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……足りるか?

サブタイトルはいつもキャラクターのセリフから抜粋していますが、今回の部はあまり会話がないのでタイトルと内容が上手くリンクしていないと感じるかもしれませんが、ご了承お願いします///

廊下を進み斬鵺(きりや)兎雪(とゆき)はダイニングに顔を出す。

すると、その場では大掛かりな作業が進められていた。


斬鵺が一度学校から帰宅した夕方の時のこと────

弥鶴(みつる)の挑発に乗った涼風(すずか)の異能“元素”により、ダイニングの窓ガラス計4枚全てが吹き飛んだ事件────


そもそも篠宮(しのみや)涼風(すずか)の異能“元素”とは、一般的に知られてる四大元素の火・水・風・土になぞられ、これら4つの元素をおよそ物理的法則を捻じ曲げ具現化させる異能。

発火源のない場所から火を(おこ)すなど彼女には造作もなく、今回のように窓ガラスを割るほどの威力まで風速を上げるなどベクトル変化にも長けていた。

だが、自然の原理を利用した方が効率が良く、使用する力も抑制できるのは確かだ。


そして、この事件の引き金である弥鶴は事件現場の指揮を取り、この寮に住む二人の少女の手を借りながらその修復・応急処置に当たっている光景が、今斬鵺たちの目の前に広がる光景である。


「よいっしょ、このパネルで倉庫にあったのは全部か……足りるか?」


そう言って弥鶴は、外にある倉庫内から数枚程度のパネルを運んでは、(いささ)か不安そうに首を傾げた。

彼が持ち出したパネルで窓全体を塞ぎ、一先ず部屋の保温効果のみは保とうという作戦だ。


「まあいいや……取り敢えずラピスちゃん、このパネルを右から詰めて配置して貰えるかな?」


「はい、分かりました」


そう言って弥鶴の呼び掛けに答える金髪の少女。


すると、弥鶴が外壁に寄り掛かるようにして重ねたパネルが、誰の手が触れることなく宙を浮き始める。

そして、そのパネルは自在に向きを変え、建物の外から内へ入ると、弥鶴の指示通り右から順にパネルが隙間なく敷き詰められて行った。


ポルターガイスト現象という言葉があるが、今まさにその現象が斬鵺たちの目の前で起きている。

だが、これは心霊現象という不確かなものではなく、意図的に起こされたポルターガイスト現象である。


それこそが、先程弥鶴の指示に受け答えをした金髪の少女、黒崎(くろさき)・マリーネ・ラピスと、その異能“念力”である。


ラピスの外観的特徴だが、背丈は160センチ丁度。

彼女の両親は父親が日本人、母親がイギリス人と事実上のハーフ。

彼女の輝く金色の髪は、イギリス人である母譲りのものであり、彼女はその髪をツーサイドアップに()わいてることが多い。


両親共に同じ会社のトップを担い、生まれてこの方この寮で生活をする前まで金銭に困ったことはないという裕福な家系で育った一種のお嬢様。

その些か甘やかされた生活からか、長身でスレンダーな体型に比して、未だ幼さの抜け切れていない童顔な美形が(なび)く金色の髪から覗かせる。


現在は、斬鵺と同じ桜浜高校に通う2年生であり、斬鵺の親友である(すぐる)から生徒会長の座を譲り受けた現役の生徒会長()の人である。

これだけの条件が揃った彼女の校内での評判は言うまでもない。


だが、彼女が最もコンプレックスに感じていることが、身に包む高校の制服からはその存在が薄れてしまうほど絶壁と化した胸元だった。

天は彼女に二物や三物に価するものを与えたが、授かり物として彼女は最も大切なものを授かりそびれてしまったようだ。


そんな彼女も異能力者の烙印(らくいん)を背負っており、黒崎(くろさき)・マリーネ・ラピスの異能“念力”は、先程斬鵺たちの前で実践して見せたように、物体に触れることなくその物を移動させることができる。


ただし、弥鶴の異能“転移”のように座標から座標へ瞬間的に移動させるものではなく、飽くまで物体の移動は目で追い切れる程度の速度で移動する。

根本的な原理としては手で持って運んでいるか、いないかの違いであり、手で持っていない分移動ルートの選択肢が空中にまで及んだだけの話である。


そして、ラピスの異能により作業が進行し、その様子を隣で見守る小さな少女がいる。

少女の名前は、湖町(こまち)千冬(ちふゆ)

セピア色の髪をショートボブに切り揃え、前髪を四つ葉のクローバーのヘアピンで留めている少女。

現在小学6年生の彼女はこの寮内では最年少であり、背丈も150センチ前半と一番背が低い。


加えて、彼女自身異能の使い方もまだコントロールするには至っていない。

だが彼女の異能は、この寮内においても特殊な事例に分類されるため、彼女自身が上手く使えないのも無理はない。


湖町(こまち)千冬(ちふゆ)の異能は“予知”────

結果論だけで説明するならば、未来を断片的に見ることができる未来予知能力。


しかし、この異能は条件が厳しく、特定して誰かの未来を見ることはできない。

だが、彼女が見る未来は絶対であり、それは周囲の関わりのある人間、或いは彼女の記憶に残る風景などに焦点が置かれる。


この異能が発動する条件だが、それは一度睡眠作用を起こし、レム睡眠の状態に入る必要がある。

レム睡眠とは、筋肉は休息状態にあるが、脳は活動状態にある睡眠状態のことであり、この状態で見た夢は脳に焼き付いていることが多い。

だが、必ずしも彼女がレム睡眠時に見た夢が正夢の如く未来予知に繋がるわけでもない。


それが確定と呼ばれる状態になるには、彼女が睡眠からの覚醒時に、瞳が異能力者特有の赤い瞳に変色している必要がある。

覚醒時に彼女が鏡で自分の瞳を確認するまで、自分が見た夢がただの夢なのか、それとも未来予知なのか分からない所有者本人にとっても難儀な異能。


そのため彼女の場合においては、保護という名目の他に彼女の異能の観察という意図も隠されている。


このように、ここTERCES(仮)(ティラシス)には様々な異能力者たちが暮らしている。

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