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113 侵攻準備

「三直殿」


加賀前田家の居城となった旧尾山御坊にして、新生金沢城(仮名)の廊下で呼び止められる。

振り返ると、長宗顒様がこちらに近づいてくる。


「これは長様。此度の能登の件よろしくお願いいたします」

「もちろんだ。尽力感謝する」


と頭を下げるが、その顔に笑みはない。


「三直殿。お聞きしたい事は、遊佐以外の畠山家の旧臣についてです」


ああ、そういえば手を打ちます。と言っただけで終わっていたな。


「確か温井、三宅でしたか」

「はい。彼らはどうするのですか?」

「もちろん討ちます。約束ですからね」

「どのように」


身を乗り出すように聞いてくる。

押しとどめるように両手を前に出して首を横に振る。


「今はまだお話できません。長様が遊佐を討てて始めて可能になる方法です。今はまずそれに全力を尽くしてください」

「しかし…」

「どのような形であれ、長様が事を成就していただければ、彼らの命運は尽きます。いいですか、事を成し遂げて長様が生き延びていることが重要なのです。その時に、お話します。決して失望はさせません」


ぶっちゃけ、このまま本懐を遂げるに当たり「もはや思い残すことはない」とか死亡フラグ満載で相打ちとかやめてほしい。

悪いが人情的な話ではなく、あんたは今後の能登統治に関する重要な問題なんだ。旧畠山家の重鎮で今回の取り込みに中立派を抱き込む以上、能登を手に入れれば彼らは長様を中心に織田派閥となる。能登統治のキーマンといえるだろう。

能登が佐々様に渡されるとしても、実質的に能登を取り仕切るのは長様。少なくとも、長い時間統治に時間を割けない以上、元支配者の名声と影響力を利用するしかない。

そういう意味で、長様の要求に満点で答えるには、大軍で攻めるだけではだめなのだ。能登侵攻が大軍になれば相手は逃げて終了だ。上杉家に逃げ込み、上杉家降伏の時に越後からも逃げられてそれまで。

討ち取るとしても、国と国との戦である以上、長様の軍が討ち取れる可能性は低い。そうでなくても能登の大将首だ。長様一人が手柄をすべて手に入れられるわけではない。

そういう意味では、3人の仇の誰かを長様が討ち取って及第点。

その為に、わざわざ長様に潜入作戦をしてもらうのだ。

そして、それを実行させた上で満点を狙う。

その為に残りの仇は、やはり上杉家に逃げ込んでもらわねばならないのだ。


能登の上杉派に関する問題は、織田家との戦力差で、ほとんど解決したようなものだ。別に新しく何かをする必要もない。今ある手札だけで十分だ。


長様に一礼して離れるとオレの仕事場に向かう。




能登や越中侵攻が始まったとしても、オレがする事は何もない。それよりも、加賀の内政である。

今回の作戦は、越前とも連携を取る必要のある大規模作戦である。

最悪、越中で上杉軍と相対した際、上杉軍が体制を整えて押し寄せれば、作戦の根幹である越中の前田軍が押し戻される可能性がある。

能登だってそうだ。経験豊富な武将である佐々様だが、万が一失敗すれば、越中侵攻軍は能登と越後から挟み撃ちだ。

しかし、事前に軍勢を集めれば、その動きを越後や能登に察知されてしまう。


まあ、その為に今までの管理体制が役に立つんだがな。

要するに、日野で筒井戦をしたのと同じだ。あの時は物資を隔離したのだが、今回は物資を代理利用する。

つまり、年貢徴収で集まった加賀南部と越前北部の米を確保し、越前からの援軍は、兵糧を持たずに加賀へ。その援軍の兵糧を確保した米で賄う。

兵と米の集積の時間差を省略する。

援軍が合流した後で、消費した兵糧を補填するための補給部隊が到着する。

越前兵と越前補給物資を別行動させて、兵には現地の兵糧を消費させて、後から越前補給物資で補填する。

これで、越前の援軍の進軍速度を格段にあげられるはずだ。

少なくとも、内乱が終わったばかりで1年とたっていない上杉軍とは、決定的な差が出せる。


問題があるとすれば、目の前に山と詰まれた書類。

ああ、泣きたくなってきたわ。

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