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ラジコンウォーズ  作者: kazu
プロローグ
2/27

デモンストレーション(2)

 突然の事件に、殆どのテレビ番組では特番が組まれていた。

 昼間とあって生放送のワイドショーが多いせいか、どのチャンネルも渋谷での出来事を中継していた。

 そんな中、あるテレビ局では、

「ここで臨時ニュースです。

 たった今、渋谷を襲ったラジコンヘリ軍団の首謀者と思しき人物から電話が来ています。

 番組のマイクを通して、直接話をしてみます」

 生放送番組のMCがそう言うと、

「ええ、私はニュースサイトと言う番組を担当している者ですが、渋谷を襲ったって言うのは本当ですか?」

 と、ニュースキャスターが問い掛け始めた。

 すると、

「気に入ってくれたかな。俺からの贈り物」

 その声は、有名な怪盗ものアニメに出て来る主人公の声だった。

 そして、

「ちょっとしたデモンストレーションだよ。

 そこで使ったミサイルからの放出ガスは、命には別条がないから安心して」

 と次に聞こえてきたのは、音楽ゲームに使われるコンピュータで作られた女の子の声に変わっていた。

 様々な手法で繰り返される事件首謀者からのメッセージ。

 だが、その後に放たれた言葉に、番組内は騒然とした。

「これで終わったと思って貰っては困ります。

 これまでは見世物だから、これからが本番ですよ。

 今から、いっぱい、いっぱい、人が死にますよ。

 私たちは、ミリタリーズっていいます。

 以後、お見知り置きを」

 その言葉の後、音声が切れてしまった。

 引切り無しに言葉を掛けるニュースキャスターだが、首謀者からの返事は返って来なかった。

「たった今、犯人と思われる者から連絡が入り、次の犯行の予告を告げるメッセージが放たれました。

 ただし、犯行を行った者が男性なのか女性なのか?

 複数の犯人から成る犯行なのか?

 犯人の年齢すら識別できないまま、メッセージが途切れてしまいました」

 血相を変えて叫ぶMCだった。



 渋谷のスクランブル交差点で騒動が起きて二時間ほどが経った時、お台場の埋め立て付近の海中では、人知れず移動する物体があった。

「お父さん。このガンダム、煙が出て動いているよ」

「ようし、写真を撮るからな」

 家族連れで賑わうお台場シティーだった。

 だが、その直ぐ傍にある海辺では、

「ちょっと、あれ?」

「海中に黒い物が動いているな。一体何だ?」

 数名の観光客が海面を指して騒いでいた。

 目線の先には、太陽光が波に反射する中、ゆっくりと動く黒い物陰が確かに見える。

 その動きからは、どう見ても魚には見えない。

 すると、

「こっちにもあるぞ」

「あれ、あれも同じ物じゃないのか」

 と、至る所から黒い物体を見つける声が聞こえてきた。

「ガイドさん。あれは何ですか?」

 と、観光ガイドに尋ねる男性に、

「私に聴かれても、解りません」

 と困り果てるガイドだった。

 そうこうしている内に、海底に薄らと見える黒い物体が、次第に増えていた。

 更にその物体は、海面に浮上し始めていたのだ。

「せ、潜水艦!」

 そこにあったのは、ラジコンの潜水艦だった。

 それも、二メートルは優に超す大型の物だった。

 すると、そこに居た観光客が叫んだ。

「あ、あれは、第二次世界大戦で大日本帝国海軍が所持していた『伊四〇〇型潜水艦』じゃないのか。

 カッコイイな。何処で売っているのかな」

 ミリタリーマニアなのか、興味津々に潜水艦を眺めていた。

 その隣に居た観光客は、

「映画の撮影でもやっているのか」

 と、周りを見渡していた。

 だがその後、周りにいた観光客達の表情が一変した。

 目の前に現れた潜水艦の上部がスライドしたかと思うと、中からミサイルの発射台が現れたからだ。

「何だありゃ、動いているぜ。まるで本物だな」

 その状況に、感心しながら見つめる人々もいた。

 だが次の瞬間には、蟻の子を散らした様に逃げ惑う観光客達の姿があった。

 ゆっくりと臨海公園の方向に船首を変えた数隻の潜水艦。

 その甲板上にあるミサイルの後方から、次第に白煙が立ち込めた。

「す、凄ぇぞありゃ」

 臨海公園の柵から身体を乗り上げて、そう叫んだ観光客だった。

 だが数秒後には、その状況に只ならぬ恐怖を感じたのか、観光客の眼が次第に大きく見開かれた。

 次の瞬間、煙を吐いたミサイルが発射された。

 それは、他の潜水艦からも同じ状況だった。

 一斉射撃が始まったのである。

 余りの急な出来事に、

「だ、誰か警察を」

「は、早く、携帯で呼べよ!」

 叫び声を上げながら逃げ惑う人々だった。

 その場で身を屈めて人々。

 他にも、叫びながら走り去る者。

 子供の手を引っ張って、建物の中に入る者。

 その間に甲高い音と共に投下された数十発ミサイルからは、空気が漏れる様な音を発しながらガスが噴射していた。

 そのガスを吸った者達は、その場で倒れていった。

 ガスの正体は、睡眠ガスだったのだ。

 暫くすると、通報を受けたパトカーや救急車が駆けつけていた。

 もちろん、直ぐ傍にあるフジテレビからもアナウンサーが駆けつけていた。

「たった今、渋谷で起こった惨劇と同じような出来事が、ここお台場でも起こりました。

 まさに、戦場と言ったところです。

 目の前では、多数の負傷者が救急隊員によって搬送されています」

 少し離れた場所で、テレビカメラを担いだカメラマンを引き連れて、事件現場を実況するアナウンサーの姿があった。

 それから数分後には、犯人からのメッセージがフジテレビに届けられていた。

「作戦の決行、及び、奇襲作戦の続行を命令する」

 過去の映画の一場面で使用された動画が、犯行予告メッセージとして送られてきた。

 二度も犯行が繰り返された奇襲攻撃。

 その目的とは?




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