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掴める程度のシアワセ
私という人間は、口を開けばため息しか吐けないようだった。
「ため息をひとつ吐く毎に、シアワセがひとつ飛んでいく」
誰かにそう注意され、考えてみた。
その結果、飛んでいっては困るようなシアワセなど元々持ち合わせていなかった。
私は今日もため息を吐く。
私は「ため息をひとつ吐く毎に、シアワセがひとつ飛んでいく」なんて心配をしなくても良いらしい。
信号が赤から青に変わる。
前の車が直進した道を、私の友人が運転する車は左折する。
その時、横断歩道の手前で立ち止まり、携帯電話を握りしめる高校生が目についた。
赤信号に変わったばかりの歩行者用の信号機を一睨みした高校生は、いま、たしかに、ため息をひとつ吐いたようだった。
きっと有り余る時間を有意義に消化することすらできないくせに、信号機が赤から青に変わるまでの時間ですら無駄と感じているらしい。
想像してみた。
あの高校生から飛んでいったシアワセを。
簡単に掴めそうだとおもった。