表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/137

68 二杯目だけどそっと出す

天正四年一月


年始に前田加賀守が大殿に挨拶に行くので同行する。

オレが同行する目的は、寿命削られイベントの消化だ。


そう、越前援助のお代わりである。


越前侵攻半年で、もうお代わりである。

しかたないじゃん!!越前の新領土の年貢(笑)の収入しかないのに、加賀で起こった脊髄反射一揆とかで出費かさんで、一乗谷普請で賦役の人員裂かなきゃならないんだ。

これで、治水と新田開発にも人員を振り分けないと、いつまでたっても織田家にオンブに抱っこの、お荷物状態が続くことになるのだ。

おかしい、敦賀から琵琶湖までの道設置とか、そっちに割り振るマンパワーが圧倒的に足りない。コレがないと将来の六公四民が…


そんなわけで、資金に資源に食料と、戦略ゲームのお約束三種の神器のお代わりが必要なのだ。


さて、実は去年の十一月末に信長は、嫡男の織田おだ 信忠のぶただに家督を譲っている。

つまり織田家は信長の手を離れたという事だ。もちろん、実権は信長が握っているのだが、それはよくある話。

要するに、今まで織田信長は織田会社の社長兼買収した他会社(大名)の大株主だったのが、それらをすべてまとめてグループ会社にして社長を辞任。会長として統括する立場という訳だ。

最大規模にして主要企業である美濃尾張の織田家は嫡男に任せて、他の大名家にはにらみを利かせて実質支配する。

余計な社内業務(美濃尾張の支配)をせずに、グループ全体(織田家配下)の運用を行う立場であり、織田信長が本格的に天下人としての支配体制を整えたことを意味している。

首都圏(近畿)のシェアを確立させたので、傘下企業を一本化してグループ企業にして、全国展開に打って出る。そういう話だ。


まあ、そんな織田グループの事はどうでもいい話で、年始の挨拶は織田家の直臣の権利であり、殿の名代でもない陪臣のオレには出席する権利も義務もない。まあ、殿から大殿に、オレからお代わり要求の話できたことは伝えてもらう予定なので、しばらくしたら呼ばれるだろう。




・・・甘かった。

当日によばれた。早いよ。




「饅頭。面を上げよ。」


平伏するオレに、上座の大殿が口を開く。

岐阜にある織田家重臣の佐久間さくま 信盛のぶもり様の館の一室だ。家督を譲って隠居状態という名目で、織田信長は居城岐阜城から引き払っている。とはいえ、実質支配者である為、佐久間様も心得たもの、きちんと畳が引かれて暖も取られている。

そんな、大殿は手に書状を持っている。

あらかじめ殿経由で提出してもらった、お代わり内容の内訳一覧だ。


正直書いていて胃が痛くなった。もともとが、深く考えずにドンブリ勘定で言った「四公六民」だ。これを五公五民というこの時代でも比較的安い年貢になるよう再計算しても、必要数は越前50万石の1割。5万石という計算になる。うん、日野城時代の収入全部くらいかな?六公四民並みにするなら、日野城二つ分だ。

しかも、これは越前を統治し始めた初期の段階なのだから、手間は余計にかかるわけで、さらに必要数は倍率ドン。

あ、あの…初期投資って大事なんですよ。起業一年目が赤字なのは仕方ない事って説明できるわけもないわけです。


「…」


案の定、大殿である織田信長の表情は無表情だ。

一応、莫大な援助物資が必要になることは、第二次加賀侵攻時に伝えているのだ。(見積もりだって出している)第一次侵攻時の撤退という無理な命令を聞いた借りと、蒲生君のとりなしとか、勲功などもろもろを返上しての許してもらった話なのだが、所詮焼け石に水である。


「いいだろう。」

「ハハッ。ありがとうございます。」


数秒の沈黙の後、大殿から裁可が下る。

オレの第一回の寿命を削ってのお代わり要求成功である。第一回でこの難易度。第二回以降どうなるか考えると眩暈がするわ。


「ただし」

「!?」

「敦賀から琵琶湖までの道を整備せよ」

「は?」


たしかに、越前の道の整備の賦役も、大殿には報告してある。だが、さっきも言ったように割く賦役の人員がいない。まあ、来年以降に石高安定させてから取り掛かろう的な目論見がないではないが、まだ先の話だ。

先の話だった。


「安土山に城を建てる。ワシの城だ。」

「…」


コレはたぶん安土城。その場所に、思いっきり心当たりがあった。南近江日野城のすぐ近くにあった安土山。もしかしたらと思っていたが、本当にあそこに城が建つのか。

何を隠そう、商業路設置のための物資一時保管場所に指定したのが、旧観音寺城跡である安土山のふもとである。


「五郎左に普請させる。お前の作った伊勢への道の続きと思え。よいな。」

「ハハッ」


って、承っちゃったけど、コレどうしよう。

あ、胃が痛くなってきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ