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俺、こんなんで今日一日大丈夫か?

兎雪ちゃんの衣装に悩みました///

 ◆◆◆ NEXT ◆◆◆


夜が明け約束の日曜日を迎える。

内心でも驚くほどに斬鵺(きりや)は普段の休日と変わらないサイクルで目を覚ます。


『続いてニュースをお伝えします。地球から火星への移住は困難と断定されてから3年。日本はアメリカと共同開発を進めていた疑似惑星天体船を完成させ、今日移住者たちがハワイに集められ────』


ダイニングで語り聞かされるニュースに然程(さほど)の興味を示すこともなく、斬鵺はリモコンを取りテレビの電源を消す。


二人がTERCES(仮)(ティラシス)を出発する予定時刻は午前10時────


予定時刻が刻々と迫る頃、時間を余らせていた斬鵺は余裕で身支度を済ませ、玄関で兎雪(とゆき)が降りて来るのを待っていた。

上はTシャツに下はジーパン、そしてTシャツの上に肌寒さ対策用のジャケットを羽織る至ってシンプルで癖味(くせみ)のないスタイル。

有り体に言ってしまえば普通だった────


先日調整した腕時計に斬鵺は目線を落とし秒針を目で追う。

時刻は10時を過ぎ、秒針が半周したところで2階の廊下を駆ける足音が1階の天井に振動として伝わる。

伝う音は次第に階段を駆け降りる音、1階の廊下を駆ける音へと変化する。

そして、壁の死角から彼の視界に飛び出すそれは、普段とはまた異なったオーラを(まと)って白銀の髪を(なび)かせる。


「はぁ、はぁ……すみません、遅くなりました」


小息を刻みながら開口一番に斬鵺へ謝罪の一言を口にする白銀の少女は、紛れもなく兎雪()の人だった。

玄関で待ち(ぼう)けていた彼はそっと息を呑む。


今日の兎雪の服装は、上は首回りがよく見える白地のアンゴラニットに、下はミルクティー色のトレンチスカート。

斬鵺と出会った当初の着物姿のように無理に胸元を締め付ける必要がないため、彼女の胸元はふわっとした毛立ちのニットの上からでもはっきりした膨らみが浮き立ち、下に履くスカートは膝下丈程度の長さにすっきりとしたシルエットを描き、僅かに見せる足元は、黒のストッキングに包まれ華奢(きゃしゃ)な足元を際立たせていた。

また、髪型も普段と同じポニーテールだが、いつものような単純なヘアゴムではなく、黒紐を使ってリボン結びで()わいているため、彼女を正面から捉えても結び目から黒紐が垂れて見える。


「…………」


「あ、あの兄さん……」


「……あ、ああ。じゃあ、行こうか……」


「はい」


(俺、こんなんで今日一日大丈夫か?)


出だしから瞬殺のストレートパンチを喰らった斬鵺。

一度の醜態(しゅうたい)が不安と緊張を(あお)る。


斬鵺はTERCES(仮)(ティラシス)の玄関の戸を引き少し先を行く。

兎雪はローファーを履き、そっと駆け足で前を行く彼のもとへと駆け寄った。


こうして斬鵺は、緊張の糸を張り続けたまま兎雪との波乱の買い物イベントをスタートさせた。



 ◆◆◆ NEXT ◆◆◆



ショッピングモールに向けて二人は桜浜市北区を目指す。

そのためには循環バスを使わざるを得ないため、二人はまず海城駅に足を運び待機する。


ものの数分でバスが到着すると、二人は後方の二人席に詰めて座る。

手荷物は然程ではないものの、二人の肩は常に触れた状態のままだった。

同時に兎雪の髪から漂う甘い香りが斬鵺の理性を搔き乱す。


邪気を(しず)めようと斬鵺は咄嗟(とっさ)に窓越しに映る外の景色に目を向ける。

車内で会話する声はないものの、隣に座る相手が見知った相手だと意識すると、彼は無性なまでの気まずさに駆られた。

幾つもの情報量が彼の思考を蹂躙(じゅうりん)する中、彼はそっと震える唇を開いた。


「そ、そう言えば、今日は何買うのか決まってるのか?」


彼が発した言葉は完全に裏返っていた。


「はい、えっと……」


斬鵺とは対称的に狼狽(うろた)える様子もなく凛とした(たたず)まいの兎雪は、バッグの中からメモ用紙を取り出す。


「まず文房具に箸と茶碗とコップ、エプロンにスリッパ、シャンプーにトリートメントにリンスとハンドタオルにバスタオル、あとは少し洋服も見て、最後に……っ……これは最後として、以上です」


“最後に”の後から兎雪は少し頬を朱色に染め小声で何かを呟く。


「意外と多いんだな……」


「あはは、書き込んでいる内に“あれも欲しい”、“これも欲しい”ってなっちゃいまして……」


少し照れ臭そうに兎雪は苦笑する。

たった一度交わした会話で斬鵺の方も彼女の雰囲気に慣れ、力んでいた肩の力が抜けると、徐々に自分のペースを取り戻して行った。


北区は海城駅の裏側────

つまり、TERCES(仮)(ティラシス)から海城駅に直線距離で向かう方角上にあった。


これから二人が向かうのは、数々の店舗が立ち並ぶ大型のショッピングモール。

休日であることから人数も多い。

そんな大勢の人たちが密集する建物内で斬鵺たちは、今一度自分たちが置かれている立場を再認識する事件に遭遇することをこの時はまだ知り得ていなかった────

ニュースの内容・・・


他に長編作品を書くのであれば、この作品と同じ世界観から派生する作品を一つ書きたいなと思っているので、ちょっと凝った内容のニュースにしてみましたw(←型月作品の真似事ですw)

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