77 上杉侵攻~その3
天正五年一月
デスマーチを引き連れて年越しだー。
さすがに甘く見ていた。荒子、日野の年貢と去年の荒廃直後の越前の年貢とは違い、越前八郡のまっとうな年貢はとんでもない強敵だった。
だが、勝てない敵でもなかった。気分はエリクサーまで使い切ったボス戦みたいな感じだ。ラストエリクサーはラスボスまで温存している。
これでまだ全盛期(ラスボス状態)の越前でないというのだから驚きだ。まあ、今回は上杉侵攻の対応に処理能力の大半を割り振ったが故の話。こんな騒動がなければ、次回は何とかなる…と思いたい。
上杉軍は七尾城の畠山家と睨み合いをしている為、状況に変化はなし。殿も大聖寺城から加賀領内の威圧行動に入っている。
しかし、上杉は早刈で4ヶ月の長期戦か。
もし石山本願寺の支援を受けて兵糧を手に入れているなら、本願寺も本腰を入れているとみていいだろう。
それは本願寺にとっても諸刃の刃だ。莫大な資産を持つ本願寺だが財は有限だ。使えば減る。
言い換えれば、これで上杉が失敗すれば、本願寺も共倒れとなるのだ。絶対に失敗できない。とはいえ、その手を能登に阻まれたわけだ。
散々だな。
とりあえず、残っている作業を済ませてしまおう。越前の賦役もまだ残っているのだ。仕事は山積みである。ようやく動き出した常備作業員の配備もこっちの仕事だな。
ははは、今年一年もデスマーチを象徴するような作業量だ。
天正五年三月 上杉軍撤退。
とりあえず、報告だけ受け取る。
最終的に、能登七尾城は落城することなく、関東の北条家が動いた為に越後に帰還。
こうして、上杉2万の侵攻は失敗した。
となると、織田家による加賀の制圧が再開されるわけだ。一乗谷の建設がまたはかどるわけか。
…ああ、それもオレの仕事か。
そんな中、北の庄に呼び出しを食らう。
「能登へ兵糧を運べ」
大殿から畠山家支援の命令である。
デスマーチは次の年貢まで封印されたはずなのに…
デスマーチっていつからブーメラン機能が付いたのですか?
まあ、この支援の意味は分からないでもない。何せ、上杉侵攻が9月。能登の年貢徴収は絶望的だ。次の収穫まで能登畠山家は勢力を縮小させざるを得ない。
ここで畠山家に援助する事で、織田家の能登への影響力を増やすことが出来る。敵の敵は味方理論の上杉家&本願寺に対抗するべく、織田家&能登畠山家バージョンだ。
誰にとってとは言わんが。運の良い事に、上杉対策に加賀越前北部の大聖寺に兵糧を集積させた関係で、越前中部から南部の年貢には余裕がある。それを能登に送ることは可能だろう。
本当に、能登畠山さんは運が良いな。
問題は、その結果足りなくなる賦役の報酬米だ。それをどこから徴収するかって?そりゃ、盟約通り織田家からに決まっているでしょう。
誰がそれをするかって?もちろん、決まっている通りオレでしょう。
わ~い、最近のブーメランって戻ってくると付加価値が付いてくるんだぜ。
どう見ても、呪われているだろ!?




