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第二十五回 ヤノマミ(国分 拓)

<あらすじ>

150日間、僕たちは深い森の中で、ひたすら耳を澄ました――。広大なアマゾンで、今なお原初の暮らしを営むヤノマミ族。目が眩むほどの蝶が群れ、毒蛇が潜み、夜は漆黒の闇に包まれる森で、ともに暮らした著者が見たものは……。出産直後、母親たったひとりに委ねられる赤子の生死、死後は虫になるという死生観。人知を超えた精神世界に肉薄した、大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。

※引用:Amazon.co.jp


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 剥き出しの生と、未知の恐怖。この二つに尽きる。

 本作は、アマゾンの奥地で生きる「ヤノマミ」という人達を150日間共に暮らして追った、大宅壮一ノンフィクション賞受賞作である。


 これを読んでいると、善悪の規範に絶対性は無いと痛感する。

 ヤノマミ族は森で出産し、産まれたばかり赤子を地面に転がし、育てるか殺す(この場合、精霊に戻す)か決めるわけだが、殺す場合は母親が手足を使って殺した後、シロアリに食べさせて焼く。我々世界から見れば残虐な行為だが、彼らにとっては正当な儀式なのだ。

 また、てんかん持ちのヤノマミの少年が森に捨てられ、それをFUNASA職員が救い育てた話があった。障害があっては森で生き残れない。だから捨てるという、「森の摂理」を尊重するヤノマミにとっては善なる行為であるのだが、これも我々世界では考えられない所業だ。


 このように違うと、同じ人間なのか?とも思ってしまう。それは彼らが人間以下というのではなく、「別の種類の人間」に思えてならなかった。

 冗談も言うし、笑いもするし泣きもする。嘘も尽くし、争いもする。我々と変わらない人間なのだが、何か違う。同じに思えない。


 その理由を真剣に考えた時、文明化と共に捨てた剥き出しの生と、未知なる恐怖がそう思わせるのだろうと思った。


 追伸、ファンタジーやSFで未知の部族を登場させる物書きは、是非これを読んで欲しい。ヤノマミの未知に触れ、困惑する感情を投影できたら、その作品のリアリティが増すだろう。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


区分:ドキュメンタリー、教養、学術

ジャンル:ノンフィクション

続編:なし

こんな物書きにオススメ:ファンタジーやSFで未知の部族を登場させたい人

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