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106 加賀侵攻~その2

前線から遠く離れた手取川で、オレは馴染みのない人と行動を共にしている。


「しかし、長様。よろしいのですか?」


手取川の対岸で、物資をまとめながら、一緒に布陣するちょう 宗顒そうぎょう様に声をかける。

敵対国である加賀一向一揆との国境。それも川を超える難所であり、越前からの物資をいったん対岸に集めて、それを加賀侵攻軍に提供している。降雪による悪路などの影響もあり、船による輸送も同時にやっているのだが、前田軍と織田軍で2万を超える軍勢の補給だ。陸路も使わざるを得ない。

ちなみに、海路の方は中野 勝豊君に任せている。


今回の加賀侵攻に関しては「圧倒的ではないか我が軍は!」状態ではあるが、一応敵の領土である。進軍当初の鈴木出羽守の残党の警戒も必要だし、物資を守る兵も必要だ。さすがに、小臣のオレはそんな大兵力を持っていない。

そんな中、輸送部隊の防備に織田家与力の長様が手を上げてくれたのだ。

はっきり言って、手柄も何もない貧乏くじである。一揆のゲリラ戦を警戒する面倒な危険すらあるからだ。

あの~、前線に出ないでいいのですか?手柄立てられないですよ?


「それがしの目的は加賀の先でありますゆえ。心配は無用にござる」


との事らしい。

長様は、元々能登畠山家の家臣だ。去年の上杉侵攻の際、織田家に救援を求めてきた人間である。

うん。そういえば、手取川の戦いの時にもいたね。

能登畠山家の居城七尾城が落城した際、援軍要請に出た宗顒様以外、一族は親兄弟女子供に至るまで殺されている。つまり、長一族最後の一人だ。

そのまま織田家に身を寄せていたのだが、今回の戦いに参加している。

質実剛健。無愛想とも寡黙とも取れるが、やるべき仕事はキッチリしている。

どっちかと言うと、オレの方がおまけだよな。




「御願いがございます」


と、突然、長様が土下座してきた。

なに!?何の話!!?


「ちょ、ちょ!?」

「なにとぞ、それがしに鳳雛様の知恵をお貸し願いたい!」


声がでかい上に、身分の差を考えてよ。あんた織田家の直臣。オレは織田家では陪臣の上に、少領しか持たないナンチャッテ武家だよ。

周囲からの注目度が上がりまくりじゃないか!?


「いやいやいや!ちょっと、頭を上げてください。な、なにを言っているんですか?」

「いえ、手取川での深慮遠謀。それがしも末席にて見ておりました。上杉不識庵(謙信)の策を読み、上杉軍を退ける神算鬼謀。なにとぞ、それがしにお貸しくだされ!」


いや、実際負けたんだよ。一応、織田家として負けてないアピールに「上杉家を追い帰した」とか言ったけど、そんなの信じる人はどこにもいないよ!?

とりあえず、周りの目もあるので土下座をやめさせて、立たせて、事情を聞く。


そもそも、畠山家の居城七尾城は上杉の攻撃で攻め落とされたわけではない。

畠山家には織田派の長一族がいるように、上杉派の派閥があり、その裏切り(?)により降伏しているのだ。

長一族を殺したのは上杉謙信ではなく、この畠山家の上杉派である。

当然、長様はこのかつての同僚を怨敵と狙っているわけだが、知っての通り長様は元畠山家の重臣。織田家においては外様も外様である。実力主義とはいえ、いやそれ故に、織田家中での影響力は低い。


で、なんでオレ?

詳しく説明してもらって理由は判明。


犯人は『大殿』


安土で大殿から「何かあったら、三直を頼れ」って言われたらしい。なんでだよ!?と思ったら「去年末の代金はなかった事にしてやる」との伝言ことづてだ。


チクショー!尻拭いしてもらった自覚はあるけど、それをネタに面倒事押し付けたのかYO!!


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