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02-01 魔法魔術学園

 今回から第二章です。


 文字数が多くなったので二話に分割する事にしました。

 改定前は入れていなかった描写も、結構増えているのかもしれません(笑


 では、どうぞー!

 アレイシアが馬車に乗り込んでから丁度丸一日が経つ。一月十日の早朝、彼女が乗る馬車からは、朝日に照らされた何十もの棟が建ち並ぶ魔法魔術学園が見えていた。

 あれから結局一睡もしていない彼女は、かなりのペースで目を擦り、何度も欠伸(あくび)を繰り返している。


 ————ガタッ! ガタガタ……


 町を離れてから砂利道続きだった道路は一変、石畳で舗装された頑丈な道に変わった。道路脇には街灯が並び、学園の門までずっと伸びている。その様子は何処と無く自身を迎え入れてくれている様に見え、アレイシアは少々の嬉しさを覚えた。


 学園の正門に到達する直前、彼女は一瞬だけ寝た様なそぶりを見せる。何故かといえば、本当にこの馬車の御者は信頼出来る人物なのかを確かめるためだった。もしかしたらこのタイミングを見計らい、アレイシアを襲うつもりでいるかもしれない。


「……よしっ」


 すると案の定、御者の男は馬を走らせたままアレイシアの乗る車に滑り込む。何処に隠し持っていたのか、男は短剣を右手に持つと彼女を狙って振り下ろした。


 ——パシッ!!


 しかし、アレイシアは男の腕をいとも簡単に鷲掴みにする。実際は身体強化魔法を使っているため、余裕と言える程でも無いのだが。


「……貴方も、依頼されたのかしら?」


「な……がぁっ!?」


 掴んだ男の手首を捻って馬車の壁に押さえつける。勿論その際に、短剣を取り上げる事を忘れない。


「……そうだった、馬を止めて?」


「あ、あぁ、分かった……」


 その後アレイシアは、御者の男を馬車に積まれていた縄で縛り、学園の正門警備員に事情を伝えて預けた。アレイシアとしては何かと心配な事もあったのだが、一応これで大丈夫だろう。




 この様な小事件はあったものの、やっと学園に到着したのだから、まずは入学手続を済ませなければならない。アレイシアは正門に停めた馬車から二つのトランクを引っ張り出し、重そうに両手に抱えて正門を通り抜ける。

 両側に木の植えられた、煉瓦造りの鮮やかな道路。アレイシアと同じ新入生だと思われる者も何名か歩いており、大きい荷物を抱え、同じ方向を目指している。


「うわぁっ……」


 しばらく長い道を進むと、中央に高さ二十テルム(五メートル)程度の噴水がある円形の広場に出た。今まで辿って来た道と同じく煉瓦造りで、アレイシアが来た方向を含め四方に道が伸びている。

 そのあまりの広さに思わず声を漏らした彼女だが、今でなくても後に飽きるほど見る事が出来ると、入学手続が行われるという右の教職員塔方面の道へと向かった。

 すると目に入って来るのは、"棟"ではなく"塔"と呼ぶに相応しい、この世界では非常に稀な八階建ての建物。この中に、職員室、事務室、校長室などの設備が入っているのだ。


「すみません、入学手続はどこですか?」


「ん? お嬢さん、ここの扉を入って、廊下を真っ直ぐ進んだその突き当たりに部屋がある。入学手続はそこだ」


「ありがと。……あと嬢さん言うな」


「…………え?」


 アレイシアが質問したのは教職員塔の入り口に立っていた男。彼は、アレイシアが発した言葉は空耳だったかと疑問に思った。


「ふぅ……涼しい」


 ——実はここまで、早朝の弱い日光に少々我慢しながら歩いて来たというのは内緒である。




 アレイシアが着いた部屋の前には、新入生だと思われる人が多く集まり列を作っていた。一口に"人"とは言っても、尖った耳を持つ者や、尻尾が生えている者など、厳密に言えば人でない者も多く伺える。

 列の最後尾に着き、アレイシアは自身の順番が来るのを待つ。よく見てみれば部屋の奥まで列は続いており、長机の前に座る四人の教師が順番に新入生の入学書類を見ていた。


「えー、次の方?」


「はい」


 トランクの中から入学書類を出して待っていると、遂にアレイシアの番が回って来る。彼女はすぐに返事をすると、トランクを引き摺る様に慌てて教師の下へと移動した。


「えー、まずは入学書類を見せて下さい」


「これですね?」


「そうです」


 教師の男は、受け取った書類を一枚一枚開いて確認して行く。書類の中には国王の推薦状や、アレイシアについての情報が記された紙などが入っている。

 時折『ほぉー』やら『うーむ』などと声を漏らし、間も無くアレイシアに薄い金属板と一枚の紙を手渡した。


「……これは?」


「その板は学園証と呼ばれていて、この学園の生徒だという事を証明する物だから、くれぐれも失くさないように気を付けて。あと、寮の部屋番号もその学園証に書かれているからね」


 板をじっと見つめてみたり、裏返してみたりと、興味深げに学園証を観察するアレイシア。そんな彼女を見て、教師は付け加える様に言う。


「それと、紙の方にはこれからの動きと学園の規則が書かれているからよく読んでおくように。僕は教師をしているフィズ・エイレル。またいつか、学園で会うかもしれないから覚えておいてくれると助かるよ」


「説明ありがとう、よろしくお願いします」


「ははっ、この場で説明するのは僕の仕事だから。……と、出る時には左の扉からな」


「はい」


 再びトランクを抱えると、すぐに机を離れ、入って来た方とは別の扉から部屋を出た。

 フィズ先生、と呼んで良いのかは分からないが、彼から貰った紙を広げてこれからの行動を確認する。すると、この日はもう何もやるべき事は無いと分かり、アレイシアは安心して寮へと向かう事にした。


 教職員塔を出た後、学園全体の地図が描かれた看板の前でアレイシアは立ち止まる。その地図によれば、寮は教職員塔からまっすぐ進めば着く様だった。それを確認した彼女は、加えて学園全体の設備にも目を通して行く。

 学園の入り口は東側、中央に噴水の広場があり、一番奥に当たる西側には多くの生徒が学ぶ校舎があった。校舎の両脇には更に、四つの実践魔法用闘技場、ギルドの学園支部、多くの店が揃う学園街までもがある。北側は教職員塔、南側はアレイシアが今から向かう寮だ。

 何故これ程充実した設備が整っているのか。それは恐らく、学園から一番近くの町でも馬車で三刻以上かかってしまうからだろう。アレイシアはその地図の内容を軽く覚えると、再び寮へと向かって歩き出した。





 教職員塔から歩き始めて四半刻。ようやく寮のロビーに到着し、胸のポケットに仕舞ってあった学園証を取り出す。その右側を見てみると、名前などの項目の並び、下から二番目に"寮番D204"と書かれていた。


「……ここかな?」


 寮の地図で場所を確認して進んでいくと、二階の一番奥に当たる部屋の前に辿り着く。どうやらここがアレイシアの寮室の様だ。扉の横に設置されていた機械——まるでホテルの電子ロックの様な形をしている——に学園証を差し込み、ゆっくりと扉を押し開ける。


「誰ですかー?」


「……あ、あれ? ここは二人部屋なの?」


 扉が開くと同時に顔を出したのは、茶髪で猫耳と猫尻尾を持つ、如何にもお嬢様といった感じの少女だった。彼女はその猫耳を合わせてもアレイシアの身長に及ばず、互いを見上げたり見下ろしたりという形になっている。


「……もしかして、この部屋で一緒に住む人ですか?」


「そうなるわね……これからよろしく。私はアレイシア・ラトロミアよ」


「あ、私はフィアン・エンレイスです。よろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げたフィアンに部屋の中へと促され、中央の机を囲うソファに二人で座った。全体的に木で造られた箇所が多いこの寮室は、大きな窓もあって明るい印象だ。


「で、フィアンは今何年生?」


「まだ昨日来たばかりです。多分一年生になると思いますよ」


「なら、私と同級生かな。……これからどうする?」


 アレイシアはソファの背もたれに深く腰掛け、渡された紙に書いてあった説明を思い出す。一週間後にあるクラス選定の試験まで、自由という名の暇が続くのだ。


「後で学園を見て回りませんか? 昨日は疲れていて、まだ部屋を出ていないんですよ」


「そうね、後で……今は眠いから寝るわ。学園を見て回るのは夕方からでいい?」


 ここまで我慢してきたものの、アレイシアの眠気はもう限界だ。ソファに腰掛けたまま、横に崩れ落ちる様に寝てしまう。


「夕方からでも良いですが……大丈夫ですか?」


「うん……学園に着くまで丸一日、一睡もしていなかったから。それに、私は吸血鬼よ……」


「……あ、吸血鬼だったんですか。私で良ければ献血しますよ?」


 フィアンの優しい言葉は結局アレイシアの耳に届かなかったが、実は吸血される事に対する好奇心があったのは事実である。

 当のアレイシアは既に夢の中。相当疲れていたのか、夕方になるまで八刻に渡って眠り続けた。





 ……あれ?

 描写の密度を上げたせいか、少々グダグダ感も否めなくなってしまったような……今度は逆に、無駄な描写を削る方法を考えて行かなければです。


 感想評価やお気に入りを入れて下さっている方に感謝です^^

 アドバイスや改善点をお待ちしております。



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