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メロンパン刑事って何!!?

 ◆◆◆ NEXT ◆◆◆



あれから時は過ぎ、ゴールデンウィークも終わり間近に迫っていた。

そして、残された日数は今日を含めあと2日────

つまりは、ラピスにとって本番の前日ということになる。


ラピスは、この別荘を訪れてからというもの、2日目の出来事を除き殆どの時間をピアノの練習に費やして来た。

そして、今日も彼女はいつもの部屋で最終調整を行っている。


いつものレトロな雰囲気に包まれた部屋の中でラピスは綺麗な音色を響き渡らせる。

彼女がピアノを演奏する中、その隣で弥鶴(みつる)は椅子に腰を掛け、その音色を独占して聞き入れる。


演奏が終わり、ラピスが鍵盤から指を離す。


「どう、でしたか……」


「うん!すごくよかった」


「あ、ありがとうございます」


上手く自信の持てない顔付きをしていたラピスは、彼の一言でそっと笑顔を浮かべた。


「それじゃ、ちょっと休憩としますか……ん?」


そう言って弥鶴は席を立つと、突然ポケットの中から着信音が鳴り響く。

一先ず彼はポケットからスマホを取り出し、着信内容を確認することにした。


『ちょっと別荘に戻って来て貰えませんか?ラピスも連れて』


メールの送り主は斬鵺(きりや)からだった。

その不鮮明なメール内容に弥鶴は首を傾げた。


「なんだ?」



 ◆◆◆ NEXT ◆◆◆



ラピスの別荘1階フロアで朝食を(たしな)んでいた斬鵺たちだったが、そこに来客が訪れる。

黒髪に白スーツを着こなすダンディーな男性。

東洋人の顔付きで在りながら、背丈は西洋人にも引けを取らない高身長。

その男性を玄関先で相手にしているのが、メイドのマリンだった。


マリンは両手を前で重ね、常に目前の男性に対し頭を垂れた状態で話を聞き入れていた。

その光景を斬鵺たちは、観葉植物の裏にひっそりと隠れて様子を伺っていた。


「誰でしょうか、あの人?」


「マリンさんの対応から見て、この別荘のオーナーと言ったところかしら?」


「オーナー?ということは……」


「あの人がラピスちゃんのお父さん!?」


遠目から様子を伺いつつ、涼風(すずか)たちは男性に対して様々な仮説を打ち立てる。

そんな中、何故か星蘭(せいら)は斬鵺にスリーパーホールドを決めていた。


「く、苦しい……星蘭、ギブ、ギブ!!」


「ダメ!私のメロンパンを盗み食いした罪は高く付くよ」


経緯は以上の通りだ────

朝食に用意された星蘭のメロンパンを斬鵺が悪戯半分に摘まんでしまったことに対する仕返し。

言うまでもなく自業自得というやつだった。


「悪かった、謝るから────そして、兎雪(とゆき)さんは無音でシャッターを連射しないの!」


斬鵺は背中から伝わって来る柔らかい弾力や、甘いシャンプーの香りに()()れる暇もなく、今度は隣でスクープカメラマンの如くシャッターを切る兎雪へツッコミを入れる。


「ふん、甘いですね斬鵺さん。あの人がもし、私たち異能力者を排除するために行動している謎の組織のメンバーさんだったらどうするんですか?」


「 ・ ・ ・ はあ!?」


先日、斬鵺からプレゼントされたカメラを片手に、兎雪は謎の暴言を口走った。

彼女の言動に斬鵺も思わず絶句する。


「幸い目出し帽などはなし。顔バレしている今のうちに証拠となる写真をパシャリするのが捜査の鉄則ですよ、メロンパン刑事(デカ)(ぱくり)」


兎雪はシャッターを切りながら時折、空いた片手に持つ朝食のメロンパンに小口で被り付く。


「お前そんなキャラだったっけ!?ここに来てお前は一体何に侵されたんだ!」


「そんな事よりも早く銃を構えて下さい、メロンパン刑事(デカ)(ぱくり)」


「それ完全にブーメラン刺さりまくってるぞ!メロンパン(くわ)えてるやつにメロンパン刑事(デカ)とか言われても困惑するだけなんだけど!!そもそもメロンパン刑事(デカ)って何!!?」


「一度メロンパンを食した人間は、全てメロンパン刑事(デカ)になるそうです(ぱくり)」


「相当な繁殖率だぞそれ!!随分悪党も住み難い世の中になったなこの野郎!!そして、お前はホント何に侵されたんだ!」


(ただ)でさえ偏差値の低い斬鵺の偏差値が溶け出す勢いだった。

二人のやり取りが徐々にエスカレートする中、そこに自ら起爆剤となって戦場を荒らす者が現れる。


「銃を構える?銃を構える!!分かった、私に任せて!!」


そう言って、現在進行形で斬鵺にスリーパーホールドを決めている星蘭が声を高らかに上げる。

すると、彼女は先程まで斬鵺の首に回していた腕を今度は腹部へと回す。


「ちょ、なになになに!!?」


星蘭が斬鵺の腹部に回した途端、斬鵺の足元が床から乖離(かいり)し、宙に浮かぶ。

そして、そのまま彼女は上半身を後ろに反らし始めると、その遠心力に沿って斬鵺の身体も宙を舞いながら徐々に後退する。


「どりゃ!」


そして、止めの一撃として斬鵺の後頭部が床に突き刺さる。


「ぐはっ!!!!!!!」


鈍い音と共に間抜けな声が自然と斬鵺の口から零れる。

こうして星蘭は斬鵺を強引に後退させると、彼女は観葉植物のすぐ手前の前線へと立ち、どこに忍ばせていたのかモデル銃を手に取り構える。


「ふっふん、私はサバゲにおいても世界ランキング3桁に入る実力者なんだよ!」


「……嘘付けテメェ!サバゲでもそうやって格闘技決め込んでるからだろ!!そもそも、コントローラーで人が簡単に殺せるほど物騒な世の中にはなっちゃいねぇ!!あれか、“今日はコントローラーの十字キーと丸ボタンを使って、簡単に人が殺せるレシピを教えるよ”のコーナーでも開くつもりか!?」


当の本人さえも自分で何を口走っているのか理解できていない。

完全に偏差値が融解している。


それを煙たそうにして星蘭が表情のない真顔で彼の顔を覗き込む。

瞳に温かみがなく、(しばら)くして口元が乾いた笑みへと変わる。


「 ・ ・ ・ きーちゃん、最後のツッコミはいらなかったかなぁ、残念!!」


「そんな冷静な分析は注文しとらんわ!!言ったこっちが余計に恥ずかしくなるだろ!」


最早隠れている意味さえも問われる事態に涼風も頭を悩ませていた。


そんな中、玄関先で動きが見られる────


「ところでラピスは?」


白いスーツを着た男性が口を開き、重圧のある声を響かせた。


「……少々お待ち下さい、今御呼び致しま────」


マリンが話をしている最中の事────

彼女の言葉を封じるようにして突如弥鶴とラピスがその場に姿を現す。


「────」


「────ッ!?お、お父さん!?」


ラピスは玄関先で立ち尽くす男性に対しそう口にした。

たまには、こうして圧倒的茶番劇を入れておかないと、書いているこっちもちょっとしんどくなってきますw


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