第十二回 ぼっけえ、きょうてえ(岩井志摩子)
夏という事で、ひんやりするホラー小説をご紹介。
「教えたら旦那さんほんまに寝られんよになる。……この先ずっとな」
時は明治、岡山の遊郭で醜い女郎が寝つかれぬ客にぽつり、ぽつりと語り始めた身の上話。残酷で孤独な彼女の人生には、ある秘密が隠されていた……。岡山地方の方言で「とても、怖い」という意の表題作ほか三篇。文学界に新境地を切り拓き、日本ホラー小説大賞、山本周五郎賞を受賞した怪奇文学の新古典。
※引用:Amazon.co.jp
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明治期の岡山県、それも閉鎖的な社会を舞台にしたホラー小説の短編集。
ぼっけぇきょうてぇ、とは岡山弁で「凄く怖い」という意味。
まさに、この作品は、凄く怖い。
その怖さとは心霊というより、人間の業としての怖さ。
差別、近親相姦、穢れといったタブーが、ねっとりとねっとりと書き連ねている。
人間は何と、醜く美しい生き物か。
改めて書きますが、これは心霊の怖さでない。
「生」が故の怖さです。
生きるは地獄、死せるは天国。
まさに、生きる事への執着が恐怖に繋がっている。
そして、読了後に皆さまはこう思うだろう。
貧乏は、ぼっけぇきょうてぇ。
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区分:明治
ジャンル:ホラー小説
続編:なし
こんな物書きにオススメ:ねっとりとした怖さ、非心霊の怖さを描きたい人




