02-04 女の子だから——
Trick or Treat!!
ハロウィンに書き上げずして(略 と思ったので更新です!
番外編は遅れていますが、現在は絵などもやっていまして……。
下手なりにハロウィン仕様のアレイシアを描き続けてようやく塗り方がわかった所なので、しっかりと描いてみようと思います!
と、小説が先ですよね、はい(汗
学園に来てから一週間。入学式を翌日に控えたアレイシアは、同じく明日入学するフィアンの猫耳を弄くりながら雑談を交わしていた。椅子に座ったフィアンの後ろに立つ形で、アレイシアは猫耳のふにふにとした触り心地を堪能している。
この時二人は、入学に必要な準備を終わらせ暇を持て余していた。出来れば何かしたいと思ってはいるものの、入学前にやりたいことはここ一週間でやり尽くしてしまったのだ。
「そういえば、アレイシアさんってそういう……黒い服を良く着ていますね? それも装飾のほとんど無い」
「これは母様の好みで着せられていたからよ。もう慣れたわ、最初は嫌だったけど」
肘をつき、少々呆れたような調子で言うアレイシア。初めて母のナディアにこのような服を着せられたのは二、三歳頃だったかと彼女は回想する。
「どうせなら、もっとお洒落してみませんか? その、可愛いのに勿体無いですよ?」
「嫌だ、と言いたい所だけどそれも確かに……」
アレイシアは悩んでいた。前世、東次だった頃は他人にどう思われていたかは別として、自身の容姿を良く見せようとしたことは無かったのである。それが今はどうだろうか。衣服や装飾品で着飾る価値はありそうだと、自分のことながらもアレイシアは思ってしまっていたのだ。
しかし、これでも元は男だった身。あまり自身を着飾らせるということは、何か別の、男として持っていたプライドが崩れ落ちるような感覚さえ覚えてしまう。それでもアレイシアは、この容姿を持ちながらお洒落の一つもしないのは流石に損というものではないかと思い直した。
「……分かったわ。学園で着る服を学園街に見に行ってくるわね」
「あ、私も連れて行って下さい!」
魔導書を脇に抱えた標準装備で玄関へと向かうアレイシアをフィアンは追い、二人は学園街へと服を探しに出かけて行った。
学園街の中心部で、二人は服屋を片っ端から当たって行く。既に探し始めて半刻ほどが経つのだが、アレイシアが納得できるものはなかなか見当たらない。
「無いわね……」
「次はあの店はどうですか?」
少々落胆気味のアレイシアは、フィアンが指差した先の店に目を向ける。すると思わず、入り口付近に掛けられた服に目が留まった。
「あれは……!」
「何かあったんですか?」
先ほど同様、駆け出すアレイシアをフィアンは追いかける。
店へと近付いて行くに連れてはっきりと見えて来たその服は、身長の小さいアレイシアにも丁度良い大きさだと分かった。そのことを確認すると、アレイシアは服の肩の部分を両手に持つ。
「これですか……黒のドレスだから良く似合うと思いますよ?」
その服は、上下の別れたドレスのようなものだ。スカートの裾と袖口には薄くフリルがあしらわれ、肩の部分はやや膨らんだ形状になっている。
「黒ゴス…………」
「え、何ですか?」
「……別に何でも? この服は気に入った、買うわ!」
やけに気合の入った様子で奥の椅子に座っていた店長を呼び、アレイシアはその服を半ば押し付けるように手渡した。先程の会話で何かが吹っ切れたのか、彼女は服を買うことに楽しみを見出しているようだ。
「これでお願いします」
「はい、っと。この服は嬢さんに良く合うと思うし、少し安く銅貨七枚のところを五枚半でどうだ?」
突然の値下げが相手から提案された。アレイシアはもちろんこれを断る理由も無いため、ベルトに掛けられた財布の袋から銅貨六枚を取り出す。これでも実は、結構高いと言える値段なのである。
「ありがと、良い服を見つけられたわ」
「それはどういたしまして。はい、お釣りの鉄貨六枚!」
この国では、鉄貨十二枚で銅貨、銅貨八枚で銀貨、銀貨十二枚で金貨、金貨二十枚で白金貨と定められている。
アレイシアは始めこそ、誰がこんなに面倒臭い通貨単位を作ったのかと思ったのだが、これらの価値一つ一つを覚えるにもそれほど時間はかからなかった。何事も、要は慣れである。
「ありがとう御座いましたー!」
店員の一人に見送られ、二人は服に似合うアイテムを求めて更に店を探し回った。
日が傾き始める頃には髪に付けるリボン用の黒い紐、緋色のブローチなどを手に入れ、アレイシアは非常に満足した様子で寮への帰路についた。
入学式当日の早朝、起床時間を正したお陰でフィアンの猫パンチを喰らうこと無く起きることが出来たアレイシアは、先日買ったばかりの新品の服に着替え始めていた。この服を下ろすのは、入学式である今日にしたかったのである。入学式までまだ二刻以上はあり、着替えを始めるには少々早すぎるのだが。彼女はそれだけ服を着ることと、入学式を楽しみに思っていたのだろう。
寝巻きとして使っている薄手のワンピースを脱ぎ捨て、先ずは新品の服のスカートの部分を身に付ける。アレイシアに合わせて作られたかのようにぴったりのサイズで、スカートが太腿に触れる感触も心地良い上質な布で作られていた。
上半身の部分に袖を通し、胸元を蝶結びで留め、同じように髪にもアクセントとして黒い紐を結びつける。最後に襟の下部をブローチで留めれば着替えは完了だ。
ちょうどその時、どうやら先に起きていたらしいフィアンが部屋の中へと入って来た。
「アレイシアさん、着替え終わ……」
「あ、フィアン。いま着替え終わった所よ」
「……凄く似合ってます!」
「あ、あぁ、うん、ありがとう」
急に似合っていると言われ、慣れないアレイシアは慌てて左斜め下四十五度を向いて紅潮した顔を隠す。内心嬉しかったということは、表に出すに出せなかった。
「え、えーと、朝食をレストランで食べたらすぐに、入学式のある校舎北の大ホールに向かうという事でいいんでしょうか?」
「……貴女は、気が早いわね。まだ一刻半はあるのに」
「あ……で、でもそれを言うなら! アレイシアさんもまだ着替えなくて良かったと思いますよ?」
————完全にお互い様だった。そのことに気付たアレイシアは、そうね、と小さく笑いながらベッドの淵に座り、また何気ない会話を交わしながら時間を潰すのであった。
これから学園編なので、過去の感想を参考に、出来るだけ矛盾の無い設定を組んで行きます。
では、誤字脱字の報告やアドバイスなどをお待ちしております!
……あ、もしもアレイシアが「お菓子くれなきゃいたずらするぞ!」って来たら、お菓子は隠して血を吸われてあげてくださいね。
Happy Haloween!!