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121 石動山対応

石動山への挑発は、適宜行われており準備は順調だ。

当然、そうなれば次に必要なのは石動山が動いた後についてだ。

そんなわけで、前田家重鎮一同での話し合いとなる。


「三百六十坊、衆徒三千。一筋縄ではいきませんぞ」

「さすがは、由緒ある霊山だな」

「…」

「何だトシ。不思議そうな顔をして?」

「なぜ彼らは、自分達の兵力を公言しているんですかね?」


兵力3000。もちろん、厳密にはそれだけではない。だが、一向一揆と違い霊山であり僧侶の修行場だ。民衆に密着した扇動者ではない。誤差はあるだろうが、北陸で不当に強奪(冤罪に非ず)をつづけている石動山に賛同する者は多くないはずだ。

結論として、3000の兵を持つ集団と見ればよいだけだ。


「今回の石動山の蜂起には、二つの勢力が加勢します。一つは上杉家。もう一つが能登の反織田勢力です。そして、石動山主導の蜂起である以上、これらの勢力が石動山の兵力を超えることはありません」


なにせ、3000以上の兵力がくれば、石動山は発言力を失う。それは蜂起が成功したときの石動山の名声にも直結する。

そのために、能登の反織田勢力ではなく、石動山を扇動し挑発したのだ。発起人は石動山。上杉家は支援者、能登勢力は賛同者だ。音頭を取るのは石動山でなければならない。


「上杉からは多くて2000。能登勢力に関しても3000を越える事はありません。つまり、敵の数は最大で8000ほど」

「越中から引き返す兵は、能登と越前の軍を合わせて12000。」

「さらに、越前の金森様に、蜂屋様。府中の不破様が出れば十分でしょう」


これまでの能登と越中での働きは、越前加賀の前田家だけでの対応だ。織田家与力は佐々様と長様しか参加していない。織田家による甲斐信濃侵攻がある為、予備戦力として温存している。だが、能登佐々軍の越中侵攻はこちらの望むタイミングで始める事が出来る。つまり、甲斐武田が終わった後まで待てば、予備戦力はそのまま前田家の後詰めになる。


「とはいえ、8000もの敵がこちらの望みどおりに動くか?そのまま越中軍の背後を突いたら?あるいは、七尾城以外を攻めたら?」


殿が眉間に皺を寄せて聞いてくる。可能性としては皆無ではないが、状況的に低いと言える。


「それは難しいでしょう。一つは、扇動する上杉軍にあります。能登で兵は集まっても、戦をするための物資がありません。大軍であるならなおのこと、越後上杉家からの援助が不可欠になります」


そうなれば、上杉軍の意向に従わなければならなくなる。そして、援軍が越中に到着する前に蜂起されては、能登軍が石動山を鎮圧してから越中にくる為、上杉側の手が尽きる。蜂起は、越中でこれから攻撃を仕掛けようという状況、もしくは増山城を放棄し後退する際に、織田軍の追撃を止める為に使うのが最も効果的だ。

上杉軍にとっては、石動山が蜂起する事が目的で、石堂山が勝とうと負けようと越中での行動に変更はない。


「さらに、石動山の蜂起であるが故に、その目的は能登奪還です。本拠地石動山を離れて越中まで進軍する事を最大勢力の石動山が認めはしないでしょう」


そして、石動山の蜂起が能登奪還である以上、その狙いが七尾城になる事も確定している。

その理由は二つ。居城七尾城と留守役となる長連龍様だ。

石動山にある軍勢は一枚岩ではなく、あくまで同じ目的の為に行動する連合軍だ。当然各勢力の意向によって意思決定はされる。

能登の反織田勢力である温井や三宅にとっては、織田派の長連龍は、憎んでも憎み足りない相手である。そんな相手が、目の前に少数で留守番をしているなら当然動くだろう。

織田家としても、長様は能登統治の重要人物である。失えば、今度の能登統治が大きく停滞するだろう。それは、反織田派にだって察しがつく。

石動山にしてもそうだ。反織田勢力として蜂起した以上、織田家に痛打を与える必要がある。そして、目の前にあるのが、能登における織田家の象徴である居城七尾城。

そもそも、石動山が軍事拠点となったのは、上杉謙信が能登七尾城を攻める為だ。

上杉家にしてみれば、蜂起させるのが目的であって、七尾城を攻める事を反対する理由はない。

お膳立ては整っている。


オレの説明に納得したのか、殿はふむふむとうなずく。


「あとは、能登七尾城を守り切れるかという事か」

「ええ、そこは最大限支援する予定です」

「トシ。何か策があるのか?」

「ええ、部下を使います」

「部下を?」

「ええ、せいぜいコキ使ってやりますよ」


オレは同席している人間に目を細めて笑顔を向ける。

ね。たまたま能登七尾城で留守番する事になっている非実在家臣さん。


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