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Glory Island Fly Trait   作者: かなみかず
1/3

Glory Island Fly Trait 空


ここは空中都市と呼ばれる場所。

空に浮いた一つの国。

どうして浮いてるとかそういう難しいことはよく分からないが

確かに一つの塊が浮いていて

確かにそこに人が住んでいるのだ。

そこを『フライアイランド』と呼ばれている。


町から町への移動はほぼヘリコプター。

だが時代が時代なので電車や車での移動も可能になった。

ヘリコプターの移動はもはや遠くへ行くときだけ。

それ以外は殆ど乗られなくなってしまった。


そんな中、

一人の男の子は空への旅に憧れていた。


ある町のある家のある部屋で

その男の子はいる。

弟、妹がひとりずつ。

そして両親を入れた五人家族。

はたから見たら仲の良さそうな家族。



「・・・・・。」

ベッドの上で横になっていた男の子は

何かを思い出したかと言うように

いきなり体を起こし

机に置いてあったゴーグルを片手に持ち

外へ走っていった。


男の子の家からそんなに離れていないある一つの小さな家へ向かった。


「カイ!!」

「!ソラ、どうした??」


十代後半の男性の家、

カイと言うらしい。

男の子ソラはカイに会いたかったと言うようにワクワクしている。


「また教えてくれよ!というか操縦させてくれ!」

「明日まで駄目だ!」

「一日くらい良いだろ??」

「法律で決められてるんだからしょうがないだろ!10歳になるまではヘリコプターの操縦は禁止!破ったら13歳まで乗れないんだ!延ばしたいか??」

「・・・分かったよ。。。明日の誕生日まで我慢するよ。。。なら明日朝に操縦しようと思うんだけど、見に来てよ!」

「あー、本当は見に行きたいけど今日から明日にかけて、どうしても外せない用事があるんだ。」

「・・・そうか、用事があるなら仕方ないか。。。」

とても残念そうにうつむいてしまった。

「でも明後日なら教えられるから!」

「!!?本当か??約束だぞ!!

そしていつかオレの運転するヘリに乗ってくれよ!」

「分かったよ!

明日は初めて動かすんだから気をつけろよ。」

「うん!」



ソラは明日で10歳になる!

ずっとずっと操縦してみたかったヘリコプターにやっと一人でも乗れるのだ。

待ちきれなくて本当は今すぐにでも乗ってしまいたい。



ルンルンに帰るソラ。

それは外にいる間だけだった。

家に着いた途端、

真顔になり

何も言わずに家へ入った。


「ソラ、おかえり!」


母親が迎えてくれた。


父親と母親

それに小さい妹とまだ赤ん坊の弟。

正確に言うと父親とは血は繋がってなく

妹と弟もそれからできたので

半分だけ。


母親が食事の用意をしていた。

そう、これから夜ご飯。


「カイ君のお家行ってたの??」

「う、うん。」

「そっか。もうご飯できるから座りなさい。」


妹の隣の椅子にて座る。

母親も座ってからの

「いただきます」

テーブルを囲み

皆、楽しく食事をしていた中

ソラだけは静かに黙々と食べている。

「パーパー、私明日遊園地に行きたい!」

「そうだな、最近仕事ばかりでどこにも連れていってあげられてないからな!良いぞ!」

「やったー!!」

「久しぶりに家族四人のお出掛けだな。」

「なに言ってるの??明日はお兄ちゃんの誕生日でしょ??」

「・・・・・・・別に良いよ。・・・四人でいってらっしゃい。」

「ソラ!欲しい物何かある??」

「何もいらない。」


すぐに食べ終わり

一人部屋へ戻っていった。


「・・・とても妻(君)の子供だとは思えないな。」

父親の冷たい発言に母親の表情を困らせた。

一番下の弟が泣き叫んだ。

ミルクの時間だ、弟の元へ。。。




そう、

父親とうまくいってないのだ。

家族の中でも一人でいることが多いソラの味方は母親。

お世話になってるから誕生日プレゼントなんていらない。

そしてカイ。

ソラ唯一の友達。




何をしても不器用で終わるオレ。

妹のほうが幼い割にはオレよりできる。

将来が楽しみだとあの父親が言っていた。

けどオレが何に失敗したとしても

誉めてくれるのが母さんとカイだった。

母さんなんて弟の面倒で大変なはずなのにオレの相手もしてくれてる。


それが嬉しくてここにいる。

だから文句は言わない。

母さんが選んだ相手(父)だから。。。

会話さえなくても良いんだ。。。


それにカイもいるし!



その二人さえ居れば・・・。






家族は朝早くに遊園地へ出掛けるらしい。

ヘリコプターを使われてしまう前に・・。

誕生日を迎えたソラは朝早くに目を覚ます。


さっさと着替えて

大きなヘリコプターの前に立った。

ずっとずっと操縦してみたかったヘリにようやく自ら運転することができるのだ。

ドキドキと鼓動の動きがどんどん大きくなる。

また不器用で終わらなければ良いが。。。


「とうとう操縦するのね。」

「!?母さん!!」


いつの間にか後ろにいた母親に

大声を出してしまった。

しかもまだ朝になったばかりの時刻なので声が響き、

急いで口をおさえる。。。


「な、なんでいるの??」

「だってソラが小さい頃からずっと待ち望んでいたヘリコプターの操縦よ!私もずっと楽しみに待ってたんだから!」


本当にウキウキしてるようだ。

多分ソラより。

ちょっと照れたので被っていた帽子を深くした。


「・・・・・オレ、まだ母さんを乗せてあげられないけど、いつか絶対母さんを乗せてあげるから!!」

「ふふ!ありがとう!もう一個楽しみができたわね!

・・・・ソラ、今日一緒に遊園地行かない??楽しいわよ!」

首を横に振った。

「・・・・・・・ライ(弟)、泣いちゃうよ。戻らなくて良いの??」

「・・・あなたが飛び立つところまで見たら帰るわ!気をつけてね!少しでも危ないと思ったらすぐに着陸させなさい!あとカイ君から習ったことをしっかりと思い出して」

「分かったよ!!大丈夫!!無理はしないから!!」

「・・・ソラ!誕生日おめでとう!10歳になったわね!」

「ありがとう!」


ヘリコプターの中に入り

操縦席に座った。

ミラーをいじり

ヘリのエンジンを入れて

首にかけていたゴーグルを付けた。

これが無きゃ何だか集中できないのだ。

そして両手でハンドルを握り

アクセルを右足でかける。


ひとつのヘリコプターが

勢いよく空をとんでいる。

母親もすごく嬉しそうに見上げて

ヘリコプターがある朝空をながめる。


空から町を眺めて見たいが

ソラにはそんな余裕は一切ない!

下手したら墜落して死亡!

という可能性があるからだ。

でもずっと憧れていた操縦を今できた。。。


それだけで大満足!


馴れない操作で

着陸時に何ヵ所がぶつけてしまった。

あの父親に嫌みを言われると思うが

今のソラにはそんなことなんともない!

不器用なりに頑張った!

正直・・・いや、やはり・・・

ヘリコプター操縦の才能はないなぁ。。。

実を言うと思いきり引っ掻いた傷跡を残してしまった。。。

練習あるのみ!


周りを見渡したが

母親は弟がいるので帰っていってしまい

もういない。


満足して眠くなってしまい

ソラはそのまま自分の部屋へ戻る。

二度寝をはじめた。






起床。

ヘリ初体験の前はあまりにも楽しみという緊張のせいで

眠れなかった。

だからなのか

二度寝は爆睡した。

もう夕方になっていた。

一日を無駄にした気分。。。


正直まだ寝れる。

でもやらなきゃいけないことがある。

カイに初体験の感想を報告することだ!

カイの今日の用事はもう終わっただろうか??


居ると信じてカイの家へ向かう。



ソラを置いて家族でお出掛けなんてしょっちゅうだから

あまり気にならなくなった。

母親は最後まで誘ってくれる。

断る理由は

先程とおなじ。

母親に迷惑をかけたくないからである。






ソラは約5分歩いて

カイの家に着いた。


「あ!」


丁度帰ってきたのか。。。

カイが家の前にいる。


「カイ~!!」

「おう、ソラ!」

「あ。」


もう一人いた。

女の人だ。


「こ、こんにちは。」

「こんにちは。お友だち??」

「あぁ、ソラって言うんだ!」

「・・・・・・彼女か??」

「まぁそう思うよな。当たってるけど。

・・・・・・ソラ!オレこのお姉さんとな、結婚するんだ!」

「え??」

「お姉さんのお腹の中に赤ちゃんがいてな、ご両親に挨拶に行ってたんだよ。」

「・・・・・・。」


ショックだった。

まだ18歳のカイが結婚まで行くなんて。

いや、多分ショックだったのはそっちではない。。。

恐らく。。。


・・・・・でも。


「・・・おめでとう!」

「サンキュー!」

「ありがとう!」

「そういえば今日どうだった??初体験!」

「あ。。。うん、でも今日は邪魔すると悪いからもう帰るよ!」

一礼して家へ戻っていった。

「初体験??」

「ソラは今日で10歳なんだ!」

「あ、ヘリコプターの操縦ね!」

「あいつオレの弟みたいな奴なんだ!よろしくな!」


と走って去っていくソラの背中を眺めていた。






ショックすぎたのか

落ち込み度が半端ない。

頭が真っ白になってる状態で歩いていたら

いつの間にか家に着いていた。

家族はまだ帰ってきてない。


しょうがない、

カイだっていずれ結婚くらいする。

本当にショックだったのはそっちじゃないし。。。


自宅のドアを開けようとしたとき

家のヘリコプターがこちらに向かって来てるのに気付いた。

着陸し

最初に出てきたのは妹だった。

走ってこちらへ来る。


「にいちゃんにいちゃん!!」

「テンション高いな!そんなに遊園地楽しかったのか??」

「今日結局遊園地行かなかったの!」

「え??」


続けて

父に支えられながら

弟を抱えてこちらに来る母親の姿。


嫌な予感しかしなかった。


「ママね、また赤ちゃんできたんだって!」

「・・・・・え。」

「ソラ!只今!今日病院行ったらね、お腹に赤ちゃんができて・・・妹か弟ができるわよ。」

「楽しみー!」

「・・・・・・。」


“思い出した。

これは前に

弟ができたときに感じたショックという気持ち。

どんどん相手にされなくなるだろうという不安。


賑やかになるだろう

これからの“五”人家族は

オレの存在を知らないだろう。”



多分今の父親に嫌われてなかったら・・

あんな“トラウマになるような言葉”を言われなかったら

こんな感情なんて生まれなかったのに。





静かな夜の深い時間帯。

ソラだけ一人部屋。


眠れなかった。。。

大事な人を一気にとられていった気分で

心がどんどん下へ下へ落ちていく。

落ちていっても底が見えない。

なんでだろう。


立ち上がり

ヘリコプター時に使ったゴーグルと

財布を持って廊下へ

外へ出た。



大好きな人には

他に大好きな人がいるのだから。

もう自分がここにいる必要なんてないのだから。



無料ヘリコプター乗り場に乗車。

しかし操縦士もさすがにこの時間帯に子供が一人でいるのは変だと思い。。。


「ボウヤ、お父さんかお母さんは??」

「・・・・・・どこか遠くに行って。。。」

「え??」

「遠くに行きたい。何も聞かないで。」

「でもこの時間帯にボクぐらいの子が一人でいるのは」

「お願いします。お金が必要なら払うから。。。」

「・・・・・・。」



操縦士は仕方無しにヘリコプターを動かし始めた。




“ずっと独りでも平気だと思ってた。

だって周りに構ってくれる人が居たから。


その時点でひとりじゃなかったのかも。


ただ

それはオレのじゃない。


オレのじゃなくなった。


なくなった途端

ひとりぼっちな気がした。


それが悲しくて悲しくて


だれかにかまってほしくて。。。


我が儘なんだろうな


生意気なんだろうな


でもそのときのオレには耐えきれなくなり


本当の独りになりたくて

足が動いた。


あぁ。

大事な人ってその人にとって自分が

“一番”ってわけでも無いんだな。


だからもう望まない。。。”



「ーーーっ」


涙がボロボロ出てきて

大声で叫んだ。


だが

これが最後。

だってこのあとは

かれてしまったせいなのか??


涙が出る気配もなかったのだ。

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