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お待ちしておりました、お嬢様

 ◆◆◆ NEXT ◆◆◆



()りずに太陽はまた昇り、それと共に人々は一日の始まりを噛み締める。

迎えるはゴールデンウィーク初日。


『今日からゴールデンウィークを迎え、各地高速道路や新幹線などで渋滞や運行の遅れなどが発生しております。ご注意下さい』


斬鵺(きりや)たちが朝食時の朝テレビには、ゴールデンウィークの帰省ラッシュについての話題で持ち切りだった。


そんな事態を微塵も想定していない斬鵺たちTERCES(仮)(ティラシス)のメンバーは各々身支度を済ませ、靴を履いて玄関越しで待機する。


今回の参加メンバーは、涼風(すずか)弥鶴(みつる)星蘭(せいら)・斬鵺・ラピス・兎雪(とゆき)千冬(ちふゆ)の計7名。

また、同じ屋根の下で共に過ごしていながら、話の輪に参加をしていない響夜(ひびや)は、相も変わらずその堅い部屋(103号室)の戸を閉じたままだった。


「それじゃあ、行くとしますか」


玄関の戸の鍵を閉め、先陣切って口走るのは弥鶴だった。

何故、彼らが帰省ラッシュに巻き込まれる危険性を微塵も考慮しないのかは、彼の異能にあった。


澤留(さわとめ)弥鶴(みつる)の異能“転移”は、一種の瞬間移動(テレポート)の類と同一化されるもの。

目的の座標地点を固定することで場所を瞬時に移動できる。

目的地であるラピスの別荘の座標は、(あらかじ)め彼女から地図を用いて示されている。


弥鶴は瞬き一つでその瞳を赤く変色させ、異能開花の発現を指し示す。

それとほぼ同時に周囲のメンバーは、彼に直接或いは間接的に触れる。

”転移”の特徴として、自分以外のものを飛ばす際は、直接或いは間接的に触れることが条件下だからである。


「────ッ!」


弥鶴の異能が発動する────

7人もいた人の集まりは、誰一人残されることなく、その場から忽然(こつぜん)と姿を消す。

飛んだ瞬間には、その場に僅かな土煙が上がるだけだった。



 ◆◆◆ NEXT ◆◆◆



「到着!」


弥鶴が設定した座標に7人は降り立つ────

その体感時間はおよそ1秒にも満たないほど一瞬の出来事。


彼らが降り立った地は、桜浜市北区と東区の境目に位置する山の中。

周囲を人工芝と森林に囲まれた辺境の地────

和風という独自の文明を持って確立した日本においては、まるで彫刻画のように映し出される目前の西洋建築。


「あれがそう?」


「はい、そうです」


異質さを帯びるほど周囲から隔離(かくり)された白壁の建物。

階数2階建てに加え、屋根部分には屋根裏部屋を連想される窓とそれ相応の空間が外観からでも把握できる。

2階の中央部分は壁が内側に(へこ)み、凸出(とっしゅつ)したバルコニーに広々とした空間を(もたら)す。

そして、その凸出したバルコニーを支える形で造形された3本の円柱型の柱が、1階の玄関戸の前に立ちはだかる。


正に別荘と呼ぶに相応しい建物が彼らの前に(そび)えていた。

その光景にラピスを除いた他のメンバーは完全に臆してしまう。


「壮観だね」


「ですね」


弥鶴も斬鵺も目の前の光景に語彙(ごい)力を欠かす。


一先(ひとま)ず建物内に上がって下さい」


そう言ってラピスは、普段と変わらないその美しい金色の髪をツインテールに縛った母譲りの自慢の髪を(なび)かせ、先頭を切って現在地から玄関まで石積みされた直線状の通路を歩いて進む。

彼女に(なら)って他のメンバーも荷物を転がして後を付けた。


そして、別荘の玄関前でラピスは立ち止まり、ゆっくりと観音開きの戸を押して行く。


「お待ちしておりました、お嬢様」


ラピスが開いた戸の先には、役職に足る白と黒がベースの正装に身を包んだ年若い黒髪のメイドが一人、(こうべ)を垂れて出迎えをする。


「ううっ、なんか、こうしてマリンに出迎えて貰うの凄く久しぶりな感じ……っと、それは兎も角。ごめんなさいね、急に御呼び立てしちゃって……」


「いえいえ、構いませんよ。私もこうしてまた数日間、お嬢様のお世話ができますし、それに……お嬢様が御客人を招き入れるだなんて初めのてのことですから、うふふ」


「ちょっと!私を“ぼっち”みたいに言わないでよ。しかも、みんなの前で……」


「あら、それは大変失礼致しました。では御客人の皆様、一先ず2階フロアにご案内致しますので、どうぞ上がって下さい」


「あ、はい」


ラピスと然程(さほど)年の差も離れていないマリンと呼ばれる少女メイドは、久々の彼女との会話に親しみを含んだ笑みを浮かべる。

そして、彼女に促された通り御客人であるTERCES(仮)(ティラシス)のメンバーは別荘内に上がるも、その新鮮さに思わず踏み出す足音を殺してしまう。


1階フロアの天井に浮かぶのは豪華なシャンデリア。

金色に輝くそれは、周囲の淡いクリーム色の内壁に明度を付け、よりはっきりとした特色を浮き立たせる。


足元を見て歩くことを心底損に思えるほど清楚な内装に目を配りながら、一向はマリンの後を付けて2階フロアへと(おもむ)く。

道中駆け登る螺旋(らせん)階段に、星蘭は興奮を抑えられなかった。

私も別荘みたいなものがほしい~なぁ

絶対に落ち着かないと思うけど…w

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