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ラピスちゃんの別荘に決定!!

久々の投稿になってしまって申し訳ありません

3月中は週1、4月以降は(なるべく)週2のペースで投稿していきますm(_ _)m

頭上に舞うは淡いピンク色の桜から、巨大な影を落とし空を泳ぐ(こい)登りへと季節は変わり行く。

だが、斬鵺(きりや)の日常においては、そんな些細な変化に別段特別性を抱くことはなく、教室から静かに窓の外を眺め、宙に浮かぶ雲の在り方について論じてみる。

そうして、次第に西日に沈む太陽のご機嫌を伺いながら変哲もない一日を終える。

彼も普通の高校生で真面(まとも)な家に住んでいれば、文字通り一日の終わりを迎えられたであろう。


だが、斬鵺が事TERCES(仮)(ティラシス)に帰るという条件下においては、その日常内での常識は通用しなかった。

TERCES(仮)(ティラシス)に帰って以降、斬鵺は今日も一癖も二癖もある周囲のメンバーを相手に怒濤(どとう)のツッコミを食卓にてかます。


そんな普段と変わらない賑やかな夕食後、食卓に顔を出していないごく一部を除いたTERCES(仮)(ティラシス)のメンバーたちは、引き続き食卓に顔を合わせたままとある議題の解決へと(いそ)しんでいた。

その司会進行は、寮長である涼風(すずか)を差し置いて星蘭(せいら)が取り行っていた。


「はい、明日からゴールデンにウィークの7連休ということで、皆さん行きたい場所はありますか?因みに私はリゾートホテルに一票!!」


「却下ね」


「そんな!涼風ちゃんどうして?」


ハイテンションで語る星蘭の意見を問答無用で圧し折る涼風の一言。

議題は改めて語るまでもなく、今年のゴールデンウィークの過ごし方についてだ。


「まず断トツで資金が足りないな。移動料金は俺の異能で浮いたとしても、今後の不安定な収入で生活を続けることを冒頭に入れると、できて3名様2泊3日が限界だろ」


「やっぱり金かぁ!お金許すまじ!!」


涼風の一言を肯定する形で弥鶴が説明を付け加える。

その説明に納得のいった星蘭は酷く落胆していた。


それから暫く時計の針を回すことになるが、星蘭ほど強い願望を他のメンバーは抱いていないというのが現状を平行線化する要因だった。

そして、星蘭自身も皆の意見を尊重し身を引こうとしていた時だった。


「あの……」


苦慮(くりょ)して静寂となる空気に付け込む少々弱々しいその声は、金髪の長髪をツインテールにして結ぶラピスのものだった。

それを口にした時の彼女はやや視線を泳がせていた。

そして、次に発せられる彼女の言葉を一同静かに待った。


「私、ゴールデンウィークの期間中は近くの別荘に泊まる予定がありますので、もしよろしければ……流石にリゾートホテルまでとはいきませんが、宿代は請求しませんので……」


突然のラピスからの提案に一同は(はと)が豆鉄砲を食ったような丸い目をしていた。


黒崎(くろさき)・マリーネ・ラピスは、元々裕福な家庭で育った一種のお嬢様。

日々の生活においては、お世話係や執事、メイドの手助けあってこその日常という完壁な暮らしぶり。

その背景には、現在世界でも高いシェアを誇る有名ブランド企業“Sepon(シェポン)”を創設した両親の権力があってのことだった。


“Sepon”の人気の秘密は、値段や素材に関係なく繊細に造形されたタッチ。

お手頃価格でありながら、芸術性という甘味を含んだそのシルエットは、(たちま)ち人々を(とりこ)にしていった。


以来、日本も含め海外を転々とする両親は、その過程で幾つもの別荘を持ち合わせていた。

今回ラピスがTERCES(仮)(ティラシス)のメンバーを招き入れようとしている別荘もその内の一つに過ぎない。


「ラピスちゃん……どうしてもっと早くそれを言ってくれないのぉぉぉ!!しかも一人で抜け駆けしようだんて、ズルいズルいズルい!!」


「ひ、雲雀(ひばり)先輩、そんなに揺らさないで下さい!」


いち早く正気を取り戻した星蘭が、少し涙目でラピスの肩を勢いよく揺する。

揺さぶられた方の彼女の目は完全に目を回していた。


「よし、それじゃあ今年のゴールデンウィークは、ラピスちゃんの別荘に決定!!」


星蘭は高らかに宣言しながら、大きくホワイトボードへと書き記す。

これ幸いと喜ぶ星蘭に対し他のメンバーは、お嬢様としての本領を発揮するラピスの前に平身低頭の意を持って言葉を詰まらせる。


これより紡がれるは、数々の幸運に恵まれ、数々の試練を課せられた金色に(なび)く少女の物語────

少女が内に秘める苦悩を吐き出し、それを乗り越えるための舞台が幕を開ける────

ゴールデンウィークはインドア派です!

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