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79 援軍三万

天正五年七月

 上杉が能登に侵攻。


またかい!?

なんというか一年中戦争し続けているけど大丈夫なのかよ。余計なお世話だとわかってはいるが、上杉家の内情を心配してしまいそうだ。

それにしても無茶な戦い方をする。どうみても、三ヶ月も耐えれば上杉は退かざるを得ない。去年の収穫量を見れば、今年の収穫の九月を無視できないのだ。

まあ、収穫を無視できないのはオレもなんだけどな。


まあ、その辺の予想は、攻められる本人も重々承知のようだ。上杉の再侵攻に対し、能登畠山家は、近隣住民を能登七尾城に集め上杉との徹底抗戦の構えを取る。

一応、織田家(前田家)からの支援物資で、それだけ人が増えても七尾城は持つはずだ。

そして、上杉が九月に引けば、年貢徴収後に織田家の加賀侵攻が始まる。上杉の援軍がない一向宗の命運は風前の灯である。




…はずだった。


七尾城は増えた人口を管理しきれず、糞尿の処理能力がパンクし疫病が発生。

物資は足りたが、それ以外のことはきれいさっぱり無視されていたらしい。


そして決定打。

能登畠山家当主 春王丸が病により死去。

戦う以前の段階で、畠山家は最大のピンチを迎える。

それに対し、畠山家重臣のちょう 続連つぐつらは織田家に救援を求め、織田信長は、越前前田家に七尾城救援の命を下した。


前田加賀守利家を総大将として、与力である不破光治に佐々成政の両名に、丹羽長秀、蜂谷頼隆はちや よりたか金森長近かなもり ながちかが参陣。そして軍目付けとしてほり 秀政ひでまさがやってきた。その総勢3万の軍勢である。


当初、協力を予定していた近江の羽柴様は、大和地方で松永久秀に怪しい動きがあると、筒井家より報告があり、筒井家と共に南近江と大和の警戒をしている。




さて、畠山家への援軍出撃命令が下ったのが八月である。

収穫の時期は九月であり、年貢の徴収直前の時期だ。常識的に考えれば、この時期というのは備蓄の量が一年で最も少ない季節である。

当然、その理論は全国一律。越前だって例外ではない。

そこに三万の大軍である。

笑えないよ!!


分かっているんだよ。援軍だもん。一刻も早く兵をまとめて進む必要があるよね!わざわざ、足の遅い輸送隊を編成して、各地から兵糧まとめて、加賀まで行かせるような非効率的な方法を取る訳がないよね!

そういう意味で、兵糧は現地に一番近い所が提供するのが合理的だよね!

一番近い所ってどこですか?どう見ても越前一択じゃねぇか!!


さて、ここで楽しい越前の状況を再認識だ。

昨年の上杉侵攻でめちゃくちゃになった(した?)越前年貢の徴収に関しては問題ない。だが、その後に能登の畠山家に物資を支援して、越前の備蓄も減少。減った分は織田家に補充してもらったからいいけど、その後の賦役に提出している。

つまり、今のこの時期の越前は給料日前日という状況である。

ああ、もちろん備蓄はゼロじゃないよ。そこまで無茶な配分はしてないよ。

でも、この時期に越前前田軍の倍以上の兵力である三万人分もの兵糧が残っているわけないだろ!!


大殿はオレが頭を振れば米俵が転がり落ちてくると思っているのか!?日本むかし話の魔法の石臼や打ち出の小槌を持っていたら、オレがここまで苦労しているわけないよ。


隣国の若狭の丹羽様が、ある程度の兵糧を提供してくれたけど全然足らん。同じく隣国の長浜の秀長さんからは「こっちも大和行くので無理。御免なさい」メールが来た。

『わかっています。大丈夫です』と空元気の返信を送って、オレは最後の手段を取る事にする。

銭で米を買うのだ。

前にも言ったが、この一番米が高い季節に大量購入である。

当然、越前でかき集めた銭だけでは足りないので、商人から金を借りて兵糧を購入。

もう、なんていうか泣きたい。

そんな、涙の累積でなんとか必要量を確保することが出来た。

といっても、これ以上は逆さに振っても鼻血も出ないからな!


しかも、これって兵糧そろえたから問題終了じゃないのよ。

大殿から兵糧が補充されても、それは九月以降になる。米の値段は当然安くなっている。そこで売却しても差額分の補充はされない。当然借金返済には足りない。銭で補充されるならそのまま返せるけど、世の中の借金には利子と呼ばれるものがある。織田家からの補充である以上そこに利子分の利益が加算されるわけではない。

つまり、どっちにしようとも次の年貢から、商人への借金の返済積み立てが始まるのだ。


越前復興による年貢の収穫量に期待するくらいしか希望が見えない…

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