第十六回 宮本武蔵(吉川英治)
<あらすじ>
野に伏す獣の野性をもって孤剣を磨いた武蔵が、剣の精進、魂の求道を通して、鏡のように澄明な境地へと悟達してゆく道程を描く、畢生の代表作。―若い功名心に燃えて関ケ原の合戦にのぞんだ武蔵と又八は、敗軍の兵として落ちのびる途中、お甲・朱実母子の世話になる。それから1年、又八の母お杉と許嫁のお通が、二人の安否を気づかっている郷里の作州宮本村へ、武蔵は一人で帰ってきた。
(第一巻より)
※引用:Amazon.co.jp
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何という、上手さ。
何という、甘美なまでの面白さよ。
吉川英治が国民作家で、この作品が大衆小説の最高峰という理由が判る一冊だ。
昭和10年の連載開始という古さでも、この面白さ、読みやすさは色あせない。
小説家を目指すなら、四の五の言わず一度読むといい。いや、読まねばならぬ! 小説の面白さを構成する要素が、全てあるのだから。
ただ、欠点が一つ。
抜群に面白く、抜群に上手いが故に、史実に影響を与えてしまっている事。
宮本武蔵の研究サイトやウィキペディアを見れば判るだろうが、吉川武蔵は史実ではない。全くの作り話だ。言わば、「宮本武蔵演義」というものだ。
しかし、この作品が面白過ぎるが故に、宮本武蔵が小汚い浪人で、恋人はおつうで、親友が又八でないとシックリ来ない。史実上だけでなく、他の創作作品でも。
それほど面白く、罪作りな作品なのだ。
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区分:戦国~江戸時代
ジャンル:時代小説
続編:なし
こんな物書きにオススメ:若者が成長し強くなる作品を描きたい人




