12 部下は育てるもの
オッス。おら三直 豊利。
初めて直属の部下ができたぞ。
「三直さん。三直さん。倉出し終わりましたよ。」
こいつ。勝蔵と言うんだけどオレの直属の部下である。なんと、加算と減算ができるのだ。字も書ける。簡単な字だけだけど。現在めきめきと実力をつけている。
どこで、こんな優秀な人を見つけたかって?
例の一向衆の村だよ。あそこで、年貢納入の代官していた時に、コイツに気が付いたわけ。こいつ。例の庄屋の長男で、将来の後継ぎとされていた為、文字の読み書きとか計算(の基礎)を学んでいたのよね。
で、元庄屋に言って(人質とか匂わせつつ)召し抱えたわけよ。で、年末進行と年始のブッキングで、実地訓練させて勉強させたのだ。
ははは。オレは頑張った。
一緒について回って、おしえつつ年貢の納入&物資管理。
とりあえず、平常時の在庫管理なら何とかなる。まだ、突発的なトラブルには弱いけど、そこはそれ。経験だ。
って、言うほど俺も経験あるわけじゃないんだけどね。
でもって、第一次長島侵攻。失敗。
いやー、さんざんでしたね。
他人事のようだけど、少しは被害出ているのよ?
あれだけ苦労して提出した兵糧はアボン。まあ、勝ったからって返ってくるわけじゃないからいいんだけどね。
まあ、これで平常運航に変わるかねぇ。
「転記の方はどうですか?」
「進んでいます。あとで添削をお願いします。」
「うむ。」
ちなみに、商人にコメを売った収益で、紙と墨を購入し、木の板に書いていた記録を紙に転写している。保管場所の圧縮と、勝蔵君他、数名雇った文官候補生のスキルアップの為に、頑張ってほしい。
マジで頑張ってほしい。
さて、疑問に思ったことはないだろうか?
つまり、俺の立場というやつだ。
『荒子城奉行兼お茶汲み係』という、四次元殺法もビックリな社会的地位を持つオレだが、荒子城の物資管理を一手に(唯一)引き受ける立場にある。
つまり、年貢の納入や売却。資材の補充。提出物資の手配などだ。
その中で、権限のないものというものもある。
たとえば、
『人を雇ったり、賃金を払う権利』
つまり人事権である。
お茶汲み係に人事権は無用である。それ以前に、殿から手当てをもらっているだけの基本給ナシの職能給のみのオレに、誰かに給料を払う余裕はない。
現在、彼らに支払われる給料は、オレの才覚で捻出される。
つまり、コメを売った収益だ。
人事権ないのに、勝手に人を雇って収益から給料出しているこれって、横領って言われますよね。
どっかで、予防線張っておかないとな…