23 見合い
さて、最初に言っておく。おれは、ノーマルだ。
戦国時代では男と男のお付き合いは、ジャンルの一つとして認められていたらしいが、オレは認めない。ハゲで色白で、華奢な体で、寺出身だが、そういう趣味は一切ない。
そんなオレが見合いをする事になった。
で、当日。
オレの目の前には、髭面の男が座っている。
見合いの席である。
もう一度言うが、オレはノーマルである。
「奥村助右衛門永福と申す。」
「はい?」
「?」
「…失礼ですが。見合いとの事ですが。」
「左様。」
…そうか、そういう事か。
よし、殿を殺そう。
イジメにもほどがある。これは切りかかっても許されるレベルだ。
三直 豊利20歳。彼女いない歴=年齢。世間的には立派な成年男子だけど、青春時代が寺育ちだからしかたないんだよ。それを、ここまでオチョクっていいはずがない。「女いないんだから男でもいいよね?」って、いいわけあるかーーー!!
よし、覚悟はいいな!オレはできている!!
隣でニコニコしている殿に殺意の波動を向ける。さすがに太刀は持っていないが脇差なら持っているのだ。
「それがしの妹の加奈を嫁にとの事ですが…三直殿?」
いやまて、仮にも『槍の又左』と呼ばれる男。不意打ちとはカナ。加奈?
「は、はい?」
「こら!トシ。話を聞かんか。おぬしの話だぞ。」
お・こ・ら・れ・た。超理不尽。
「いや、し、失礼。三直 豊利です。」
「う、うむ。」
まあ、聞いて分かったが、現代の見合いと違って昔の見合いって、当人ではなく家同士の話し合いで完了するらしい。オレは家なしの平民なので、殿が後見人って事でつき、相手はお兄さんの永福さんがやってきた。そういう話だ。あれ?オレいらなくね?
というか、話はほとんど決まっており、そのままとんとん拍子で、年内には結婚する事になった。これが年貢の納め時という奴か。
あ、年貢で思い出した。年貢の徴収時期は外してくださいね。(現実逃避)
「ということは、奥村家になるのですか?」
「いいや、お前は嫁を迎える事になる。三直家だ。大殿にお願いして、許しはもらってある。まあ、奥村と縁続きじゃ。」
「お願いして?」
「お前な。今回のお前の働きは並々ならぬものだぞ。大殿からの褒美を蹴ったとはいえ、オレはお前の働きを評価する。つまり、これは俺からの褒美だな。」
「…」
呆然と見るオレに、殿も疑問に思ったようだ。
「なんだ?」
「いや、殿って考える事出来たんですね。」
な・ぐ・ら・れ・た。
御免なさい。でもってありがとう。
そうか、新しく一家を持つのか。奥村家と縁続きの三直家。
ん?奥村?どっかで聞いたな。
ああ!あのフリーダム退職した荒子城城代の家じゃないか!?
と、確認してみたら。当のご本人でした。なんでも、浪人の身でいたけど、また戻ってきたんだって。
流石戦国、フリーダムすぎる。フリーダム再就職ってか!?
殿もそれをあっさり受けちゃうんだ。ああ、利久派との確執をなくすためか。
なるほど。で、オレの嫁取りになるのか。利久派の奥村からは、利家派のオレと縁続きになる事で再就職。利家派は、利久派に恩を売って、有能武将を再雇用。WIN-WINの関係ですね。
オレはダシかい。