2-14
「ねぇ、陽。どうして水が、こっちに来るの?」
夏生は海が自分の方に向かってくるのが不思議なようだ。
俺もこの現象の名前は知ってるが、どうして起こるのかは分からない。
「それは『波』っていうんだ。理由は俺にも分からん」
嘘は教えたくなかったので正直に答える。
それでも夏生は満足したようで、引いていく波を追いかけたりしていた。
当の俺はというと…
「…後少しだ…。後は本丸が完成すれば…!!」
砂浜で城を作っている。凄く楽しい。
昔の記憶を頼りに、小さな城を形成していく。
始めてみるとなかなか面白い。繊細な作業だが俺には向いているようだった。
「…大きな、お家?上手、だね」
「これは『城』だな。偉い人が住んでる場所のことだ」
無駄に大きい家ってのは間違ってない。
絶対無駄な部分あるだろ、あれ。もう少し資源は大事に使うべきだと思います。
夏生は俺が作った砂の城に興味津々のようで、食い入るように見つめていた。
夏生にとっては、外の世界は始めて見るものばかりなんだろうな。
全てが新鮮で、興味を惹かれる。好奇心が恐怖に大きく勝る年頃ってのも大きいんだろう。
「…私も、作る」
「お、夏生も作りたいか。なら作り方を教えてやろう」
「…うん。頑張る」
丁寧に、砂遊びのやり方を教える。
そういえば俺も昔こんな風に教えてもらったな、と思いつつ。
夏生は飲み込みがとても早い。要領もいいし、多分頭もいいと思う。
簡単なものなら教えてすぐに出来てしまった。やだ、うちの娘天才。
「楽しい、ね…」
「あぁ、楽しいな」
「陽が、一緒だから…かな」
笑顔でそんなことを言う夏生は本当に俺の心を惑わしてくる。
本人にその気は一切無いのは分かってるが、色々ときっついな…。
「…夏生のお陰かな」
ふいに出た言葉はきっと俺の本音なのだろう。
俺の言葉を聞いて嬉しそうにする夏生を見て、そう思った。




