決意と恋(迷い狐
だいぶ時間は空きましたが投稿してみました!今回はほのぼのではありませんが…よろしくです
私は確かにあの青年に助けられた
私が幼く無知なその昔に、罠に掛かった私を
あの時私は確かに感じたのだ、鼓動の高鳴り、知らぬ感情を
あれから時は過ぎ…人々に忘れられ、祠の中
一人夢を見た…それは私の名前を呼ぶ青年
誘ってるのは私であった…もう一人の私であった
青年は私に何を求めるか、そなたが欲するのは私か?
どうして引き際を知らぬ?どうしてもっと攻めないのか?
どちらがそなたの幸せか…戻れなくなっても知らぬぞ!
誘うが本業、好き故の拒絶
それでも朱雀門はそなたを誘う、鮮やかな桜と照らす虹光
幻想的な世界と、その先の世界…魂の境界その分岐点
混ざり合う感情と光と陰、私が欲するのは汝である…だが…
そこから先は踏み入れてはならぬ!もうひとつ門を潜るとよかろう!
ならば私の幸せとは何か、そしてそなたの幸せとは何か…
繰り返し、それも自問…いまだ自答はできず
近付いていく度胸が痛む、ここまで誘ったのはもう一人の私なのに
昇る、青年はただひたすらに声に誘われるまま…
止めれば良いのか、あれはきっと青年の魂…止めなければ現世に戻れぬ
半透明の身体、光で透け存在すら消えかけてもなお私の名を呼ぶ
あれは違う私、ホントの私はここであるぞ!
叫ぶ声は全て闇に吸い込まれ、消えていく…
赤目の私は、一人ほくそ笑む
紫目の私は、一人見てるだけ
ホントに好きならばどちらを選ぶべきか
彼が生きて私が見守る世界、これが幸せだとしたら…
私の所に来て御賽銭をいれ、拝むだけでいい…
大人になれど未熟な私をそこで見ていてくれないか
稲荷が人間に恋をしていいならば…私にはそなたを止める義務がある
そして、もう一人の私を止める必要がある
意を決した、その瞬間に私は狐の姿で駆けていた
青年の身体を後ろからすり抜け、もう一人の私へ
私は私を止めるのだ!一人ほくそ笑む私に飛び掛った
その刹那私の周りの霧が晴れもう一人の私が消える
それと同時に辺りを包む異様な雰囲気が変り
青年の魂は正気になると身体へと帰っていく
私は私にうち勝った狂気に満ちたもう一人の私に
長い夜の幕が明ける
祠の中で目が覚めた、日の暖かさと木漏れ日
昨日の悪夢を忘れさせてくれる
そして響くお金の音、手を合わせる青年
ちゃんと戻れたようだ、私は心から喜んだ
また明日も来てくれる、それだけでよかった
私のどこか寂しい気持ちがあの私を生んだのだ
もうあの私は二度と出てくる事はないだろう
それは、私が会えないことを寂しいと思わなくなったから
この祠の鍵が開いたときは私がそなたを守る…
階段を下る青年を祠の中から静かに見送った
fin
読んでいただきありがとうございます!うちの子を沢山使って短編を書いているのですが…こんな系はあまり書かないので慣れません…