48 加賀守
年貢徴収とその後の残業が終わり年を越す。
天正三年二月
殿の上位互換。セレブの蒲生 賦秀君がやって来た。
かつて南近江を支配していた六角が織田に滅ぼされた後、六角配下であった蒲生氏から人質(名目)として岐阜に出ていた賦秀君の帰郷に、地元日野勢大歓喜である。
しかし、なぜ日野に?まあ、地元である日野に配属されるのはわかるけど。殿の配下って事か?せいぜい四天王クラスの殿の下に、魔界の王子様をつけるなんておかしいだろ?殿の上位互換だぞ。しかも織田家の娘婿だよ。どう見たって立場逆じゃん。
なんだろう、殿も進化とかするのかな?
いやいや、確かに最近殿も頑張っているよ。内政でも、街道整備でも、治安維持でも頑張っているよ。オレは評価しているよ。
でも、賦秀君と比べるとねぇ…
評定の間に重臣一同呼び出され、告げられる。
「皆の者。大義である。まず、紹介しよう。この若者が蒲生殿のご子息にして、大殿の娘婿 蒲生賦秀殿じゃ。」
紹介され頭を下げる賦秀君。
来た時と服が違うんだけど、そのきれいな服は自前ですか?自前ですよね。こういうところが、絶対勝てないところだよな。
「蒲生賦秀でございます。この度は、大殿のお言葉をお伝えいたします。」
一体なんだろうか?
「この度、朝廷より前田利家様に、加賀守の官位が与えられました。」
あの、蒲生君。それって朝廷を侮辱していたりしない?だって殿だよ?
「さらに、日野城は召し上げ。蒲生賢秀殿に任されます。前田加賀守様は、これより越前の敦賀にて、越前切り取りを行うようご命令がありました。」
「え、越前でござるか?」
村井様が驚いたように声を上げる。去年の一月。対筒井戦の際、日野城の主力が越前に出兵し、治安維持に努めるよう大殿から命令があった。しかし、日野勢が到着するのに合わせたように越前で一揆が起こり事態は急展開。
混乱の中、何とか越前の織田家家臣を救出したのはいいが、それ以上はどうしようもなく、戻ってきたのだ。
それだけではない、さらに一揆をおこしたナントカって人も、一揆と折り合いが悪く、この間の年明け早々に殺されたそうだ。
どうみても、カオスだろ。
流石の大殿もここまでカオスなご近所さんを放っておく事はせず、この度越前討伐を決めたらしい。
「加賀守様は佐々様と不破様を与力とし、羽柴様、明智様と共に越前に当たります。その後、大殿率いる本隊で加賀まで侵攻する予定です。」
おおっ。
と評定の間が騒がしくなる。
前田家としては、日野城とられて敵地である越前をとれといわれて、無茶ぶりに驚いたが、大殿以下織田家重鎮の出る一大侵攻作戦である。推定兵力2~3万。
負ける要素はない。
そして、広大な越前と加賀を手に入れる事が出来る。
でも、常識的に考えてこれはないわ。本当にそう思うなら、加賀取ってから日野召し上げにすればいいじゃん。
まあ、去年一年は年初に筒井があったけど、それ以降1年以上も商業路設置のみで、戦働きは皆無。そうでなくても、前田家は柴田家や森家に次ぐ脳筋の家なのに、何のんびり内政しているんだよ。って事なのだろう。
褒美やるからお前ら先陣な。
という話である。
…ところで、越前侵攻の兵糧管理誰がするの?
オレ?
またオレ?




