02-08 「授業を始めます」
どもっ、寒さにやられてか、最近はずっと風邪気味ですん……のそのそと書いている番外編が予想外に長くなって困る←
あ、HN変えますが気にしないで下さいね? 大切な人からの名前なので(笑
次の日の朝、目を覚ましたアレイシアは、いつもより明らかに遅い時間だという事を感じた。
恐らく、昨日の騒ぎのせいで疲れてしまっていたのだろう。そのため、真上のベッドで眠っているフィアンを急いで起こしに行った。
「フィアン! 朝よ! 間に合うか分からないわ!!」
「う、にゃ……」
寝ぼけて動きが鈍ってはいるが、ベッドから起きてアレイシアと着替えの準備を始める。
着る物を準備し、丁度着替えようとした時、扉の影から顔を出したフィアンは思い出したように言った。
「そういえば、昨日はお風呂に入っていないですね。いつもは毎朝毎晩入るけど」
「入っている暇はあまり……一人なら大丈夫ね、フィアンは入りなさい!」
そう言われ、フィアンはある事を疑問に思った。それは、彼女のような歳の女子ならあまりに当然な質問である。
「え、一緒に入るのはいけないんですか? 今は時間がないからそれでも良いでしょう?」
「な……それはダメ!! 何がダメかって言ったら、お、主に私の精神が!!」
普段の様子からは考えられないほど取り乱し、断固として二人で風呂に入ることを拒否するアレイシア。しかしフィアンは――
「……何でですか?」
――ただ、首を傾げるだけだった。
「ああぁぁっ!! もういい! 喋っている暇があるならっ!!」
結局アレイシアが折れ、一度一緒に風呂に入ってからクラスへと行く事にした。
ちなみにお湯は、アレイシアが水魔法と火炎魔法を発動させる事によって一瞬で沸かす事が出来たため、設置された蛇口からわざわざ時間をかけてお湯を出す手間が省けた。
変な形でありながらも、二人は改めて魔法魔術のありがたみを実感する事となった。その蛇口から出てくるお湯も、実は火炎魔法で暖められているのだが。
――バンッ!!
「おはようございますっ!」
「ハァ……おはようございます……」
一年Sクラスに辿り着き、入り口に設置されている両開きの扉を飛び掛かるような勢いで押し開けた。そして同時に挨拶も済ませる。
「お、二人が来たな。これで今日の欠席者は無し……二十一人中二十一人、今日は異常なし、と」
教室の中では、丁度フィズ先生が出席を取っていた。二人の姿を確認すると、紙に何かを書き込んで行く。どうやらぎりぎりの所だったようだ。
「では二人共、席について」
「はい」
二人は隣り合った席に座り、共に前の板へと目を向ける。その板は、地球の黒板に当たる物であり、ごく微量の魔力を使った特殊な杖を使う事によって消せる文字を書く物だ。
「ではこれから、数学の授業を始めます」
アレイシアにとって先生のその言葉は、嫌なくらい、耳に懐かしい響きだった。
授業が始まってからすぐに、アレイシアは退屈を覚えていた。何故かといえば、数学の授業レベルが加減法から一部の積、及び商とその応用と、アレイシアとしてみれば復習をしているような感覚だったからだ。
そうして退屈を覚えると、吸血鬼も人間も同じように、他の事を考えて時間を潰そうとするものなのである。
(さっきの風呂……フィアンは、あわわ……)
「アレイシアさん、ちょっと顔が赤いですね? 大丈夫かな?」
アレイシアが少し頬を赤らめていることに気付いたフィズ先生は、心配して彼女に声をかける。
「あ、はいっ、全然大丈夫です!」
「そうか……じゃあこの問題。アレイシアさん解いてみて下さい」
先生が指し示す方を見てみれば、長文問題がつらつらと――話をしっかり聞いていたかの確認のためだろうか。
【応用問題……直線上の街道に馬車が二台止まっている。それぞれが反対方向に、半刻あたり六千テルム、二刻あたり二万四千テルムで進んだ時、二台の馬車は一刻あたりどれ程の速度で離れていくでしょう?】
「一刻あたり二万四千テルムよ」
「……!? 正解だ! この問題は難しい筈なんだけどなぁ……一瞬で解くとか」
先生の呟きから推測するに、どうやらこの問題、応用として出されたやや難易度の高い問題だったようだ。
それからは何事も無く午前のみの授業が終わり、寮へと帰る時間になる。すると、アレイシアの後ろの席から誰かが歩いて来た。
赤一色の簡素なドレスの上に学園指定のローブを着て、背中の半ばまでの金髪を赤い紐で縛った少女だ。身長はアレイシアと同じ程度で、彼女は目線を合わせつつアレイシアの眼前に立ち止まった。
「こんにちは、あなたが黒翼のアレイシアね。私はシェリアナ・レイン、これから七年間は同じクラスになると思うわ、よろしく!」
「あっ、こちらこそ。……あと黒翼言うな」
「それと、これを見なさい!」
うんざりとしたように言うアレイシアだが、それには耳もくれずにこの少女——シェリアナは、ローブの下から二枚のカードを取り出す。
一つは学園証で、彼女の種族が吸血鬼なのだとわかる。更にもう一方には『アレイシアファンクラブ:会員#01』と書かれていた。
「会員番号一番を取ったのよ、好きだったから!」
「どういう意味よ……」
彼女が言う『好き』の意味が気がかりではあったが、後の話で、夕方にアレイシア達の部屋にシェリアナとそのルームメイトが来ることが決まった。アレイシアとしては断る理由が無い上に、友人を増やしたく思っていたので丁度良かったそうだ。
夜の十四刻になる少し前、玄関の扉からノック音が聞こえて来た。
それに気付いたアレイシアは、部屋の外の気配を感じつつ玄関の扉をゆっくりと開ける。
「はい?」
「私、シェリアナよ。あと、こっちはクレア」
「はい。よろしくお願いしますね、アレイシアさん」
シェリアナの横に居たのは、穏やかそうで上品な物腰の少女だった。アレイシアより身長が高く、やや見上げるようにしなければならなかったが、髪の横から飛び出した耳に彼女の視線は釘付けになる。
細長く、尖った形状のそれは、完全にエルフのものだった。吸血鬼の耳もやや尖ってはいるが、これ程では無い。
「わぁ……」
思わず左手を伸ばしかけて、ふと思い留まる。——いきなりこんな事をしては失礼かな、と。
「な、何でしょう……?」
目を輝かせるアレイシアに、クレアはどう反応して良いのかと迷っている様子だった。
「えっと、どうぞ入って? ゆっくりしていってね」
いつかは触らせてもらおうと心の内で思いながら、アレイシアは二人を部屋へと上がらせる。こうしてリビングのソファに着いた少女四人は、互いに少し緊張した様子で他愛の無い会話を始めた。
感想やアドバイスなど、心よりお待ちしております!
頂いた絵もそろそろ紹介したいのです。多分、以前のように話中に挟むと思います。