし、ここは対潜哨戒機にとっても狩り場であるのは、これまた皮肉な話である。


カタリナやリベレーターやサンダーランドとかの飛行艇や長距離爆撃機がうろうろしたり、あのソードフィッシュに至るまで、うろうろする環境では、落ち着いて船団襲撃もやりにくい。

対空火器を増備しても、射程外で監視を継続され、水上艦艇を誘導されたり、後には、船団に護衛空母がいる時など、戦闘機をもって対空火器を制圧してから攻撃機が爆雷やロケット攻撃するなどもやりだした。


こうしたドイツ潜水艦側の不利を空母と戦艦を組み合わせた機動部隊と共同させることで、一時的にもひっくり返すのが、今回の作戦の狙いの一つである。

これにより大西洋の戦いで疲弊している英米そしてソ連との補給を妨害して、東部戦線の安定、西ヨーロッパでの第二戦線の構築を妨害するのである。


そのため計画された「ローレライの宴」作戦だが、偶然と戦略的な欺瞞が作用して、ウエスタンアプローチ海域にドイツ大西洋艦隊の機動部隊が乱入してくる、光景(イギリス軍には悪夢)が現実化したのである。


長距離哨戒機のBー24のレーダーに大型水上目標が複数発見され、さらに詳細を調べようとした矢先に、そのリベレーター は大口径の機関砲装備のフオッケウルフ戦闘機に追い回される羽目になった。


護衛船団を援護している巡洋艦がはるか彼方の水上艦艇から一方的に艦砲射撃をくらい、ほうほうの体で離脱する。


あげくの果てにようやくリバプール港に付く手前でいつの間にかドイツ潜水艦が敷設したとおぼしき機雷により、貴重なタンカーが撃沈される。


イギリス軍も、迂闊にもドイツ大西洋艦隊の水上艦艇主力の大西洋進出を許してしまい、これにより潜水艦隊も活気づかせたので大慌てである。


さらにロンドン近郊に撃ち込まれたAー4ロケットは軍事的よりも政治的な危機をもたらせた。

ドイツの宣伝放送であのホーホ―卿が「この攻撃は始まりに過ぎず、新たな新型弾頭を開発中でまもなく、実用化されるだろう」と予告したからだ。

ウルトラの情報など総合して考えると、「核分裂反応」を応用した弾頭の可能性が否定できないのである。

(筆者注・この時代ではAー4に搭載できるサイズくらいには核分裂反応弾頭は実用化できなかったのだが、「あのドイツなら」と思われていたのだ)


さらにイギリス軍の情報関係者をも疑心暗鬼にさせたのは例のベアルンである。


ベアルンが発射したAー4は4発である。

これが無事にロンドン近郊まで飛んだのは実はビギナーズラックでしかなかったのである。


この4発は先行量産品のうち、特に精度の高い部品を選りすぐりにして、さらに慎重に擦り合わせたドイツ人のクラフトマンシップの塊のような4発だったのだ。


何を隠そう、最終的に実戦投入されたAー4のうち半分程度しか目標地域に落ちてないのである。

だから、ペーネミュンデで開発に関わってたスタッフが驚いたとか。


だから、もしベアルンが通常の量産品のAー4を発射していたならば、最悪ベアルン艦上で爆発、沈没に瀕しただろうと、関係者が後に回想するような状態であったのだ。


ところがどっこい、そもそもベアルンにいくつの弾道弾が搭載されてるかは、わからないのである。

単に想定される重量、残骸から推定されるサイズからすれば20000トンを越える艦艇(もとはと言えば戦艦)ならば、より多くを搭載している可能性もある、と想像されたのである。


そしてイギリス海軍の血気盛んな一部は、この「秘密兵器」を多数搭載しているであろう低速の空母を拿捕無理ならば撃破する〜!となったのである。


この任務に投入されたのが、ウルトラ情報に振り回されて、ベアルンの待ち伏せに失敗した、改ダイドー級防空巡洋艦がその快速(公試で39ノット〜!)を活かしてベアルンを追撃することになったのである。


このフネはダイドー級の最終艦だが、その改良型のベローナ型よりも機関が強化されていて厳密には同型艦がないこともあり、北海での護衛任務からはずされはるばる、英仏海峡まで引っ張りだされたのである。


ここからは、このベアルン追撃戦やウエスタンアプローチの「七面鳥狩り」と呼ばれた航空戦、 等々大西洋での戦いのうち最大の決戦と言われた「ローレライの宴」作戦の詳細に、戦後の回想その他も交えながら、述べてみたい。


さてここからは、1隻のフネ、や1機の飛行機等の視点で、「ローレライの宴」を振り返ってみましょう。

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