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110 加賀統治

加賀に対する問題を解決させる。


まず、遊び終わった後の子供部屋のようになっている加賀の物資からだ。

2か月にわたり集めた情報を持ち寄り、いったん集計する。その上で、人海戦術で物資をまとめて再配分するのだ。

散らかった部屋を片付けるのと同じだ。

散らばったものをすべて一か所に集めて、それを分類分けをして、それぞれに対応する。

問題は、いったんまとめるのが現物ではなく、集計した書類って所だ。つまり、物資の再配分が決まったら、現物をそれに合わせた場所に集積する必要があるわけだ。


その辺は、年貢徴収後の国内賦役で賄う予定だ。

年貢徴収後にこの難作業。早くも年末の地獄が見えたな。今のうちにスケジュールと人員配分の予定表を作成しよう。

一応、年貢徴収後と言うのには意味がある。

つまり、今まで『百姓の持ちたる国』であった加賀なので、各場所に点在している物資を『加賀の物資』ではなく『オレ達の物資』と認識している点だ。

これを現段階で強制的に持って行こうとすれば、絶対に軋轢を生む。こちらとしては、正当な管理だが、彼ら自身が強奪ととらえれば、まっているのは不満爆発からの加賀一揆再勃発だ。

だが、年貢徴収が終われば話は(少し)変わる。

四公六民の安い税率だ。農民一人一人の手に残る米の量が増える。そうなれば、前田家が持って行く物資に関する執着も少しは薄れるわけだ。


「これだけ安い年貢だから、これらの物資はこっちで管理します。許してくれるなら来年もこの年貢です」


と言えば、物資を持って行くのは今回だけで、恩恵は来年以降もそのままという認識にすり替えられる。今、無理に反発するリスクと、目の前にある米と来年も同じだけの米とを天秤にかけさせる。




そして、その上で残った米を奪う。

別に強奪するって意味じゃないぞ。

まず、昨年から始まった越前の生産物の輸出先を、加賀をメインに切り替える。これも、別に越前の商人に脅しをかけるわけではない。

越前の港と加賀の港の使用料を免除もしくは減額する事で、加賀への輸出を緩和させるのだ。越前も加賀も同じ前田家の領土。つまり同じ領土。という大義名分がある。

そうでなくても、始まったばかりの越前国内二次生産である。交易のリスクが未知数である以上、経費の削減は失敗時の損害の軽減につながる事を商人達だってすぐに理解するだろう。


そして、加賀の民の“欲”を刺激した所で条件を付ける。

越前生産物は『銭』による売買に限定させる。

要するに『通貨=米』による売買からの脱却。

こうする事で、手元に残った大量の米を銭に変える必要が出てくるのだ。当然加賀の農民だって馬鹿じゃない。自分たちの分を確保した上で、換金率の高い米を売却し、銭にするだろう。

自分達が食べる分を残している以上、残った米は最小限になる。

皆の物なら、手を付けようとはしないだろうが、自分の分なら自分の管轄だ。どう使おうと非難される事はない。

そして、彼らが共同で集めていた備蓄という奴は、年貢徴収後に前田家の管理に移行している。


そして、最後に一揆対策として、武具の買い取り額を増加させる。

加賀一向一揆という以上、農民一人一人が武装している。驚くべきことに、女や老人までが武器を持っているのだ。

それを、高価買取という形で提供させる。銭でのみの輸入品購入において、米よりも利率を上げるように、買い取り額の補助をする。

限定的な刀狩だな。

まあ、おためごかしにすぎないんだけどな。

なにせ、戦乱の世だ。戦争なんて、そこらでやっている。当然、兵が戦えば死人が出る。そんな兵の死体から武装を剥ぎ取れば、地元民は簡単に武装できるのだ。


豊臣秀吉の時代に刀狩ってあったけど、あれって戦国時代が終わって戦争がなくなったから出来た事でもあるんだと認識できた。


まあ、そんなわけで、それをしたからと言って加賀の農民から戦闘力を奪えるわけではない。ただ、これは今すぐ効果のあるようなものではなく、長期的な物だ。

戦争において、武具は消耗品だ。銭を求める為に余分な武具を売り払えば、有事の際に交換するべき予備の武具を失う。戦場で新しく剥ぎ取ればよいと思っているのは加賀の民。

すでに、加賀の戦争する事をなくそうとしているオレ達からすれば、取らぬタヌキの~である。

どっちの皮算用になるかはまだ不明だ。


そして、どちらにしろ、加賀で武具の値段が高騰すれば、戦争のない加賀で武装しようという輩が得られる武器が減る。他国からの武具の輸送なんて、目立つ真似をすればどうなるかは言わずもがな、加賀で武器の買い取りをする商人は厳選された商人だ。

当然、厳選するのは加賀の支配者である前田家である。


ちなみに、前回の反省を踏まえて、価格高騰を避けるために、銭を用意した。もちろん、その銭は織田家から出してもらうわけではない。

加賀一向宗が貯めに貯めた財貨を使う。面倒な寺社は一乗谷に行くし、荷物は最小限に減らさないとだめだよね。

その決定権があるのは、加賀の寺社を移送する責任者であり、一乗谷の管理者でもある加賀前田家家臣のMさん(匿名希望)なわけだ。


まあ、こうして米と武器を奪う事で、加賀の一揆を抑止しようという話である。




さて、改めて言っておこう。先の前田家の加賀攻めでは兵の損失はほとんどなかった。失ったものは消費された物資のみである。

そして、加賀で米と武器が手に入ったという事は、北陸を攻める準備が出来ましたという事だ。


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