『革命は静かに訪れる』
『臨時ニュースを申し上げます。本日午前9時30分市内ショップディートリントに銃を持った男4人が押し入り』
「ちっ、もう通報されちまってるぜ」
舌打ち混じりに電気街でのニュースを横目にする。
何故ここまで公になったのか。事前に作戦を練り上げる。
そして逃走経路もちゃんとしたデータに基づき緻密な作戦を立てた筈。
今まで通り上手く行く筈だった。
世間様にはコソ泥だと見られているかは定かではないが。
お客から大金を毟り取る悪質商売な宝石店はきっと俺たちよりもドス黒い渦が腹の奥底で巻いているだろう。
罪の無い客から善人顔で大金を吸い取る。金融機関会社だってそうだ。
無駄な借金を作らせ支払わなければ手段を選ばない。
言わば、そんな悪質企業や機関を獲物に活躍する俺たちの方が断然正しいと思う。
しかし、遂にそんな俺たちにも年貢の納め時がやって来ちまった。
この名古屋市内では、表側は高貴な宝石店。しかし、裏側では地元マフィアとの繋がりのある標的だった。
俺たち”7人”グループの内。奴等は何故か計画とは違う裏取引のさなかだ。当然偶々居合わせちまった俺たちの仲間の1人。逃走経路確保の1人が撃ち殺された。
逆上した仲間との激しい銃撃戦の後2人やられる。
「ジョン。あのニュース聞いたか?」
繁華街に差し掛かる所で俺たちの仲間の1人がある疑問を投げかける。
「ああ、しっかりと聞こえていたぜ、強盗犯は4人とな!」
そうだ。俺たちグループは様々な用途に合わせて7人。その内の3人は奴等に殺された。それは認める。だがしかし。
「ジョン。やっぱりだな、多分ルイスやテリーも本来は」
「分かっている。だがしかし、今はとにかく逃げる。そして俺たちグループの仲間を裏側で殺されたあいつらを」
そうさ。もうここまで来ちまえばなにも怖いもんもねェ。
過激派だろうがなんだろうが罵られようが、テロでもなんでもしてやる!
そして、こんな腐りきった世の中を巻き込み裏側世界をも抱え込むこの国の政府に革命派で俺たちグループの名を世に知らしめる!
街行く人々が俺たちの顔を見た途端悲鳴を上げている。
もう跡にも先にもない。紛れもなく公けにされちまってるのは俺たちなのだから。
「オラオラァァァ!邪魔な奴は撃ち殺すぞゴラァ!」
懐にしまい込むズシリと重いトカレフの安全装置を外し。パンパンと乾いた火薬臭を漂わせながら数発発砲。
ワラワラと街行く人々が逃げまどう差なか、一番手っ取り早い飲食店が目に入る。
「ジョン?まさか?」
「ああ、そのまさかさ、なあ。ペンノとブルクハルトは同時にあの硝子扉を撃ち抜いてくれ」
「ジョン?いいのか?あの店は」
懐の小銃を取り出しながら仲間の 1人。髭面のブルクハルトが心配げに問い掛ける。
たしかに罪の無い一般市民を巻き込たみのはしょうに合わない。
そんな俺の視界には、多分俺たちと同じく海外から来た者なのか。
藍色の髪の子供と水色髪の子供が見える。欧米人なのか、俺たちアラブ系の貧しい輩とは正反対な楽しげな会話がやけに虫酸が走る。
「全部巻き込んで自爆テロでも構わねェな」
ふと、自分でも怖いくらいに口元をにやけさせていたのだろう。
目の前に展開する仲間3人は、そんな俺の引きつる表情に気付きながら、手持ちの小銃のチェックを始めていた。
「さぁて、今からこの店を乗っ取り革命だ!」
しかし、現実は、そうとは全く違ったシナリオを刻んでいたとは俺たちの誰1人として気付きさえすれば……
つづくっ。