49 引越し準備
日野城召し上げおよび越前侵攻。それはオレの新たな修羅場を意味していた。
1、越前侵攻に向けての兵糧準備。
2、日野城明け渡しに関する目録の提出(越前侵攻分を除外したもの)
3、商業路設立の各種進行度合いと、目加田商人との交渉引継ぎ。
どう見ても、一人でできる仕事量ではございません。
前回の荒子城とは元の数が違うので、その作業量が莫大になっている。
おかしい、年貢徴収のデスマーチは圧倒的勝利で終わったはずなのに…
そんな忙しい中、おっさん…じゃなくて、丹羽様がやってきた。
例の商業路事業を引き継ぐためである。日野勢の努力により、最大の難所と呼ばれていた場所の改修は終わり、次の行程に移っていた。
それらの取り纏めを溝口様が行っていたのだが、目加田とのやり取りは日野城前田家に一任されていた為、その引継ぎである。
それをしながら兵糧管理。今回の侵攻は、前田隊の兵に蒲生賦秀君が率いる日野隊を加え、近江の長浜から北上し越前に入る。
その為に、兵糧を同時並行で運びつつ、目加田から輸送コストの安い水運を使って琵琶湖を渡り、そこから陸路で敦賀へ。経費節減経費節減。
その為に、船の準備と人足の準備と、琵琶湖から敦賀までの荷車と人足と…
で、それが終わったらその分の収支を入れた状態で、日野城の備蓄を計算か。ははは、オレ多分越前に従軍しながら在庫整理している計算になるな。
越前で日野の在庫目録を蒲生君に渡すのか。
しかもその間、1万近い兵を越前まで移動させつつ、越前侵攻の兵糧管理を現在進行形でしながらである。
わ~い。パパ頑張っちゃうぞ~…
…カラ元気すら出ない。
そして、もう一つ。
加奈さんどうしよう?
臨月はまだだけど、おなかは大きくなっているし、動かすのは断固反対である。
「おまつ様と、安姉さんと一緒に日野にしばらく残ります。蒲生様との話はついているそうです。」
オレ。単身赴任で戦場(物理)へ行くという、ブラック企業も真っ青な状況になる。
嫌だ。断じて嫌だ。と、駄々をこねたら尻をはたかれた。
母は強し。
まあその後、甘えられたけどね。
「あなた様。無事に帰ってきてくださいね。」
「安心しろ。父無し子になどはしないさ。」
ってか、文官のオレが戦うまで惨敗とか、よほどの事でもなきゃないから。
戻ってみると、勝豊君がハイテンションで書類と戦っていた。
どうした?変な薬にでも手を出したの?
と言ったら、中野勝豊君の家でも、お子さんが出来たそうです。
「しかし、そうなると。君の奥さんも日野城で面倒見てもらわんといかんな。」
何気なくそう言ったとたん、勝豊君の動きが止まった。錆びついた蝶番のように、きしみながらこちらを振り返る。
そんな、すがるような目をしてもダメだからね。
新米パパ(予定)二人で、単身赴任で戦場へ従軍しつつ、在庫管理(残業)と兵糧管理(激務)。
改めて表現すると、死にたくなります。




