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78 加賀攻略準備

天正五年五月

今年の織田家へのお代わり要求も終わり。

いつも通りの賦役作業も順調に行っている。すでに、敦賀から琵琶湖までの整備は一段落しており、一乗谷と北の庄城建築などへの労働力の割り振りも開始している。さすがに3年目に入り、内政団たちも各作業に手慣れてきた頃だ。現在必要な作業が、越前の農耕地帯である九頭竜川近辺に集中している事も、労働力の管理が楽な理由だろう。


能登の方は、織田からの支援を受けて畠山家がハッスルしている。先の侵略で上杉に取られた城を取り返しているようだ。

収穫しないで食べるお米は美味しいですか?

いや、別に畠山家が悪いわけじゃないんだけどね。


まあ、越前の内政官の感情はともかく、能登の畠山家と協力体制を結んだ事で、対上杉戦線が着々と出来上がっている。挟まった加賀一向宗の命運は風前の灯だ。すでに、越前侵攻時と情勢は変化し、同盟破棄した上杉に配慮する必要はない。

問題は、取った後の加賀北部が危険地域となる点だ。

去年の簗田広正様の失敗を繰り返すわけにはいかない。

とはいえ、加賀一向衆だって馬鹿じゃない。戦力比が織田軍と段違いで、頼みの綱の上杉が来ないとわかれば、地に潜る程度の事はするだろう。


まあ、無駄なんだけどな。

何せ、加賀南部の織田領は四公六民だ。川を挟んだ隣の税金は安く、しかも急速に復興している。一向宗の僧侶はともかく、その下にいる農民は、その格差の原因を理解しないはずがない。信仰心による慰撫にも限界がくるだろう。そして、その恩恵にあずかれば、織田家になびく農民も増える。

つまるところ、民衆を支配基盤とする一向衆から、民衆の心が離れるわけだ。

悔しかったら、「進めば極楽 引けば地獄」なんて言ってないで、現世で民を救って見せろ。

できればオレもデスマーチから救ってくれ(願望)


そんな状況を何とかするために一揆を起そうものなら、楽しい一乗谷片道ツアーに御招待だ。

このツアーにも意味がある。加賀の寺から僧侶を収容すると、当然その区画の僧侶がいなくなるわけだ。加賀一向宗としては、住民の慰撫の為に新しい僧侶を派遣する必要がある。

通常、僧侶は高等教育を受けたインテリだ。経文も読めなきゃ、お経も唱えられない僧侶を敬う人というのは少ない。それが出来る人間を育てるのに何年かかるか?

オレが内政団を育てるのにどれだけ苦労しているか考えればわかるだろう。

それを派遣し続ければ当然、加賀一向衆の人材資源が減少する。

そうやって育てた新任の僧侶さんも大変だ。近隣住民とのつながりを再構築する必要があるからだ。

昔を思い出すよ、引継ぎなしの荒子城時代を(遠い目)


そんな感じで感慨に浸りながらも、オレのトラップカード『一乗谷お寺化計画』は準備万端だ。

加賀侵攻前に、一乗谷に隔離した加賀の一向衆の僧侶を「加賀の民の説得をするように」と言う名目で加賀に帰す。彼らは喜んで帰るだろう。もちろん、素直に織田家に従うとは思っていない。


さて問題です。

帰ってきたら泥棒猫がいた時の、先住者の行動を簡潔に述べよ。


経験豊かだが一度失敗している先任派と、経験はないが地元に溶け込む努力をする新任派は時間差でブッキングだ。

双方がすべてのしがらみを捨てて、協力し合えるなら問題ないだろう。

だが、そうでなかった場合、管理組織である加賀一向衆がどちらを支持するか。そして片方を支持した場合、もう片方は加賀一向衆をどう思うのか。


前田家としては、どちらを選ぼうと問題ないのだ。

相対する二つの勢力の片方を調略するのは戦争の基本である。「織田家に逆らわないならその場所は君の任地にしていい。一乗谷一向衆がそれを認める」と言ってあげればいいのだ。

大義も名分もそろった正当な取引が成立する。

こうして、織田家に敵対したい一向宗は望みどおり死ぬまで戦い、織田家に味方する一向宗はその跡地をもらえる。双方の意を汲んだ不満の出ない完璧な計画だ。

収入源を握られている一乗谷一向衆に、織田の意向を断る力はない。ゴネるようなら言ってやればいいのだ。


「加賀一向衆がなければ、北陸の一向衆を差配するのは一乗谷一向衆しかないでしょう」


越前を実質支配し加賀守の官位を持つ前田利家が後ろ盾であれば、それは決して夢物語ではないのだ。

それによって一乗谷一向宗の影響力が強くなっても、一乗谷では越前一向衆と加賀一向衆(先任派と新任派)の派閥関係があるわけで、意志統一も大変だ。うまく一向宗としてまとまっても、次は天台宗と真言宗との覇権争いが待っているんだけど、そこは彼らの仕事で、オレには関係のない話である。


奇跡的にそこでも上手くいったとしても、致命的な問題にはならない。

だってほら、一乗谷の生命線の扶持米は、織田家が押さえているからだ。


つまり、加賀一向宗はもう終わっているわけだ。


この策は9月の年貢の時期に発動させるのがいいだろう。加賀の年貢徴収時に面倒な問題が入れば、加賀一向衆の年貢徴収は遅れる事になる。

越前の年貢徴収の制度の速さから見れば、加賀侵攻時にその時間差を有利に働かせる事が可能だ。


主導権はこちらにある。

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