不穏な動き
別の場所では、源田と呼ばれた男がパソコンの画面を見ていた。
「これと、これを注文して。これもいるな」
何かを注文しようとしている。それは、画面上に映し出されている電気回路に使うケーブルやスイッチなどだった。他には、粘土や細くなったプラスチックを巻いた物なども注文していた。その後には、
「ここの部品はこれを代用して、これはこのパーツを使おう。他はすべて持っているよな」
源田はそう言って、すぐ横に置いていた段ボール箱を引き寄せた。
「これこれ、これだけあれば十分だ」
そう言いながら、何やら小さな黒い物体を眺めていると、
「ここに書いた奴は、ホームセンターに売っているからな」
と、メモした紙を持って立ち上がると、そのまま部屋を出て行った。その足音が途切れると、
「ちょっと、買い物に行ってくるよ」
と、遠くから聞こえていた。
一体何をしようとしているのだろうか?
又、別の場所では大西と呼ばれた者が他の者と話をしていた。それも、さっきの様なパソコン上で行われていた。
「先程、山本司令長官から命令が下った。そこで、その内容は機密になっているので言えないが、準備して貰いたい物がある」
やはり、画面上には武装した男のアニメ画像が映っている。だが、
「畏まりました。何なりとお申し付けください」
と返ってきた声は女性の声だった。
大西は言葉を続けた。
「この前送信した図面を基に、同じ物を二十個作成して貰いたい。それに用いる爆薬などは、源田参謀に任せてある。依って、それを運ぶ機体を追加したいのだ。それと、これから送るCAD図面から、別の機体も製作するので、そちらを優先して貰いたいのだが」
「畏まりました。それで、納期はいつまでに?」
「明後日には組立作業に取り掛かりたいからな、それに間に合えばよい。その翌日には、一号機を実験的に操作して見たいからな」
「明後日の朝ですね。畏まりました。それでは、早急に図面を送って下さい。直ぐに製作の方に取り掛かります」
画面上の女性から返事が来た後、武装した男の画像が消えた。
大西は、直ぐにCADの画面に切り替えると、そこにファイルしていた図面をDXFに変換して送信した。その数は数十枚にも及んでいた。その中には、3D画像の物や電子回路図なども送られていた。
その時だった。
扉を叩くノックの音が聞こえたかと思うと、
「ここに、夕食を置いておきますよ」
と声が聞こえた。それも女性の声だった。そして足音が遠のいたかと思うと、大西が動いた。
ノックされた扉を開けると、下には、お盆に乗せられた皿の上にカレーが注がれていた。
「今日はカレーかよ」
そう吐き捨てる様に言った大西は、そのカレーを持って扉を閉めていた。
同じ頃、別の場所では、パソコンの画面上に無数の設計図が映し出されていた。それを一つずつ3D画面に表示して、再び一つのファイルに綴じていった。それを別のアプリケーションに送信すると、
「これで、全ての部品が3Dプリンターに送信されたわ。後は、一つずつ完成を待つだけね。容易い事ですわ、大西参謀長官」
そこに居たのは、一人の若い女性だった。そして、その女性が居た場所でも、扉を叩くノックの音がすると、
「お嬢様。お食事の時間で御座います」
と、扉の向こうから声が聞こえてきた。すると、
「解ったわ。直ぐに行きます」
と、女性は冷たい口調で応えていた。