42 つるしあげ
やっちまったーーーーー!!!
なんか、とんでもない事になっちまった。なにが、「それを使う(キリッ)」だよ。何にもないんだぞ。
まあ、やっちまったものは仕方ない。とりあえず、津島に行こう。
津島の商人は、最初から最終形態でお出迎えでした。劇場版のお兄さん状態ですか?
目加田と同じ内容の話をして日野に帰る。
流石に、越前へ行っていた人たちも帰ってきたのだが、なんか疲れ切ってない?
何でも、越前で一揆がおこって、治安維持どころではなく、何とか織田の家臣を救出した所で、戻って良いと言われたらしい。
越前は修羅の国だな。
帰りに目加田の町で、異様なほどの歓待を受けたとの事で、オレは帰還早々休憩もはさまず評定の間に放り出されることになる。
目加田の商人が俺の名前を出したそうだ。
奥村様他重臣一同お怒りモードです。
ごめんなさい。
そりゃそうだ。
治安維持に行くように命じられて、殿の急病でドタバタしながら越前行って、行ったら行ったで一揆と反乱でグダグダになって(それはオレのせいじゃないぞ)、帰ってきたら筒井が攻め込んできて北畠の援軍で撃退して伊賀まで攻め上って、大殿から誉められた。ここまではいい。
日野から商業路を伸ばす。これって、元々重臣と「やれたらいいですね」レベルの話をしていただけなのよ。それが、越前から帰ってきたら留守番と殿(仮病)が勝手にスタートさせちゃっているんだから怒りもするわ。
でもごめんなさい。こんなスタート切るなんて、オレにも想像していなかったんです。
平謝りするオレと、怒る重臣。オレをかばおうと口を挟み、飛び火する殿。
殿、スタートさせたの殿と関係ないんだから、口を出さないで…いや、かばってくれたのはうれしいんですけどね。
結果、二人でごめんなさい評定です。
そんな感じで一通り、お説教も終わり、さて次に商業路設立の話になる。
「…ふむ。妙案ですな。」
オレの説明を聞いて、奥村様がうなずく。何人かの重臣は、その意味が分かっていないようだ。
「目加田と津島、双方が談合しないように一定基準を設け、それ以上の物が提供されればそれを使う。次に、難所から工事する事で、費用の軽減を行う。完成は十年以上先の話になるだろうが、商業路として利用できるようにするだけなら数年ですむ。」
後決めておくことは、各現場担当者くらいなものだ。
おい、なんでこっちを見るんだよ。同時進行で各難所の作業するんだから、現場担当者が一人じゃだめでしょ。これどう見ても家臣団一同でかかる仕事だよ。
商業路開発なんてやった事ないって、オレだって未経験の仕事だよ。
現場作業レベルの技術者を雇う必要があるかもしれない。責任者を前田家家臣で受け持つ形にすれば…だから、オレに視線を集めるな。前田家の領土の話なんだよ。
決める事が増えちまったよ。いっそ、その辺の担当者の紹介を目加田と津島に頼むか。でも、そうすると両商人のヒモ付きになるし、一回担当者と面談して…
あれぇ?なんでオレの仕事が増えていく流れになっているんだ?
オレ一人ではしないぞ。というかできないからね。いいですね。家臣の人達にも仕事ふりますからね。
だから、重臣一同そこで視線をそらすなよ!?
「越前から帰還早々、お前たちには悪いが、筒井もおとなしくなり近江も平和になった。大殿の天下布武の為に、この日野を盛り立てるのは今しかない。お前たちには苦労を掛けるがよろしく頼むぞ。」
鶴の一声。殿の宣言により、家臣一同が頭を下げる。
おい、そこできれいにまとめるな。せめて、言質を取ってくれ殿。
この話はここまでと、地図と配置を見ていた蒲生さんが、声を上げる。(おい!)
「…日野はよろしゅうございますが、甲賀は?」
一番の難所である。そもそも、日野の家臣が甲賀の里で差配をする権利はない。大殿から商業路の差配を任されているが、あくまで事前連絡と調整があっての話だ。勝手に使えば立派な越権行為である。
「そこは、“実”と“利”で話を進めようかと。」
「“実”は…北畠様ですな。」
「はい。」
「“利”は?」
「銭ですな。」