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生きること+死ぬこと

作者: ユミル




「あんたはなんで生きてんだよ」


馬鹿なこと聞きやがって。ふざけてんのか。


じゃあテメエはなんで生きてんだ。


あたしが生きてるのはこの心臓が動いているからだ。

あたしが生きてるのはこの肺が呼吸しているからだ。

あたしが生きてるのはこの心が存在しているからだ。


それだけじゃ足りないっていうのか。


何で他に理由を求めるんだ。

そもそも理由なんてあんのかよ。


自分が生きてる価値なんて知るかよ。そんなもの他人にとってはどうでもいいもので自分にとってだけあればいいんだよ。

自分が生きたいから生きてるんだよ。それの何が悪いってんだ。


死んでねえから生きてるんだよ。まだ死なねえから仕方なく生きてるんだよ。ただの惰性で生き続けることの何が悪いんだ。


あたしの生きる世界にわざわざ死ぬだけの理由なんてないんだよ。そんなくそ面倒なことをしなきゃいけない義務はあっても、その時を選ぶ権利なんて無くても、今のあたしにそんなことをする意味は無いんだよ。


だから生きてるんだ。むしろ今死んでいるんだ。わざわざ言ってくれなくたって、あたし達みたいなちっぽけな消しカスみたいな存在なんて、そのうち消えちまうんだよ。

だから放っておいてくれ。あたし達の生に疑問を持つなんてまどろっこしいことはしないで、あたし達の死を招くようなことはしないで。





今あたしの目の前にあるのがあたしの全てなんだ。知らないものはそこに無いのと同じことなんだよ。


誰かが地球の裏側で死んでようが生きてようが、知らないことがあたしを変えることはないんだから。





目に見えるものがあたしの世界だ。

耳に聞こえるものがあたしの世界だ。

手で触れて感じるものがあたしの世界だ。

心で受け止めて抱きしめるものがあたしの世界だ。



それだけがあたしの世界。あたしそのものなんだよ。


知らないテメエが口出しすんじゃねえ。

あたしはあたしを生きていくんだ。


あたしがいつ死んじまおうが知ったこっちゃねえよ。

たとえ神様なんてもんが全てを決めていたとしても、あたしの瞬きから呼吸の数までいちいち全てありがたいことに決めてくださっていたとしても、そんなもん全部振り払って落とした後なんだ。そんな有りがた迷惑なもんはとっくの昔に親の腹ん中に置き去りにして消えちまった後なんだ。


そんな堅苦しくて重いもんは振り落として、身軽になったこの体だからこそ生きていけんだよ。



人間に羽が無いなんて良く言ったもんだ。

羽なんて無くたって飛べんだよ。好きなだけ飛び回ってりゃいいだろ。

出来ることをやれないなんて言ってだだこねてそこから動かねえ馬鹿は一生そこに居やがれってんだ。



いつまでも手を伸ばしたままでいるぐらいならその手で地面を押し上げてさっさと立て。歩け。走れ。



自分だけを助けてくれる都合のいい神はいない。仏もいない。白馬の王子様は城の中で爆睡していらっしゃるだろうよ。

分かったら立てよ。自分の足で動けよ。

走りたい方向に進んで進んで進んで、そんでから死ねよ。



ちゃんと前向いて横も向いて後ろも向いて逆立ちして回り道して坂から転げ落ちて階段を必死にのぼってそっから飛び降りて、そのまま死ね。


精一杯飛び回ってから休憩して、また飛び回って墜落して死んじまえ。




少なくとも、あたしはそうやって生きてんだよ。



そのうち死ぬために生きてんだ。今を生きるために生きてんだ。

その二つに違いなんか、ありっこないんだから。

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