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122 それはまぎれもなく奴さ

天正八年六月

前田家で一つの慶事があった。

前田家嫡男前田利長様に正式に織田信長四女 永姫様嫁入り。

1年待っての婚姻である。


1年しか待っていないので、永姫様は六歳(数え年なので五歳)。


事案発生である。

まあ、その理由の3割くらいはオレの責任ともいえる。

そもそも、両名の婚約は加賀を手に入れた事により前田家の力が増えたからだ。

本当なら、婚約期間をおいて時間をかける予定だったが、能登を順調に攻略し、越中攻めも始まっている状況である。つまり、前田家の勢力は急速に増えている状況だ。

両家の縁を悠長に待っている余裕がなくなった事も関係するだろう。


そんなわけで、利長様からフレンドリーかつプライベートな言葉使いの手紙が来たわけだが、個人的なモノなので握りつぶしておく。


あいにくと、前田家の親族でもなく、身分も高くないオレは加賀の大名となった前田家嫡男の婚姻に参加できる身分ではない。ましてや、織田家の姫を娶る超重要な一大イベントだ。もちろん、個人的に祝う事は忘れないが、それはまた後でだ。




なんせ、オレは書類仕事に追われているからだ。

なんでだ?


加賀の内政において、オレの仕事は劇的に軽減された。もう、北陸攻めを全力サポートできるほど加賀の内政に関して楽になった。


“加賀は”な。

じゃあ能登は?


能登を統治する佐々様は、来たるべき越中攻めの為に、軍の再編成を行っている。能登の重鎮である長様は、能登の堅城七尾城の修復中だ。双方を急ピッチで進めさせている以上、二人に他の作業をする余裕はない。


そんな能登を支援するために越前に加賀に、さらに織田家からも支援が来ている。

織田家からの支援についての交渉役『三直豊利』

理由『越前の時にやったから』

…アレ?

それを能登まで輸送して、分配する担当者『三直豊利』

理由『越前の時にやったから』

…アレェ?


そして、侵略した後のお約束。現在の在庫確認である。

越前侵攻後に、加賀侵攻後と両国で奔走したのはオレだ。当然その奔走した内容というのは、攻略した国の備蓄の在庫を内政管理手順に反映する事にある。

元々、越前で与力をしていた佐々様とその家臣たちは、越前の方法に慣れている。つまり、オレが荒子城時代から作り上げ、日野越前加賀と改善していった管理手順を使っている。

当然、それを統括する手腕に関して、オレには経験があるわけだ。

さらに、越前で溝口様から教えてもらった一国の統治システムを能登に落とし込む作業も、実作業は(当時)副官の中野勝豊君だったが、統括と報告でオレは知っている。


なんだこの状況!?

誰だ、こんなお膳立てした奴は!?


…オレだ。


佐々様に早急に部隊編成するように計画立てたのも、長様を七尾城の改修に全振りさせたのも、佐々様の部下がオレの内政手順を修得したのも、そもそも能登に越前加賀をモデルケースにして落とし込みするように手筈整えたのも、全部オレ。

全部オレ…




「三直様。追加分です」


内政団の一人が、帳面を差し出す。

「ナニコレ?」とは言わない。分かっているのだ。ただ、目を背けていただけだ。


ハイ。どうみても、越中の在庫確認です。

能登は佐々様と長様に渡された。それはいい。だが、今回の作戦は能登侵攻ではなく北陸侵攻である。目的として手に入る領土は能登だけではない。

同時侵攻した越中。全土とは言わないが、睨み合っている越中中央部まで織田家は侵攻している。当然攻め込んだのは前田家主力で、攻め取った領地を支配しているのも前田家だ。

そして、前田家内政担当者は三直豊利。

つまりオレである。

オレ…

オレ……

オレ………


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