五人の絆
その疑問は、直ぐに消え去った。
新幹線が小倉駅で停車した時だった。
「この新幹線で良かったんだよね」
「そうだっちゃ。早く席を探すっちゃ」
「そうぜよ。弁当も買ったきに、座って食べたいきに」
「大阪まで二時間半や。慌てる事ないわ」
どこかで聞いた話方だった。
その会話に、逸早く気付いたサチだった。そして、
「な、何でここに……」
そう呟きながら、椅子に隠れるサチだったのだ。
だが、四人はサチに気付いていた。と言うよりは、この新幹線にサチが乗っている事を、既に知っていた様子だった。
「ええっと、ええっと。この辺だったよね」
そう言いながら、サチの座っている席の方に歩いて行くラン。その後ろからは、サチの頭を見つけてニヤリと笑うケイだった。
ケイは、後ろから着いて来る志保と未来に、サチの存在を指差して知らせると、
「何や知らんが、サチが居ないから寂しい旅になるなぁ」
「ほんと、サチも来ればよかったっちゃ」
「でもサチには、何か用事があるっち聞いちゅうが」
「何でも、東京に行くって言ってたよ」
と会話をしながらサチの前までやって来た。
そんな四人が後ろに居る事など知る由もないサチは、必死に椅子の上で蹲っている。
「ホンマやで、勝手な事ばかりしよるで」
「逢ったら、とっちめてやるっちゃ」
「親友を差し置いて」
「一人で行くなんて」
と、四人がサチの後ろで言っているにもかかわらず。そして、四人はサチの耳元で一斉に叫んだ。
「ねえ、サチ!」
「ねえ、サチ!」
「ねえ、サチ!」
「ねえ、サチ!」
その声に、一気に後ろに振り返るサチだった。
「何で、こんな所に居るのよ。そ、それも、四人そろって」
冷や汗を垂らしながらそう叫んだサチに、
「何でや、あらへんがな」
「ここまで来る苦労を知らんから、そんな事が言えるんぜよ」
「勝手な事ばっかりするんだもの」
「間に合わないかと、焦ったっちゃ」
四人がそう言ったが、サチは言葉を返す事が出来なかった。
そんなサチを見て、
「心配したんだよ」
「自分だけで抱え込まないで」
「何でも相談してや」
「それが、親友だっちゃ」
そう言って、四人はサチの周りの席に座った。そこが、四人が探していた指定席だったのだ。
そんな四人の言葉に、
「ご、ごめん」
と、小さな声で謝るサチの姿があった。
その後は、高校生の修学旅行の様に燥ぎ回る五人だった事は言うまでもないだろう。友達というものは、本当に大切で固い絆だった。
そんな五人だったが、新幹線が大阪に近付いた時、
「みんな、どうして聞かないの?」
とサチが言った。その言葉に、
「何を聞くねん」
と、聞き返したケイ。他の三人も、サチの方を見ていた。
「どうして、東京なんかに行くのかって事だけど」
小声でそう言ったサチだったが、
「知ってるで」
「十五日だっちゃ」
「うちらも準備してきたぜよ」
「当たり前です」
と、全てを知っていた四人だったのだ。そして、
「副部長から頼まれたんや」
ケイがそう言うと、
「頼まれた?」
と不思議そうな表情を見せるサチだった。
サチが出掛ける時、その副部長と別れてきたのだ。だが、副部長は何も言わなかった。
そんな時だった。思わぬ一言が、サチに告げられたのである。
「サチを頼むって」
「今回の計画、サチとあなた達の手で防いでほしいってな」
ランとケイがそう言った。
サチには何が何だか解らずに、その言葉の意味が掴めずにいた。
「副部長が言っていたっちゃ」
「前のラジコン部に戻したいって」
志保と未来がそう言うと、
「言ってたやんか。楽しくやりたいって」
「そうだよ。好きなラジコンを、楽しもうよ」
と、ケイとランが微笑んで言った。
確かにその通りだった。数日前の河川敷で、ヘリコプターを飛ばしながらそう言った事を思い出したサチは、目に一杯の涙を溜めて、
「ご、ごめんね。私もそうしたいと思っていたんだ。だけどね、だけど…… 部長の言う事に、自分のやっている事が悪い事だと解っていたんだけどね。部長の言う事に、何故か従う自分がいたんだ。
そんでね、みんなには迷惑を掛けらんないって思って、一人で来たんだけど」
頬を伝う涙が止まらないサチだった。そして、
「どういていいか解んなくなっちゃったんだよ」
と、ケイに体を寄せて泣きじゃくった。
「うちらもごめんな」
「サチの苦しみを解ってあげらんなかった」
「でも、もう大丈夫だっちゃ」
「五人そろえば、鬼に金棒ぜよ」
と、サチを慰める四人だったのだ。
部長の前では、厳しく五人に当たる副部長だった。だが、その副部長も納得がいかなかったのだ。あの、部長の態度に。
こんな事、間違っている。そう思っていた副部長だったが、どうする事も出来ないままだった。それで、この四人にサチの事を頼んだのである。そして、今回の計画を阻止する様にお長居したと言う訳である。
そう、副部長もサチと同じ考えだった。
好きな事を楽しみたい。
そう考えていたのだ。
新幹線の中で四人は団結した。ミリタリーズを敵に回すという事を。そして、それは警察に計画を知らせるのではなく、五人の手で計画を阻止するという手段を選んだのである。
もしも警察に計画の事を知らせれば、部長にも警察の手が廻ってしまうからだ。そして、副部長も同じ事だった。
それは絶対に避けたかった。何故なら、その二人も、五人にとっては友達だったからだ。
だから、五人の手で計画を阻止するという決断に至ったと言う訳である。それがどれ程危険な事なのか。それを覚悟の上の決断だったのである。
こうして、五人は大阪のホテルに泊まった。その翌日には、東京に向かったのである。




