02-07 教室の喧騒
どうもっ、受験が終わって進路決定しました!
そう早く更新とは行かないかもしれませんが、これからは創作を続けられそうです。
それと一つ、改行を少し変えてみましたが、どうでしょう?
アレイシアとフィアンは三階、一年Sクラスの部屋の前に立っている。部屋の中はどうも騒がしく、先程のホールでのこともあったためか、二人は中へと入ることにかなりの抵抗があった。
いざ開けようとその両開きの扉の前に立ってみても、軽く押し開けるだけで良い筈なのに、重たく厚い壁ように感じてしまうのだ。
「開けるわよ」
「はい……」
横目にフィアンを見つつ、静かな声で、扉を開ける確認を取った。
キィィ————
「失礼します、遅れてすみません」
「すみません」
扉を開けるや否や、アレイシアは中にいる先生に対して遅刻したことを謝った。
——が、次の瞬間。クラスの全員から、突き刺さるような視線を浴びせられてしまう。
(…………えっ。)
唖然とその場に立ち尽くしていると、ざわめきの中からどこからともなく会話が聞こえてきた。
「お、あれが噂の!?」
「あのウェルムを降参させという……」
「そうね、黒翼のアレイシアで間違いないわ」
——何やら痛々しい二つ名をつけられていた。
このクラスの担任は、アレイシアの手続きを担当していたフィズ先生だ。彼は騒がしく会話する生徒たちを鎮めようと、部屋を忙しなく歩き回っている。
「君達! そろそろ黙ったらどうだ!?」
「先生、これは一体どういうこと……」
「あぁ、ホールでウェルムと戦っただろう? その時に空を飛んだのが原因で、もしかしたら今はいない筈の翼持ちの吸血鬼なのではという話になってな……僕も半分信じていたよ」
「信じるなっ!!」
この世界の神話に描かれている翼持ちの吸血鬼。それはおよそ千五百年程前までは普通の吸血鬼として実在していたそうだが、今では全くいなくなっている。
最後にいたとされるのは五百年前。仕方なく二つの軍を同時に迎え撃ち、結果的には勝ったという記録が残っている。
しかし、アレイシアはいくら強いにしても背中の翼は見当たらない。要するに、ただの虚構である。
「いや、私は別にそんな大層なものじゃ……!!」
「お願いだ、サインを!」
「俺も!!」
しかし、その事を彼らに納得させるのはもはや完全に不可能だ。アレイシアがこの部屋にいない間、会話や妄想によって作り上げられた理想像は、彼らの中では既に現実のものとなってしまっているのだった。
「ファンクラブを公認のものにしたいので本人の許可を……」
「アレイシア、俺だ、結婚し……!」
「私もサイン欲しい!!」
そんな中、フィズ先生までもが——冗談だとは思うが——アレイシアにサインを求めて来た。ついに先生にまで見捨てられた気分になった彼女は、もうこうなってしまっては仕方が無いと、一人ずつ順番に対応して行くことにした。
サインを欲しがる者には、自分は翼持ちではないという事を告げ、それでもサインをほしがった者には、英語で適当に書いて渡しておく。更に、ファンクラブに全く興味のなかったアレイシアは、自称ファンクラブ会長に、自分に迷惑がかからない程度にならいくらでも好きにやっていいと告げ、求婚は当然だが、即答の勢いで断っておいた。
……断られた後の絶望した表情がなかなか見物であったというのは、自分の胸の内だけに秘めておく事にする。
「これは心労で死ねるよ、一日目なのに……」
「あ、アレイシアさん……」
「えぅぅ……」
その後、時間をかけてようやく落ち着きを取り戻した一年Sクラスは、やっと予定通りの説明に戻る事が出来た。
アレイシアが指定された席は、一番左の窓際、最前列の席だ。右隣のフィアンとは長机を共有している。
「では、これからの授業の日程を説明します。この学園では午前と午後がそれぞれ三時間となっていて、午前は言語などの必須科目、午後は実践的な選択科目です——」
アレイシアはなるほど、と思った。午前の必須科目は、国語がこの世界の三国共通語である事以外、地球でやっていた事とあまり変わらないのである。
「選択科目では、各学年の最後に決められた以上の単位を取得出来ていれば合格。教科のクラスが一つ上がります。不合格となると、クラスを一つ下げられるので注意してください。教科毎のクラスを総合して、今はSクラスとなっている訳です」
それはつまり、学園に通う七年という決められた期間の中で、どれ程上位のクラスに入れるかが鍵となるというわけである。
と、そこで、アレイシアの右にいるフィアンが立ち上がった。
「質問です! どのような選択科目があるんですか?」
「ああ、そうだった。それに関する紙を今から配るよ」
そう言って先生は順番に、座っている生徒たちに紙を渡して行く。アレイシアも紙を受け取り、たくさん並んだ選択科目に上から目を通して行った。
「この中から三日後までに、あまり選び過ぎない程度に自分がやりたい科目を選んでおいて下さい。三日後、選択科目が決まるまでは午前中の授業だけだから、学園に慣れておくように……あ、それと」
思い出したように先生は、さらにもう一束の紙を生徒たちに配って行く。
「これには学園の規則が書かれているから良く読んでおいて下さい。学園校舎内で魔法魔術は使ってはいけないという項目もあるなー?」
「う……」
その言葉に心当たりがあったアレイシアは、知っていてわざわざ言ったのかと思いつつも、自分がやった事を悔やんでいた。
その後も、学園内ギルドの使い方、学園証などについての説明を受けたアレイシアは、ここで説明されたことにかなり驚いていた。
学園証は、磁気の代わりに魔力を使ったカードのような機能も持っているらしく、寮室の鍵に学園証が使えるのはそのお陰だそうだ。更に、ギルドにおける階級もこれを使って分かるという。
これらの事からアレイシアは、文化レベルは地球でいう所の中世から十八世紀程度でありながらも、魔法を使った一部の技術では地球にも引けを取らないのではという仮説を立てた。
実際、約千年も前からこの世界の文化はほぼ同じ形をずっと保って来ていると言われているため、別の方向の発展もあったのではないか、とアレイシアは考えたのだ。
説明が全て終わり、Sクラスの多くの人がまた明日と教室を離れて行く。
そんな中、アレイシアとフィアンは教室を離れられないでいた。何故かといえば——
「学園紙のインタビューです!」
「うちのギルドパーティに入りませんか?」
教室の入り口で、先程の野次馬に混じっていた学園紙の記者や、強さを見込んだ上級生に囲まれてしまっているからだ。
「あ、アレイシアさんっ、早く出ましょうよ!!」
「無理よ! この状況を見なさいよ……」
結局、寮の部屋へと帰れたのはそれから一刻以上が経った後だ。記者の質問は差し支えの無い程度に答え、パーティの勧誘は、まだギルドを使ったことが無いためまた後で、という事となった。
「もう、うんざりよ……」
「あ、そっちは私のベッドですよ?」
寮室に帰った二人は完全に疲れ切っていた。
アレイシアは半ば吐き捨てるように呟くと、着替えもせずにフィアンのベッドの中へと飛び込んでしまった。二階建てベッドとなっているため、おおよそ、彼女の場所である上へと登るのが面倒だったのだろう。
誰が噂をこれ程まで広めたのかと考えを巡らせながら、アレイシアは結局、フィアンの枕に顔をうずめながら次の朝まで眠り続けていた。
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