02-13 エルフの里
ゴールデンウイーク、いかがお過ごしでせう。
私は課題で忙しいのですが……ストックはあるので投稿していこうと思います!
寮室への転移は無事に成功したアレイシアだったが、問題は山積みである。
現在のアレイシアには、どうしても隠しようの無い蝙蝠の様な翼がある。そのうえ、いまこの寮室にはフィアン達もいないようだった。ここで変に動いて他の人に見られてしまっては、それこそ痛々しい二つ名が広まってしまうだろう。すると結局、フィアンが戻って来るまで寮室で待っているのが一番安全という結論に辿り着いた。
翼に関して言い訳を考えている最中で、そういえば、とアレイシアはある事を思い出す。修行の中で思考の片隅に追いやられた事、それは今日が選択科目を決定する日だったという事だ。自室の棚から選択科目が書かれている紙を見つけ出し、ついでにと、どの科目にするかを考えるのであった。
一方その頃、フィアン、シェリアナ、クレアの三人は、クラスで授業を受けながらも、朝からいないアレイシアをずっと心配していた。
授業が終わって帰る時間になると、三人はフィアンの部屋に行く事に決める。すっかり四人の溜まり場となったその部屋に行くのは当然、もしかしたら戻って来ているかもしれないアレイシアに一喝入れるためだった。
「お邪魔します」
「アレイシアさんいるー?」
三人は部屋の中へと入って行くが、その奥には、未だ思いつかない言い訳を必死で考えようと焦るアレイシアがいた。
だが、いくら焦ろうとも思いつかないものは思いつかない。諦めて素直に三人に打ち明ける事にした。
そして、アレイシアの自室の扉が開けられる。
ガチャッ!
「…………お、お帰りなさ……」
「……へ?」
「…………は?」
「………………えええぇぇぇ!?」
三人が部屋に入ってまず目に付いたのは、こちらを向いてベッドに横たわっているアレイシア。そして彼女の背中にある大きな翼だった。
「アレイシアさん、それ……」
「……やっぱりそうだったの!?」
「ぅ………順番に説明するからちょっとそこに座りなさい!!」
そう言って三人をリビングの椅子に座らせ、アレイシア自身も空いた椅子に座る。この時、一瞬口調が素に近付いたという事に喋った本人は気付いていない。
「……やっぱり翼を隠していたの?」
「あのね、生えてきたのよ」
「生えてきたって……」
シェリアナは呆れた様に言う。
ここ何百年も産まれなかった筈の翼持ちの吸血鬼が、いま目の前にいる。それだけで驚きをも通り越し、呆れるには十分過ぎた。そして、シェリアナは椅子から立ち上がると、アレイシアの後ろに立って翼を弄くり始めた。
「へぇー、これが吸血鬼の翼……伝承通りの蝙蝠みたいな……」
「ちょ、やめてっ……触るなっ!」
「おー、ぷにぷにしてる!」
「あ、そこはやめてっ! 離れろーっ!!」
実は、翼の付け根はとても弱いのであったが、修行で学んだ翼の動かし方が幸いし、翼を大きく動かす事によってシェリアナから逃れる事が出来た。
「ちょっと相談があるんだけど……」
「ん、何ですか?」
その日の夜、四人集まった寮室で、アレイシアは翼についてを皆に相談してみることにした。彼女は何故か鞄を持っている。
「この翼、このままじゃ学園に出て行けないじゃない?」
「うーん……どうしたらいいんでしょうか?」
「…………あ! それなら私に心当たりがあります」
ここで手を挙げたのは、どうやら自信がありそうな様子のクレアだ。一体どこにそんな心当たりがあるのかと皆は注目した。
「私の里ですが、伊達に何千年も繁栄し続けた里ではありませんから。吸血鬼について書かれた歴史書があったと思います。それになら何か書いてあるかもしれません」
「歴史書……翼持ちの吸血鬼が翼を隠すために使った手法も書いてあるかもしれないわね」
「はい。ですが、私の里まで馬車で二日は掛かってしまいます……」
重要なところで行き詰まってしまうようで、クレアは表情を暗くする。しかし、その程度でアレイシアは止まらなかった。
「馬車で二日かかるなら、馬車を使わなければいいのよ」
「えっ、馬車は一番速い移動方法ですよ?」
つまり、彼女が言うのは翼と飛行魔法――アレイシアはこの方法で、馬車の十倍の速度を出せる自信さえあった。
「クレアには付いて来てもらいたいから飛行魔法をかけていくわ。それでいいわね?」
「あ、はいっ!」
そしてアレイシアは、すぐクレアに飛行魔法をかける。
「わ……本当に飛びました……!」
「明日の夜明けまでに戻るわ。行ってきます!」
そう言い残し窓を開け、そこからアレイシアは飛び立って行った。シェリアナは、翼を広げるその姿に見とれてしまい、数分間再起不能となってしまったそうだ。
飛び始めてから約三刻。この世界ではあり得ない、音の半分程度の速度を出す飛行で辿り着いたのは、木々が生い茂る広大な里だった。
その里は、アレイシアの故郷であるクラードよりも更に山奥へと入った場所にある。それはどうも里と言うには大き過ぎる気もするが、元々はたった一つの小集落だったのだと言うから驚きだ。木々を利用する様な形の家が多く、高い木の上に乗ったログハウスや、木を直接くり抜いた家もある。
そんな集落の奥、一際目立つ巨大な木。それが、クレアの家に当たるものらしい。入り口の正門に立った二人は、期待と緊張に高鳴る胸を抑えながら、門番と思われる人に話しかけた。
続きは次話で!
……改訂前も思ったけど、ここって唐突に終わる気が(