プロローグ
プロローグです。
二人が出会う、前のおはなし。
少し童話風になっています。
そう遠くはない昔、魔法がまだ世界中に満ちていた時代、
ある街に仲のいい恋人が住んでいました。
二人はとても愛し合っており、結婚の約束をしました。
「幸せになろうね」
「ずっと二人で暮らしましょう」
「おや、君は子供がすきではなかったかい?」
「ええ、そうしたら、三人ね」
「三人と言わずに、たくさんの子供と、世界一幸せな家庭をつくりたいな」
「一緒にお菓子をつくりたいの」
「僕は一緒にサッカーを」
「粉だらけになった娘と、泥だらけになった息子と、顔を見合わせて大笑いしたいわ」
「きみが一番台所を汚すだろうなあ!」
「あら、あなたが一番子供みたいにはしゃぐくせに!」
「愛してるよ、マリア」
「わたしもよ、エリオット」
幸せな二人でしたが、それからしばらくしてマリアが子供を産めない体だということがわかりました。
「そんなに泣かないで、マリア」
「エリオット…もう…あんなに夢見た幸せな家庭が…つくれないんだもの…」
「なに、きみさえいれば、もう僕は世界一の幸せものだよ」
「エリオット…ごめんなさい…愛してるわ…」
「あやまることはないよ、マリア…愛してる」
二人の結婚式が近づきました。
マリアの悲しみを知った父親は、ぜんまい仕掛けの人形を作り出しました。
彼は世界でも有名な人形師でした。
丁寧に、丁寧に、人形は作り込まれました。
絹のように白い白磁の肌、
キラキラと輝くストロベリークォーツの瞳、
柔らかに流れる、長い赤毛。
人形はちょうど、彼らの結婚式の日に出来上がりました。
「結婚おめでとう、マリア、そしてエリオット」
「ありがとう、おとうさん」
「ありがとうございます、おとうさん」
「幸せな未来を歩む若者に、わたしからのプレゼントだ」
「まあ、綺麗な人形!」
「すごいな…生きてるみたいだ…」
「みたいじゃない、生きているのだ…わたしには一人、妖精の友達がいてね」
「あらおとうさん、またいつものおとぎ話?」
「おとぎ話ではないのだよ、マリア…その妖精が、この人形に魔法をかけたのだ…人間になれる魔法を…」
「…それは、本当なのですか」
「本当だとも、エリオット…これから15年間、君たちに愛され続ければ、きっとこの子は人間になれるだろう…」
「おとうさん、冗談はやめて…」
「まあ、いいさ、時がくればわかるだろう…」
「信じようマリア。僕は信じたい。」
「わたしだって信じたいわ…でも…」
「僕たちの、子供だ」
「…ええ、そうね」
「さあ二人とも!末永くお幸せに!そしてこの子を愛しておくれ!
妖精からさずかったこの子の名は…君たちの結婚を祝福して『マリアージュ』だ!」
こうしてさずかった人形と共に、二人は仲良く暮らしました。
マリアもエリオットも、人形を実の娘のようにかわいがりました。
可愛らしい服をきせ、話しかけ、誕生日を祝いました。
とても幸せな日々でした。
「15年ですって、エリオット…」
「そのころ僕らは、40歳だね」
「ずいぶんとおばさんになってしまうのね!」
「僕もいいおじさんだな」
「その時、マリアージュは…マリアージュは、改めてうまれるのね…」
「ああ、僕たちの本物の子供として…」
「待ち遠しいわ、ね、マリアージュ」
「マリアージュが、笑っているようにみえるね」
「ええ、きっと笑っているのよ」
「最初の言葉はなんだろうな」
「そうね、きっと…」
実際lマリアージュは微笑んでいたのでした。
月日は飛ぶようにながれました。
いよいよ明日が15回目の結婚記念日…
マリアージュが人間として命を授かる日となりました。
二人は、マリアージュへの特別な誕生日プレゼントを買いに行きました。
マリアージュは、一人で待っていました。
二人はなかなか帰ってきませんでした。
マリアージュは、ずっとずっと待ちました。
愛する母と父を待ちました。
二人は帰ってきませんでした。
次の日、マリアの父親、人形師が家にやってきました。
マリアージュは、椅子のうえに静かに座っていました。
人形師は、マリアージュの背中のぜんまいを、キリキリと回しました。
マリアージュの口が、ゆっくりと開きます。
「どうして、あなたはないているの?」
「ああ、マリアージュ…お誕生日おめでとう…」
「パパは?ママは?今日は、お誕生日だから…一緒に祝ってくれるっていっていたもの…」
「…二人は…」
「…帰ってこないの…?」
「ああ、マリアージュ…君は賢いから、もうわかってるかもしれないが…二人は…街から帰ってくる途中で…事故にあって…」
「いっ…いっしょに…いわってくれるって…いったもの…」
「…もう、動かないんだ…」
「なんのために…わたしは…しゃべれるようになったの…?
パパに…ママに…ありがとうって…愛してるって…いうためだったのに…」
「…マリアージュ…」
「ねえ、どうして…どうして…もうわたしを抱きしめてくれないの…?パパ…ママ…どうして…?」
マリアージュは目から大粒のなみだをこぼしました。
マリアージュは初めて泣きました。
マリアージュにかかった魔法は、愛された期間が15年に満たずに、中途半端になっていました。
人間のように話し、動くことはできるのに、体は人形のままでした。
マリアージュは二人の葬儀に参加して、感謝と愛する言葉を述べました。
街の住人達は、二人が人形を愛していたこと、そして父親が有名な人形師であることを知っていたので驚きながらもとがめることはありませんでした。
マリアージュは、ふたたび人形のように沈黙しました。
人形師である祖父のもとに引き取られましたが、ただただ泣き続ける毎日でした。
祖父母はそんな彼女を心配しましたが、なにもしてやることはできませんでした。
ある日、人形師は言いました。
「マリアージュ、毎日泣いてばかりでは、死んだ二人も悲しむだろう…自分の体が、不完全であることは知っているね?」
「…はい…」
「どうしたら本当の人間になれるのか…わたしにはわからない…お前に魔法をかけた妖精にすら、よくわからないらしい…」
「…」
「ただ、その妖精がわたしに言うのだ…ここにいてはだめだと」
「…外の、せかいに…?」
「そう、わたしも、二人の子供であり…なによりわたしが作った、愛するお前を…手放したくはないが…お前が本当の幸せをつかむには、人間になるしかないだろう…」
「おじいさん…」
「きっと、お前を連れて旅をしてくれる旅人が見つかるはずだ、と妖精も言っている。」
「旅を…」
「マリアージュ、本当にお前を、手放したくはない…せめて、旅人が見つかるまで、私たちと一緒に…」
「…ありがとう、おじいさん…」
煉瓦造りの小さな街に、旅人が訪れることは多くありません。
時折、お金持ちの人形コレクターたちがマリアージュを買い取りたいと熱心に言いましたが、人形師は首を縦に振りませんでした。
この人ではない、と妖精が言うのでした。
マリアージュは小さなショーウィンドウの前のテーブルに座って、運命のひとを待っています。
今でも、待ち続けています。
しかし、彼がこの店を訪れるのは、そう遠くはない、未来の話…。
プロローグでした。
少し童話風に書いてみました。
一話からは、ラノベっぽくなると思います。ご了承ください。
ibis paintで、マリアージュと
まだ出てきていない湊人の画像を投稿していますので、
よろしければご覧ください!
http://ibispaint.com/art/905452892/←マリアージュ
http://ibispaint.com/art/668894211/←湊人
ブログの方もよろしくお願いします!
http://ameblo.jp/zenn-mari/
まだわたしのなかで話が定まっていないっていうのはありますが、
マリアージュと湊人に自由に動いてもらおうと思います笑
ご静聴ありがとうございました!
これからも読んでくださるとうれしいです!