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02-03 亜空間修行

 眩い光が収まると、アレイシアは何時の間にか白い石畳の上に立っていた。太い柱が何本も上へと向かって伸びており、流石は神の住まう家、神殿と呼ぶに相応しい荘厳さだ。

 上に広がる何処までも澄みきった青い空は、ここより上には何も無いという不思議な感覚を覚えさせる。小高い丘の上に当たるのか、外に広がる景色はだだっ広い青々とした草原だ。

 石畳の先、一段高くなっている場所に、黒美さんは仁王立ちしてアレイシアの方を見つめていた。今までは夢の中でしか会話をした事がないため、直接会うのは始めてである。


「私の家にようこそ、早速始めましょうか」


「……これはまた、変わった服装ね」


「そう?」


 黒美さんは、白い布を体に巻き付けたような奇抜な服を着ていた。神話を描いた絵画などで見受けられる"神らしい服装"そのものである。黒美さんは疑問の表情で裾を持ち上げると、はっと気付いたようにアレイシアの顔を凝視した。


「着替えて来るの忘れてたっ!!」


「それって、普段着?」


「そうよ。最近は現界の文化に影響される神も多いけど、私はこれが好きだから。着てみる?」


「あ……い、今は遠慮します」


 風変わりな神の装束に興味はあったアレイシアだが、このままだと着替えさせられる未来に予想が付いたため、恥ずかしさを覚えて今はよしとした。

 手を引かれて案内されたのは、石畳の更に先、本殿に当たるであろう立派な大理石造りの建物だ。二人は巨大な扉から中へと入り、広いホールの周囲を周って右の廊下へと進む。廊下とは言っても、天井はかなり高い上に横幅も異様なまでに広い。明かりはどこにも見当たらないが、屋内にしては妙に明るく不思議な感覚だ。


「さて、ここでやりましょうか」


 そう言うと、黒美さんは腕を胸元の高さまで持ち上げ、両手の指先に高密度の神力を集中させ始めた。アレイシアには聞こえない程の小さな声で、何やら呪文のような言葉を早口に唱えている。

 しばらくすると神力の重圧で空間に穴が空き、更にその穴を神力が満たして一つの亜空間が生成された。しかしその直後、空間の穴はしぼむように小さくなり見えなくなってしまう。


「……あれ、あの中に入るんじゃ?」


「そうよ。今から転移であの空間に入るわ」


 ——パチンッ!


 黒美さんはアレイシアを抱き寄せると指を鳴らし、それと同時に二人は亜空間へと瞬間移動した。

 床も壁も分からない。呼吸こそ出来るものの、この空間で下手に移動するのは危険だと、アレイシアは思わず目を瞑って黒美さんの腰周りを抱きしめる。


 スタッ————


 ふと、そこで地に足が着く感覚。不安定だった身体も重力に押され、しっかりと硬質な床の上を踏み締める。


「よし、もう大丈夫よ」


 声を掛けられて瞼を開けると、何故かそこは木で造られた小屋の中だった。部屋の一角、十字の木枠付きの丸窓の外には、不思議なことに木の生い茂る森が広がっていた。アレイシアが目を瞑ったわずか数秒の間に、何も無かったこの空間にこれだけのものを創り上げたのだろうか。


「ほら、こっちに座って。説明してあげるわ」


 部屋の中央の小さなダイニングテーブルに促され、唖然と立ち竦んでいたアレイシアは黒美さんと向かい合うように座る。聞きたいことが積み重なり、彼女は幾分混乱した様子だ。


「えーと……ここはどういう空間なの?」


「良い質問ね。世界の狭間に空間を作ったあの時とは違って、既に存在している空間に重ねて別の空間を存在させているの。別次元でありながらも同じ三次元に存在しているから安全よ。ちなみに、この中での一ヶ月は外での一刻になっているわ」


「んー、なるほど、多分把握した」


 本来の四百倍近く時間を圧縮しているということは、それだけ多くの修行を出来るということでもあり、時とともに成長する魔力や神力の量もそれだけ早く大きくなるという事だった。

 ただ、その早さで歳を取るという意味ではとても安全とは言い難いものがある。アレイシアが不老であるからこそ、このような手法が可能となったのだ。


「この空間では何日くらい過ごせば?」


「一ヶ月、つまり二十四日間よ。外では丁度一刻が経ったあたりね」


「それくらいなら、分かったわ。よろしくお願いしますっ!」

 

 こうして、アレイシアは黒美さんの指導の下、一ヶ月の集中的な修行を行うこととなった。この後の話し合いで能力を使いこなすことを一番優先的に行うと決め、二人は修行のために小屋の外の森へと向かって行った。






 修行を始めてから九日が経つ。結果から言えば、アレイシアは修行を始めてからわずか

一日で能力の感覚を掴むことに成功していた。今はまだ、自身が能力を持っているということを自覚出来る程度だが、そこまで行くにも四日はかかると踏んでいた黒美さんは非常に驚いていたそうだ。

 そして今日は、二人は本当に亜空間なのかと疑いたくなるほど綺麗な湖の畔に来ていた。ここは森の外れに当たり、小屋から真っ直ぐと森の中を進めばすぐに到着する場所である。

 ここに来たのは別に、アレイシアが泳ぎたいと言った訳でも無ければ小屋に風呂が無くて水浴びにという訳でもない。ただ、修行しながらも気分転換にと外に出ただけなのだ。


「さて、神力の修行をやりたいって言ってたわね?」


「はいっ!」


 実は、精神力が必要な能力のための、瞑想や自己暗示ばかりの修行に彼女は少々飽きていたのだ。なのでこれからは、実践練習を含む神力の修行をしたいとアレイシアは黒美さんに頼んでいたのである。

 神力はまさにアレイシアにとって宝の持ち腐れそのものだ。丁度そのことに勿体無さを感じていた頃、良いタイミングで修行出来る環境に来れたとも思っていた。


「まず始めに、魔力を貴女が感じ取ったのと同じ方法で神力を感じ取ってもらうわ。その辺りは敏感だからね、上手く行く筈よ」


 黒美さんはそう言うとアレイシアの手を取り、視線の高さを合わせるように屈みこんで神力を流し始めた。触れ合う手から伝わる神力を感じ取ろうと、アレイシアは全神経を集中させる。


「……どう? 何か分かった?」


「んー。やっぱり異物感はあるけど、何処か安心するような感覚も……これが?」


「そう、それが神力ね。安心するような感覚というのは恐らく……何と説明すれば良いのか分からないけど、全てを創った原初みたいなものだからだと思うわ」


 興味深そうに、触れていない方の手をじっと見つめるアレイシア。魔力の時のように、自身の中にもある同じようなモノを確実に掴むことが出来た。


「あれ? 試し撃ちで暴発させないの?」


「…………さすがに学ぶわ。それに、神力に関してはまだ使い方が分からないから」


 アレイシアは微笑み返してそう言う。これだけ綺麗な湖畔を荒らすのは勿体無い、という考えも勿論あったのだが。

 その後、神力は魔力の代用として効率良く使えるということを教えられ、慣れるまでは魔法を神力で発動させるのも良さそうだと彼女は提案する。魔力の操作と同じように行けば良いけど、と少々不安な考えも頭を掠めたが、それならまた練習して覚えるまでだと強く意思を固めた。






 修行期間である一ヶ月が終わり、初めと比べれば神力もだいぶ大きくなった。その上アレイシアは、能力の実用的な用途を一つだけ見出すことが出来た。止まっているのに移動するという矛盾を一瞬だけ正当化し、瞬間移動をするというものである。


「あなたの能力ね……極めれば万能よ? 成長も早いし、そのうち世界だって創れるようになるかも」


「管理が大変そうだからやめておくわ」


「……ま、それはそうね。もう出ましょうか?」


「はいっ!」


 二人は亜空間から神界へと戻り、黒美さんによってアレイシアはすぐに寮の部屋へと送られた。次に亜空間で修行するのは一週間後となっており、その頃には既に学園も始まっているはずだ。

 ただ、この時一つだけ問題が起きてしまった。


「ごめんなさい、私が悪かったから言葉責めはやめて……」


「別に言葉責めはしていませんよ?」


「言葉に棘がある…………なら、その魔法陣をいくらでも見ていいから、ね?」


 アレイシアが到着したのは出発の時に描き写した魔法陣の真上だった。そのため、魔法陣を観察していたフィアンの真上に運悪くものしかかってしまったのである。

 結局、アレイシアが魔法陣をフィアンに貸すことでこの件は落ち着いた。しかし、これが後に予想外の結果を引き起こすことになる————のかもしれない。

 やっと投稿できました……

 時間を見つつ少しずつ書いたので、繋がりのおかしい所があるかもしれません。

 誤字なども見つけ次第、伝えて頂けると嬉しいです^^;


 すっかりハロウィンも近いですが、ハロウィンといえば、魔女よりもゾンビよりも吸血鬼……ですよね?(だと思いたい)

 なので、ハロウィンに向けていくつかの短編と番外編を同時に執筆中です。

 描写力が上がっているか心配、あとは一人称にも挑戦して行こうと思います。


 ではまた、次話か番外編で!

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