04 領地を見て回る
知っているか?
識字率って、文字の読み書き出来る人と出来ない人の比率なんだぜ。
で、さらに半歩進めてみよう。加減乗除って知っているか?足し算、引き算、掛け算、割り算の四則演算だ。当然、文字の読み書きできない人がこれを知っている割合というのは極めて低い。
なにもできない > 文字の読み書き可能 > 四則演算
まあ、大体こんな感じだ。
何が言いたいか?
「え?納める兵糧ってどうやって決めてるの?」
「庄屋が持ってくる米を数える。」
え?税金って自己申告なの!?
待て、待つんだ三直 豊年。まだ慌てるような時間じゃない。
「ちょっと、領内見回ってきます。」
「おう。気を付けてな。」
仕事に関して、質問したらこの反応である。
ってなわけで、小者を連れて荒子領地を見回る。
夕刻
アカン。
とてつもなくアカン。
しかも致命的なアカンもある。超アカン。
まず、土豪というか庄屋の力が強い。ぶっちゃけ、年貢をどれだけ支払うか決めるのは庄屋である。庄屋が農民から年貢を集めて、それを領主に提出する。
なんで、こんなことになっているのか?
答え「楽だから。」
農民はわざわざ領主のところまで年貢を運ぶ手間が省かれるし、領主も農民一人一人から徴収する手間も省ける。通達も庄屋にするだけでいいし、もし何かあったら、庄屋を罰するだけでいいのだ。
便利でしょう?いや、どう見ても問題だよね。ちょっと整理してみよう。
問題その一。常備兵って言葉を知っているかい?織田の兵って銭を払って雇う雇用兵なわけ。だから、一年中いつでも出動できる。
そんな言葉がある以上、常備兵じゃない兵がいるわけだ。というか、普通はそっちが一般的なんだが、つまるところ農民兵。普通の足軽だな。
織田信長は兵農分離をがんばっているんだが、そうなる前は、兵農一致(造語です)つまり農民兵だったわけよ。農作業が終わって、暇なときに戦争する。まさに世も末な戦国時代だな。
当然、その場合、指揮官っているのは庄屋(の一族)になるわけだ。顔役だもん当然だな。
中には、庄屋でとどまらず、そのまま豪族として主君に仕える人までいる始末。というか、地元出身の武将って、基本的にこれ。
何が言いたいかって、納税者が武装している戦闘経験者ってわけ。武将と農民の差って、MMOでいう基本職と上級職程度の差なんだよ。どっちもフィールドに出てレベルアップしてるという意味では、大差ないわけ。当然、基本職側のほうが圧倒的に数が多い。
上納金を自分で決める武装集団の納税者。
税率上げたら即反乱。なんて普通なわけですよ。下手すりゃ、領主が庄屋に頭下げるケースだって普通にあるわけだ。
なんで、そんなやつが庄屋やっているかって?だって、戦国時代だもん。腕っぷし第一なんだよ。生き残るためには、きっちり税金払う人じゃなくて、戦闘力が高くなきゃいけない時代なの。
だから、庄屋は感覚レベルで石高を申告しているの。そりゃ、年貢測る為の升とかあるよ。規格統一してないけど。
もう一度言うね、計上する規格が統一されていないんだよ。
まあ、実際には取れた米の量から産出しているから間違えじゃないんだけどね。いや、正確に言うとおもいっきり間違っているんだけどね。
税制面から見ても、統治面から見ても「ヤバイヤバイ。マジヤバイ」って話だろ。
ここは、まだ序の口なんだ。
これ以上のヤツをみつけちまったんだよ。
オレ、寺育ちのMさんだから、このギョーカイには結構詳しいのよ。
村一つが一向宗と化している。
一応、説明しておくけど、一向宗って仏教の一派なんだ。
で、戦国時代で一向宗って言ったら何が出てくるかって。
『一向一揆』
これって、日本史の教科書にすら乗るレベル。戦国時代でメジャー大名な上杉謙信とか伊達正宗とか出てこないのにこいつは教科書に載るレベル。
バブル崩壊で「空白の10年」とか言われていたけど、この一向宗の親玉は「信長の天下統一を10年遅らせた」って言われるほどヤバイ。
大殿が第六天魔王とかいわれる80%くらいは、一向宗との敵対泥沼戦争のせいといっても過言ではない。
他に有名なこいつらの例を挙げると、後の徳川家康の領土である三河が一向一揆によって真っ二つになった(つい最近の話です)。比喩表現じゃなくて、部下すら二分する修羅の国状態。後の忠臣とか譜代とか言われている人も、ガッツリこの一向宗で家康に刃向けているのよ。
内部亀裂、土着勢力、一向宗でスリーアウト。チェンジどころか、コールドゲーム成立しているじゃねぇか!弱点さらけ出すシューティングゲームのボスよりヤバイだろ!!
よし、帰って辞表書いて寺に戻ろう。オレ。ここから帰ったらもう一回頭丸めるんだ。