17 長島一向一揆
まず、一向一揆の一番の強みは、熱狂的信者の死にもの狂いと、それに同調する大多数の農民だ。というかそれしかない。
そして、それを支えるものは信仰である。死んでもいいやと思えば、それが死に物狂い兵を作り上げる。
熱狂とは力である。だが、同時に冷水を賭ければ一気に沈下するのも熱狂であった。
ブームとそれが廃れる話だな。そして、それを加速させるの有効な手段とは、
スキャンダル。
さすがに、神様のスキャンダルは見つけられないが、坊主はしょせん人である。奴らの腹黒さは身に染みている。弱みはいくつもある。
なんで、誰もそれをしないのか?
神社仏閣は不可侵。それにあるだろう。織田信長がオレに質問したように、その不可侵を犯すという事は、狂気の沙汰に等しい。
ああ、だからか。オレはそれを指摘せず、理と論でその正当性を立証した。その価値観が、信長の気を引いて、今回の問題につながるのか。
つぶさに分析し、それを攻める。攻める先は人の心か。
なるほど、『孫子』でいう心を攻めるってやつだ。
「光悦和尚」
「ん?」
オレの部屋で悠々自適な客人待遇でまったりしている元光琳和尚に声をかける。すでに、彼の入る寺はできているが、新しい兵法書の教師として、よく俺の元に来ているのだ。
というか、たぶん備蓄がないから食料をタカっているだけだと思われる。
「名前借りていいですかね?」
概要を書いた手紙を岐阜に送る。
数日後、馬に乗った殿に、なかば拉致られる形で岐阜へ登城。そのまま、大殿と軽い認識合わせをしたのち、オレの作戦は許可された。
「して、期限は?」
「半年といったところでしょうか。」
「よし、やれ。委細は任せる。連絡も事後でよい。」
「はっ。しかし、費用がかかりますが…」
「津島の商人から出させよ。連絡はしておく。」
うわ、さすが信長。資金の元を探られた時の予防線を張りつつ、こっちの逃げ道ふさいできやがった。この借財って失敗したらオレが被ることになるのか?借金背負いたくなければ成功させろか?
オレの表情を見て信長はにやりと笑う。
「励めよ。饅頭。」
え?何その名前?オレのコンプレックスを直撃しているよね?
今まで一生懸命その話題を避けに避けてきたが、オレが僧職に一生をささげようと決心した理由の一つでもある。
つまり、
20歳を前に、オレの頭は風を感じる事ができるという事だ。
次回から、暗躍シーンになります。