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34 捕り物対決

1ヶ月ほどたち、オレの作戦は想定以上の利益を与えてくれた。


慶次郎のチョロマカシ行為は、定期的に行われている。

そのつど、部下の勝豊君がサスマタ片手に飛び出していくのだが、残念ながら勝豊君の勝率は高くない。3~5回に1回勝てる程度の勝率だ。

イニシアティブは常に向こうにある上、強硬手段に出られないのがネックとなっている。勝豊君も、蔵の近くに仮設番所などを設置して対抗しているが、そもそも、日野城は篭城を想定し、兵糧を分散して保管している。

つまり、慶次郎側はどこを狙うか決められるのだ。しかも、現行犯逮捕以外だめなので、慶次郎の偵察をとどめる権限を持ち合わせていない。

殿の甥っ子という権力をフルに発揮しての悪巧みである。

堀のない山城である点も、慶次郎に有利だ。逃走経路の幅が増える。城は外からの侵入には最大限の効果を発揮するが、中から逃げるものへの備えは、あまり想定されていない。

そのため、勝豊君には事後申請となるが、周囲の足軽の臨時使用が認められている。無論殺傷は不可とした上でだ。


ちなみに、物資を捨てて逃げた場合、引き分けとなる。


さて、ここまできて私のとった策は、簡単である。

まず、事件が始まると、有志により「ほ~い、ほ~い」と声が上がる。

そして、その瞬間から始まる。


「慶次郎Vs勝豊 捕り物勝負」


◎ 前田 慶次郎

●中野 勝豊


勝率は、勝豊君側の使用した足軽の数で変動する。開始は未定のため、勝豊君がどれだけ足軽を集めて、迅速に慶次郎を捕まえられるかが勝負である。


最初は選別された重臣達だけのはずが、あれよあれよという間に、足軽連中の娯楽にまでひろがってしまった。(なお、捕り物に参加した足軽は、賭博不参加となるルールである。)

今では、捕り物勝負の開始を肌で感じとる猛者まで現れているらしい。


つまり、胴元であるオレウハウハ。

捕物に参加した勝豊君&足軽の食事に一品or差し入れのお酒をつけても、十分な利益が出る。いや、もう笑いが止まらないね。






「貴方達、なにやっているんですか?」


バ・レ・た!!


オレと殿は、奥村様の前で正座している。


「まて、奥村。これはトシに言われて、仕方なく黙認しただけで。」

「ちょっと、殿。あなたノリノリだったじゃないですか!?」

「知らん。わしは知らん。」

「嘘だ。殿がこの案を出して、私は仕方なく取り仕切っただけだ。」

「トシ!?貴様!!」


「私はすべて調べてからここに来ています。」

「「申し訳ありませんでした!!」」


こうして、二人そろって、お説教を受ける羽目になった。


「で、何の目的があったわけです?」

「は?」

「とぼけなくてもいいです。すべて調べてあるといったでしょう。」


あ、そこまで調べられていたわけですね。

実際、今回の顛末は、オレと殿の共犯による作戦である。


なんて事はない。慶次郎が盗んだ物資をどうしているか調べた結果である。

前にも話したが、日野の生活は豊かではない。当然、生活にあぶれるものが出てくる。孤児、流民、戦傷者。慶次郎はそんな彼らに物資を持って行き、あるいは換金して分け与える。又ある時は、虐待する乱暴者を懲らしめ、食い物にしようとする悪徳商人を叩きのめす。そんな感じで、義賊とか正義の味方的な行動をしていたのである。


もちろん、そんなものは焼け石に水ではあるが、元来の目立つ風貌もあり、日野の貧民や庶民の間では、慶次郎は人気者であった。

残念なことに、日野城主としてこの問題を解決するだけの余力はなく、どうせなら、このまま人気者にしちゃおうぜ。という話の元、今回の仕儀となったのだ。


ちなみに、慶次郎のこの行動は城内でも有名で、捕物賭博参加者常連には、この物資の行き先を知っているものも少なくない。

その為、城内でも慶次郎の手伝いを喜んでするものがおり、その行いを生暖かい目で見ているのだ。


ククククク。雨の中、子猫を救う不良。フラグは立つかもしれないが、しかし不良として、その評判ははたしてどうかな?

貴様の黒歴史の認知度を上げるの策。これぞ、我が復讐。

貴様が己の行いを黒歴史と認識した時には、すでにその行いは周知事実なのだ。将来布団の中で悶絶するがよい!


「まあ、これで身持ちを崩す者が出ないようして下さい。」

「奥村。そこは心配いらん。トシにその点は、十分注意させている。」

「私の調べでは、一番負け額が多いのは、恐れながら殿となっております。」

「え?トシ。まことか?」

「残念ながら、事実です。」

「!?」


殿は穴狙いが多い上、ここぞと言う時に、本命に賭けて外れるからね。しかも、一回の掛け金の額も基本多い。


「とはいえ、娯楽の提供と、民の慰撫という意味で一定の役割を負っています。非公式にですが、このままにしておきましょう。」

「さすが義兄上。話がわかる。」

「きちんと収支を記録して報告してください。」

「oh…」


家に帰ったら、義兄上経由で加奈さんにばれていて、再びお説教されることになった。

謀ったな義兄上!


ちなみに、おまつ様にもバレていたらしい。

合掌。


ネタ回は以上です。

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